日本能率協会は、食品から機械・建築設備まで様々なジャンルのBtoB向け展示会を年間30本以上開催しています。シェイプウィンでは、日本能率協会が主催する展示会の認知やUSPを訴求するためにコンテンツマーケティングを行い、SEOによりトラフィック増加とビッグワードで上位表示を実現しました。
手帳ブランドから展示会主催者としての認知獲得
日本能率協会といえば、ビジネス手帳の『NOLTY(旧名:能率手帳)』をイメージする方が多いかも知れません。日本能率協会の仕事をしていると他の方に言うと「手帳のPR」をやっているのですか?と言われることも多々ありました。日本能率協会は、一般社団法人として主に製造業を相手にマネジメント研修・教育や、企業の認証を行うなどのサービスを提供しています。
展示会の主催者と言えば、RX Japan(旧リード エグジビション ジャパン)社が最大手であり、製造からIT、サービスまで幅広く展示会を主催しています。日本能率協会においても展示会主催事業は大きな柱であり、年間で30本以上の展示会を東京ビッグサイトや幕張メッセで開催しています。新規の出展者を取り込むことや、既存の出展者に複数の展示会に出展してもらうためにも展示会主催者としての協会の認知は重要でした。
このプロジェクト開始の経緯として、シェイプウィンでも広報PR支援として、個別の展示会の広報事務局・メディア誘致を担当してきたことがあります。日本能率協会が主催する最大の展示会はFOODEX JAPAN(フーデックス ジャパン)であり、2016年から4年間、展示会全体の広報窓口として膨大な数のメディア誘致と戦略的なPRを行ってきました。他にも、病院設備の展示会『HOSPEX』や『猛暑対策展』、『ホテルレストランショー』などの複数のPR活動を通じて知名度を高めてきたことが評価され、産業振興センター(展示会部門)のデジタルマーケティングを担当することになりました。
オウンドメディア運用でデジタルPRを実施
これまで日本能率協会では、展示会主催者としての宣伝活動を日経新聞などの経済系・産業系メディアへの定期的な広告で行っていました。圧倒的な読者リーチや日経新聞への出稿という確固たる権威性は確保することができました。一方で、展示会に来場・出展する実際の担当者やキーパーソンへのリーチは不足していたため、SEO・SEMを用いたデジタルPRの必要性がありました。
日本能率協会の広報担当者が企画したポータルサイト『展示会ドットコム』(現在は閉鎖)上でのコンテンツマーケティングやSEOなどのデジタル施策を受託し、サイト開設後、制作会社から引き継ぎ運用を開始しました。
ブランド認知ではビッグワードSEOも重要
SEOやコンテンツマーケティングでは、コンバージョン=問い合わせや資料請求などが重要視されることが多いですが、ブランド認知においてもSEOは不可欠な役割を果たします。特に、ビッグキーワードによる検索上位化はブランドの認知度向上に大きく貢献します。
ビッグキーワードを使用する検索エンジンでの検索は、特定のブランドやプロダクト、サービス、企業などに関連する情報を探したいときに使われます。”展示会”というキーワードで検索する人は、来場や出展をするために漠然と世の中にどのような展示会があるのかを探しています。検索結果の上位に日本能率協会のブランド名が表示されることで、ブランドの認知度が向上し、もう少し詳細な検索をした顧客がブランドを選択する可能性も高まります。
しかし、ビッグキーワードで上位化するのは至難の業です。SEO施策として、HTMLコーディングやインフラの高速化などのテクニカルな部分の最適化はもちろん、コンテンツの拡充によりサイトの権威性を向上することで達成する作戦を立てました。
記事の数を増やす工夫
シェイプウィンがサイト運用を引き継いだときには、すでにいくつかの展示会のレポート記事が存在しましたが、圧倒的に記事の量が不足していたためコンテンツを増やす必要がありました。しかし、展示会レポートは切り口をまとめたり、数百社にのぼる出展者にインタビューをしたりと1記事を仕上げるためには相当な労力がかかります。
そこで、各展示会の出展者を複数取材し、顧客の声として出展内容や出展の効果などを記事にまとめました。大きく分けて13回の大きな展示会が存在し、開催の度に30〜60社にインタビューを行い、出展理由や出展内容、出展の効果などを記事化しました。これにより、オリジナリティの高い記事を大量に掲載することができました。また、この記事が顧客の製品の宣伝にもつながり、出展者の満足度も向上したのです。
リンクビルディング
リンクビルディングとは、Webサイトに外部のサイトからのリンクを獲得することを意味します。被リンクを獲得することで、Webサイトのランキング向上が期待されるため、SEO強化の一つとして重要な活動です。とはいえ、ただ単に被リンクがあれば良いわけではなく、リンク先のサイトについて言及されていることが重要です。
実は、この出展者インタビューによるコンテンツ創出は、リンクビルディングにも役立ちました。インタビューの掲載を出展者の担当者や広報担当者に伝えたことで、出展企業のSNSアカウントやWebサイトでも掲載を企業ニュースとして取り扱っていただけました。これにより、その企業のWebサイトから被リンクを獲得することもできたのです。特に、展示会に出展している企業は歴史があり、大手企業も多いため、ドメイン評価(ドメインオーソリティー、通称:DA)の高い被リンクを数多く獲得することができました。
ビッグキーワード”展示会”で2位
サイト全体で、タイトルやディスクリプション、H1などの主要な項目でキーワードの見直しも行いました。これらの活動を2年続けたことで、結果として、”展示会”というビッグキーワードでの検索で2位に表示されるようになりました。日刊工業新聞やKADOKAWAのウォーカープラスなど競合のWebサイトが上位化している中で、新規のドメインサイトが2位を獲得できるのは偉業と言えます。このときの1位には、経済産業省の外郭団体であるJETRO(ジェトロ)のサイトがあり、コンテンツも日本能率協会のサイトより充実していることや権威性で劣ることから、現段階でできる事実上の最大の結果であることが分かります。
横断的に展示会を訴求するミドルキーワード対策ページ
SEOにおいて目的を持ったユーザーを取り込むためにはミドルキーワードやロングテールキーワードでの検索上位化も必須となります。ミドルキーワードやロングテールキーワードを使って検索する顧客は、より具体的な情報を探している傾向があります。たとえば、”展示会 食品”などのキーワードであれば、食品関係の企業に勤めており、来場か出展を検討していることが伺えます。
目的が認知なので情報系キーワードに着目
検索数は少ないが具体的なキーワードであるロングテールキーワードになればなるほど、目的意識が高いユーザーであり、コンバージョンにも結びつくと言われています。しかし、この展示会ポータルサイトの目的は、日本能率協会が展示会の主催者であるというブランディングの一環として行われていたため、ある程度広くリーチする必要がありました。
企業の担当者が展示会に出展または来場しようと思ったときはどのような検索をすると思いますか?
