どんなに優れた商品やサービスでも、PRがうまくできていない商品は、世に知られることなく埋もれてしまいます。逆に言えば、商品の性能がそこまで優れていなくても、戦略的なPRができている会社は、顧客との信頼性を築きブランド認知度を高めて成功しています。
戦略的なPRとはなんでしょうか?そもそもPRが何かを理解し、プロモーションやマーケティングとの違いを理解しながら、PRで得られるメリットを活用していく必要があります。
この記事では、PRの基本の知識と活動内容、そして企業がPRを通じて得られるメリットについて詳しく解説します。
PRとは?目的とその重要性は?
PR(パブリックリレーションズ)とは、企業や組織が社会やターゲットオーディエンスと良好な関係を築く戦略的なコミュニケーション活動です。
よく広告などに表記される「PR」の文字はマーケティング手法の一つのプロモーションのことを指しますが、本記事ではパブリックリレーションズのことをPRとして解説していきます。
まず初めに、PRの基本的な定義からPRの歴史、目的について解説します。
PRの定義
「PR」は、一般的には「パブリックリレーションズ(Public Relations)」のことを指します。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会は、PRを以下のように定義しています。
パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。
パブリックリレーションズとは
PR活動では、上記のような多様なステークホルダーとの良好な関係性を構築します。具体的には、メディアを通じた情報発信やイベントの企画、社会貢献活動など、多岐にわたる手法が含まれます。
歴史的背景
PRの起源は、20世紀初頭のアメリカと言われています。
当時、企業は消費者や社会からの信頼を得るために、広告やプロモーションだけでなく、より戦略的なコミュニケーション手法が必要だと認識が高まり、パブリックリレーションズという新たな分野の発展を促しました。
初期のPRは、企業が自らの利益を守るための手段として機能していましたが、次第に社会全体との調和を図るための重要な役割を果たすようになりました。特に第二次世界大戦後、PRは企業の信頼性を高めるための不可欠なツールとして定着し、グローバル化が進む中で、その重要性はますます高まっています。
現代においては、デジタルメディアの台頭により、PRの手法も進化しています。リアルタイムでのコミュニケーションが取れるようになったことはもちろんのこと、信頼性が重視されるようになっています。
PR広報の目的と重要性
現代のPR広報活動の役割は、単なる情報発信だけではなく、企業の社会的責任やブランド価値を消費者に効果的に伝えるための重要な手段となっています。
特に、SNSが広く普及したことで、消費者の声が瞬時に広がります。このような現代において、企業が自らの活動や姿勢を適切に発信し、ポジティブなブランドイメージを築くことが重要です。
また、地球温暖化の高まりやコーポレートガバナンスコードの改訂に伴い、サステナビリティや社会的責任が企業に求められるようになっています。PRはこれらの取り組みを広く伝えるための鍵となります。
PRと他のマーケティング手法との違い
PRとマーケティング手法を連携させることは非常に重要です。しかし、PRとマーケティングの役割や目的を混合させてしまうと、効果的な連携を行うことはできません。
次に、PRと混合されがちな広告、プロモーション、マーケティング、広報、自己PRとの違いについて詳しく解説します。
PRと広告の違い
広告とPRはどちらも企業やブランドの認知度を高める手法ですが、アプローチと目的には大きな違いがあります。
広告は、企業が直接的にコントロールできるメッセージを有料で発信する手段です。具体的には、テレビCMやオンラインバナー広告などがあり、特定のターゲット層に対して即効性のあるメッセージを届けることが目的です。
一方、PRは無料で得られるメディア露出や第三者の評価を通じて、間接的にブランドを伝える手法です。ここでは、信頼性や公正さが重要視され、広告とは異なり、メディアや消費者との関係構築に重きを置きます。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
広告と広報PRの違い
PRとプロモーションとの違い
プロモーションは、消費者に対して製品やサービスを試してもらうための短期的な活動を指します。
セールやクーポン配布、試供品の提供などがプロモーションの一例です。これらの活動は、消費者がアクションを促すことを目的とし、短期間で売上や認知度を向上させる手段として利用されます。
対して、PRはより広範な視点で企業とそのステークホルダー(消費者、メディア、政府機関など)との関係を構築する活動です。プロモーションが製品やサービスに焦点を当てるのに対し、PRは企業全体のイメージやブランド価値を高めることを目指します。
たとえば、企業が新製品を発表する際、PR活動を通じて製品の背景にあるストーリーや企業の理念を伝えることで、消費者の共感や信頼を得ることができます。結果として、プロモーションが売上を一時的に伸ばすのに対し、PRはブランドの長期的な成功を支える基盤を築きます。
PRとマーケティングとの違い
日本マーケティング協会の定義によると、マーケティングとは「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」とされています。
マーケティングは、製品やサービスの開発、価格設定、販売促進、流通など、企業活動全般にわたる包括的なプロセスを指します。
一方PRは、直接的な売上向上を目的とするのではなく、企業やブランドのイメージを形成し、維持することに注力します。
マーケティングが製品やサービスの価値を最大化するための活動であるのに対し、PRはその価値を社会や消費者に理解してもらい、信頼を得るための活動です。
PRと広報との違い
「広報」と「PR」の違いについて誤解している方も多いですが、実は同じ意味です。広報は情報提供、PRは関係構築という区別がされていますが、これは本来の意味と異なります。
「広報」という言葉は、GHQによる戦後の民主化政策の一環として導入された「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」を日本語に翻訳したものです。
広報・PRは、単なる情報発信にとどまらず、社会の声を反映し、関係者を支援する役割を持っています。
以下の記事では、広報担当者として知っておきたい基本をまとめています。
広報とPRの違いとは?広報担当者として知っておきたい基本
PRと自己PRの違い
自己PRは、個人が自分自身を他者にアピールするための手法です。
特に就職活動や転職活動において、自分のスキルや経験、強みを企業に対して効果的に伝えるために用いられます。自己PRの目的は、個人としての価値を認識してもらい、採用や昇進などの機会を得ることです。
これに対して、PRは個人ではなく組織全体の価値を伝えるための活動であり、より広範な影響力を持ちます。
自己PRが個人のアピール手段であるのに対し、PRは企業や組織の持続的な成長を支えるための戦略的なコミュニケーション手段です。
PRの具体的な活動内容、手法
PRの活動は多岐にわたり、各組織の目標やターゲットに応じてさまざまな手法が用いられます。
次に具体的なPR活動の内容と、それを成功させるために必要なスキルについて詳しく解説します。
PR活動の具体例
PR活動にはさまざまな手法があり、それぞれの目的を抑える必要があります。以下に、代表的なPR活動の具体例を挙げます。
•プレスリリース: プレスリリースは、企業や組織が新製品の発売、サービスの開始、イベントの開催などのニュースをメディアに伝えるための公式な発表文書です。これにより、メディアがニュースとして取り上げ、広範な露出を得ることができます。
以下の記事では、2024年最新の知見からプレスリリースの書き方についてまとめています。
【2024年最新】プレスリリースの書き方:5つの基本と10のチェックリスト
•メディアリレーション: メディアリレーションは、企業とメディアとの良好な関係を築くための活動です。定期的な情報提供や記者との個別のコミュニケーションを通じて、企業にとって有利な報道を引き出すことを目指します。
•イベントプロモーション: イベントプロモーションは、企業のブランドや製品をアピールするためのイベントを企画し、メディアや消費者の注目を集める手法です。新製品発表会や展示会などが代表的な例です。
•ソーシャルメディア活用: 現代のPRでは、SNSを活用して広範なオーディエンスに直接アプローチすることが重要です。SNSでの発信により、迅速かつ広範に情報を拡散できるため、従来のメディア露出に加えて重要な手法となっています。