おそらく、”業界名+展示会”というキーワードで該当する展示会を検索し、候補となる展示会をリストアップするところから始めるでしょう。実際、SEOの分析ツールを使って調べてみるとこの組み合わせのキーワードは検索ボリュームが多く、認知と行動喚起において有効であることが分かりました。
ジャンル毎のまとめページ
展示会+業界名のミドルキーワードでの検索上位化を達成するためには、出展カテゴリ毎のまとめページが必須でした。食品、観光、製造、機械、建築、交通など11のカテゴリのまとめページを制作し、各業種とその展示会の特徴などをまとめました。また、まとめページには関連する展示会のレポートへのリンクを張ることで、個別の展示会への興味関心を醸成、最終的には展示会ページへの送客を達成しました。
これらの施策により、ミドルキーワードでの上位化を達成することができ、新規セッション率は13%増(前年度比較)、トラフィックは342%増(前年度比較)と大幅な集客を実現しました。新規ユーザーの取り込みに貢献している点で言うと、ブランド認知を新たなオーディエンスに対してできていることが伺えます。
高品質記事制作のためのライター集団
SEOはテクニックではありません。高品質な記事を書くことは、SEOの成功に欠かせない要素です。魅力的なコンテンツは、Webサイトの訪問者が長時間留まり、コンテンツをよく読んでいることが期待されます。また、検索エンジンにとって有益な情報を提供することができ、検索エンジンのランキングを向上させる可能性があります。さらに、有益なコンテンツ記事はソーシャルメディアでシェアされるため、こういったコンテンツへのリソースの投資はGoogleが求めているものだと言えるでしょう。
ライターはたくさんいるが…
おそらく、どんな人でも文章を書いたことがあるはずです。実際に、SNSなどでライターと名乗っている人は多く存在します。ライターを探す際は、ランサーズやクラウドワークスに代表されるフリーランスのマーケットプレイスで、経験やスキルセットにより選定することができます。また、Indeedなどに募集広告を載せることで割と簡単に集まります。
良質なコンテンツを生み出す上で重要なのは、深い洞察力とジャーナリズムです。特に、展示会のレポートの作成では、数百社に上る出展者の中から今回のトレンドを発見し、読者に対して伝える力が必要になります。また、出展者インタビューでは、業界の理解や担当者のインサイトを引き出し、文章にアウトプットする力も必要です。
これまでのPRでの人脈がSEOで活躍
このプロジェクトでは、シェイプウィンがメディアリレーションズで築いてきたフリーランスライターやジャーナリストへ取材や執筆を依頼することで記事の質を担保しました。日本能率協会の展示会は、主に企業間取引(BtoB)がメインであるため、ITや製造の分野で活躍するライターをアサインし、年間を通じて取材と記事化を行いました。その記事を元にSEOスペシャリストが特定のキーワードを選定、SEOによるリライトにより上位化を目指しました。
コンテンツの質が高まったことで、デジタルマーケティングの側面では、上位化や滞在時間・回遊率の向上、被リンクの獲得を達成しました。実際のビジネスの側面では、出展者から好評をいただくことで、ブースの拡張やリピート、新たな出展者の獲得につながりました。
質への執着は強力なSEO施策
昨今のSEOでは、トラフィックを生み出す検索語句を見つけるためにキーワードリサーチ、検索エンジンとユーザーに高評価される品質の高いコンテンツ作成、ユーザーエクスペリエンスやモバイルフレンドリー、そして、他のサイトから得られるリンクを重要視します。
テクニック論に走りがちなSEOですが、質を高めることで小手先のテクニックではなく、本質的に検索エンジンやオーディエンスを引きつけることができるという証明にもなりました。質へのこだわりと引き換えに予算内で制作できる記事数は減少しましたが、結果として網羅するキーワード数やトラフィック数は増加したと言えます。SEOにおいては、Googleが公表している方針や目指すビジョンに忠実に従っていくことで長期的な最適化ができるのではないかと思っています。これもPRを長年培ってきたシェイプウィンだからこそ成し遂げた成果であると信じています。