•クライシスコミュニケーション(危機管理): 企業が危機的な状況に直面した際、迅速かつ効果的に対応するためのコミュニケーション活動です。不祥事や製品のリコールなどの際に、企業の信頼を維持するため危機管理対応に取り組みます。
•オウンドメディア運営: オウンドメディアの運営は、企業が自らの情報を発信するための強力な手段です。ブログ、ニュースレター、動画チャンネルなど、自社が直接管理するメディアを通じて、ブランドメッセージや専門的なコンテンツをターゲットオーディエンスに届けます。
これらの手法は、企業が信頼を築き、ブランド価値を高めるために戦略的に組み合わせて使用されます。特にプレスリリースやメディアリレーションは、メディアを介して企業のメッセージを広く伝えるための重要な手段です。
PRに必要なスキル
それでは、上記のPR活動を効果的に行うために、どのようなスキルが求められるのでしょうか。以下は、PRに求められるスキルです。
•コミュニケーションスキル: PRで特に重要なのは、コミュニケーション能力です。メディアとのやり取り、ステークホルダーとの関係構築、社内外のチームとの連携において不可欠と言えるでしょう。
•課題設定力: PR活動には、企業が直面する課題を正確に特定し、それに対する適切な戦略を設定する能力が必要です。市場の動向や消費者のニーズを理解し、企業のブランドやメッセージを効果的に伝えるための戦略を設計する力が重要です。
•文章作成能力: プレスリリースや公式声明、ブログ記事など、文章を通じて企業のメッセージを伝える機会が多いPRにおいて、明確で説得力のある文章作成能力は不可欠です。分かりやすく、かつ印象に残るメッセージを作り出すことで、メディアや消費者に強く訴求することができます。
PRのメリットと効果
PRは、企業がブランド認知度を高め、信頼性を築き、危機管理を行うための施策です。PR活動に取り組んだ結果、それらのメリットだけではなくコスト削減にも繋がります。
次に、PR活動が企業にもたらす具体的なメリットと効果について詳しく説明します。
ブランド認知度
PRの最大のメリットの一つは、ブランド認知度を高めることです。
企業が新しい市場に参入する際、PR活動を通じて商品の存在や価値をターゲットオーディエンスに効果的に伝えることは不可欠です。これを怠ると、どんなに優れた商品やサービスであっても、競合他社に埋もれてしまうリスクがあります。
PRは、メディア露出やイベントの開催、SNSを活用したキャンペーンなどを通じて、ターゲット市場におけるブランドの認知度を効果的に高める手段となります。これにより、消費者にブランドの存在を知ってもらい、市場でのポジションを確立することができます。
関連記事:【書評】『ストーリーで伝えるブランド〜シグネチャーストーリーが人々を惹きつける』(著者:デービッド・エーカー/ダイヤモンド社)
信頼性の向上
企業が市場で成功するためには、ブランディングと同様に信頼性が欠かせません。
PR活動は、企業が長期的に信頼を築くための基盤を提供します。評判や企業イメージは一晩で築かれるものではなく、日々のPR活動を通じて徐々に形成されます。例えば、レピュテーションマネジメント(評判管理)は、企業が戦略的に自らの評判をコントロールし、信頼を高めるための重要な手法です。
これには、透明性のあるコミュニケーションや、社会的責任を果たす活動が含まれます。結果として、PR活動を通じて築かれた信頼性は、消費者やステークホルダーとの長期的な関係を強化し、企業の持続的な成長を支えることになります。
関連記事:レピュテーションマネジメントとは?企業の評判を守り抜く戦略を解説
危機管理
どんな企業でも、予期せぬ危機に直面する可能性があります。
こうした状況において、PRは危機管理の要となります。危機発生時に適切な対応を行わなければ、企業の評判や信頼が大きく損なわれる可能性があります。PR活動には、危機管理計画の策定と実行が含まれており、これにより企業は迅速かつ効果的に危機に対応することができます。
例えば不祥事や製品のリコールが発生した場合、PR担当者が迅速に情報を収集し、適切なメッセージを発信することで、ダメージを最小限に抑えることが可能です。このように、PRは企業の評判を守り、危機からの回復をサポートする重要な役割を果たします。
関連記事:失敗しないための危機管理広報マスターガイド!危機管理の基本から応用までを解説
コスト削減
PR活動は、広告費の削減にも繋がります。
従来の広告と比較して、PRは中長期的に効果を持続させる手段として優れています。例えば、広告は一定期間内にターゲットにメッセージを届けるための直接的な手段ですが、PRはメディアの報道や口コミを通じて、より持続的な影響を与えます。
これにより、企業は広告費を削減しつつも、長期的なブランド価値の向上を図ることができます。さらに、メディア露出やSNSでのバイラルマーケティングを通じて、追加の費用をかけずに広範なオーディエンスにリーチできる点も、PRの大きなメリットです。
PRの成果を最大化させるためコツ
効果的なPRを行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
これらのポイントを理解し、戦略的に活用することで、企業のメッセージをより効果的にターゲットオーディエンスに届けることができます。
ターゲットオーディエンスを理解する
PR活動において最も重要な要素の一つが、ターゲットオーディエンスを正確に理解することです。
どんなに魅力的なメッセージでも、それがターゲットに響かなければ意味がありません。ターゲットオーディエンスを理解するためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
•デモグラフィック情報の分析: 年齢、性別、職業、収入、教育レベルなどの基本的な情報を把握し、どのような層が自社の製品やサービスに関心を持つかを明確にします
•心理的要因の理解: ターゲットオーディエンスが何を求め、何に価値を感じるのかを理解することが重要です。これには、消費者の動機や不安、価値観を探ることが含まれます
•メディア消費習慣の調査: ターゲットオーディエンスがどのメディアを利用しているかを理解し、適切なチャネルでメッセージを届けることが求められます
魅力的なストーリーを作る
PR活動において、魅力的なストーリーを作ることは不可欠です。
人は事実やデータよりも、感情に訴えるストーリーに引きつけられやすい生き物です。これはユヴァル・ノア・ハラリ氏のサピエンス全史でも述べられていました。特にニュースバリューを意識したストーリーは、メディアに取り上げられやすく、広範なオーディエンスにリーチする可能性が高まります。
<魅力的なストーリーを作る際のポイント>
•ニュースバリュー: ストーリーが新規性、影響力、タイムリーさ、または社会的意義を持つかを確認します。これらの要素は、メディアが取り上げる際に重視するポイントです
•ストーリーテリング: ストーリーは、読者や視聴者の感情に訴える要素を持っていることが重要です。人々が共感しやすいストーリーは、より多くの人々にシェアされ、広く伝わる可能性が高くなります
•簡潔・明確なメッセージ: ストーリーは簡潔でありながら、メッセージが明確であることが求められます。複雑すぎると伝わりにくいため、重要なポイントを簡潔にまとめることが重要です。
マーケティング部門との連携
PRとマーケティングの連携は、企業の全体的なブランディング戦略を強化する上で非常に重要です。
しかし、日本国内の多くの企業では、PRとマーケティングが別々の部署で運営され、十分な連携が取れていないことが多いです。このような状況では、PR活動が単独で行われ、マーケティング戦略との整合性が欠けるリスクがあります。
PRとマーケティングは結局何が違う?成果が出ない理由はここにある!
まとめ:PRは信頼性を高め、ブランド価値を築くための長期的なアプローチ
PRは、企業が長期的な成功を収めるために不可欠な戦略的コミュニケーション手法です。短期的な売上向上を目指す広告やプロモーションとは異なり、PRは信頼性を高め、ブランド価値を築くための長期的なアプローチです。
そのためには、ターゲットオーディエンスを理解し、彼らに響くストーリーを作り、戦略的にメディアやSNS・マーケティング戦略を活用することが重要です。しかし、これらの活動を全て網羅しながら継続して行うには、多くのリソースと専門知識が必要です。
一方で、企業が日常業務を行いながらこれらを全て網羅するのは現実的ではありません。特に中小企業にとっては、PRとマーケティングを連携させた包括的なサポートが必要です。中途半端に取り組んでしまうと、結果として効果が得られないまま人件費や利益に直結しないノンコア業務の増加につながってしまいます。
シェイプウィンでは上記のようなお悩みや相談を数多く受けており、200社以上を支援してきました。これらのノウハウを活かし、PRだけではなく、SNS、マーケティングを網羅した戦略的なPRのサポートを行っています。ぜひお気軽にお問合せください。