明確な目的でFOODEX・出展者双方のメリットを得られたPR活動の裏側
食品・飲料の専門国際展示会「FOODEX JAPAN」で過去最大700以上のメディアを誘致。
「今まで来場されなかった女性誌などが取材に来てくれましたので嬉しかったです。」と草柳さんに語っていただきました。どのようにして過去最多のメディア来場を達成したのか、また、FOODEXと出展者双方にメリットのあるPRを実施できたのかについてインタビューをしました。
FOODEX JAPANについて教えてください。
草柳友美さん(以下敬称略)
日本能率協会は年間で約30の展示会を主催しています。日本能率協会が主催している展示会の一つが「FOODEX JAPAN(フーデックス・ジャパン)」で、「アジアで最大級の食品と飲料の専門の展示会」です。食品や飲料のバイヤーが国内外から来場します。
神村(シェイプウィン)
ーー他の食品・飲料の展示会との違いは何でしょうか?
草柳
1つは、食品の展示会は国内外問わずかなりの数が開催されていますが、機械や設備も多く出展していることが多いですが、FOODEXは食品と飲料の専門展示会と謳っているので口に入るものが数多く出展していますので新しい食材を求めるバイヤーが多く来場します。もう1つは、世界中からも約1万人の海外バイヤーが来場されるため全世界に販路が拡大できます。
神村
ーーFOODEXの出展社はどのような企業が多いですか?
草柳
出展される日本の食品メーカーは、大手よりも中堅から小さい規模の企業が多いです。来場されるバイヤーはFOODEXを宝探しの場と見ていただいていて、未取引企業を探される方も多いです。
神村
ーー小さい会社にとっても一獲千金のチャンスですね。
草柳
国内の大手スーパーのバイヤーやホテルのシェフ、海外のバイヤーまで幅広い層のバイヤーが来場します。販路拡大に大きく貢献していると評価をいただいています。
神村
ーー今までに出展された企業で、ヒットした例(商品または企業)はありますか?
草柳
漬け物を製造する地方の企業の例ですが、15年前に初めてFOODEXに出展し、その時名刺交換したお客様が現在の主要取引先となり、販路が広がったと聞いています。FOODEXのおかげでここまで大きくなれたと、それ以来毎年欠かさず出展されています。
他の例では、お酢のメーカーです。FOODEXが用意している公式バイヤーとの商談会権利は獲得できなかったのですが、どうしてもある海外バイヤーと商談したかったので、商談会部屋の外で出待ちしたそうです。結局、その熱意が伝わって、商談が成立しました。
神村
ーーその企業の努力はすばらしいですね! 出展者が数多くいる中で効率的に商談を進めるために工夫されていることはありますか?
草柳
商談前の事前準備は重要で、FOODEX事務局ではその支援に力を入れています。常日頃、我々は来場対象であるバイヤーに会い、どういったものを見たいのか、どういう出展者であれば取引したいと思うかをヒアリングしています。それらのニーズを全国行脚しながら食品・飲料メーカーに伝えることで商談機会の創出を支援する活動もしています。商談会シートの書き方などもレクチャーしています。
神村
ーー場の提供だけでなく機会の創造をされているところがポイントですね。山口県の首都圏販路開拓支援をしている私としても県内の企業に対してFOODEXの活用を促していきたいと思います。
さて、PR活動の話に移りたいと思います。
FOODEXのPR活動における課題とは
神村
ーー弊社に依頼される前はどのようなPR活動をされていましたか?
草柳
プレスリリースの配信やメディアからの取材対応は日本能率協会の広報が担当していました。昨年から展示会の各担当がプレスリリースやメディア対応もするような方針に変わりました。
神村
ーー全体のディレクションがある中で広報窓口まで担当されるのは大変ですね。
草柳
FOODEXは国内外合わせ3,000社を超える出展者が集まり、出展製品のテーマも幅広くあり、メディア対応が大変で、十分な広報活動ができないのではと感じました。
神村
ーーシェイプウィンがPR支援に入る前からFOODEXはメディアの取材がたくさん入っていたと思います。
草柳
そうなんですが、今までは受け身だったんです。テレビの取材申し込みがはなにもしなくてもありましたが、戦略的にメディアに仕掛けていくことはできていませんでした。
FOODEXの「PR活動の目的」とは
神村
ーーPRは活動の幅が広く効果も分かりづらいので、シェイプウィンではPR活動の目的を明確にすることから始めています。
草柳
FOODEX自体の認知としてPRは前提にあり、出展者へのアピールの一つとしてPR活動が重要であるということでコンセンサスがとれたと思います。
神村
ーー出展者が出展したくなる展示会にするためにもメディアが取材に来る展示会というイメージを持ってもらう必要があると考えました。
草柳
その提案をいただいたことで、FOODEXが「食のトレンド発信地」として認知されることを目的が目的となり、明確なPR活動ができるようになったと思います。
リサーチを元にしたプレスリリースがヒットしてメディアの来場数が増えた
神村
ーー具体的なPR施策の話しに入って行きたいと思います。
これまでのプレスリリース作成の課題は何でしたか?
草柳
プレスリリースの内容です。展示会主催者としてどのようなイベントをやるか、どのような展示エリアがあるのかということがメインで、メディアの人が興味を持ってくれている内容なのか分かりませんでした。
神村
ーー私たちも出展者の多さや展示エリアのテーマの多さから何をポイントにすればよいか迷いました。そのため、各ジャンルのメディアに何を取材したいのか調査をしました。ある程度のヒアリング結果からFOODEXの出展者にアンケートを取っていただいたことで、FOODEXのPRポイントが見えてきました。
草柳
「海外バイヤーはこんなことを望んでいる」、「次に来るのは柚子かもしれない」などの仮説を立ててプレスリリースを出せたことことは大きかったですね。今まで来場されなかった女性誌などが取材に来てくれましたので嬉しかったです。また、ワールド ビジネス サテライト(テレビ東京)などのビジネス番組からNスタ(TBS)などの情報番組まで戦略的にメディアに露出できたことはFOODEXのPRとして成功だったと思います。
テレビ・新聞・雑誌と幅広いメディアに対応した展示会当日のメディア対応
神村
ーー当日含めてFOODEXの広報窓口を担当しましたが、その動きについてはいかがでしたか?
草柳
メディアからの取材依頼を事前にまとめてもらったことで、当日のメディア対応がスムーズになったと思います。今まで取り組んでいませんでしたので、当日どんなメディアが来るか分からない状態でした。
神村
ーーテレビも含めて、いつどのメディアが来るかの管理は大変でしたが、よい結果に結びついたと思います。
草柳
メディアが来るスケジュールを組めたことで当日の混乱も少なかったかと思います。FOODEX主催者インタビューや通訳手配などもスムーズに行えました。
神村
ーーあまり待たせずに取材できたということで、非常にメディアの評判が良かったです。「FOODEXがしっかり対応してくれるので、よい画が撮れました(取材できました)」という声も聞きました。
定番となっている「美食女子グランプリ」について
神村
ーーFOODEXの中で定番となっている美食女子グランプリもPRのコンテンツとして活用させていただきました。美食女子について教えてください。
草柳
FOODEX美食女子は、モデルやタレント、栄養士など”食”に精通した女性たちが、新しい食のトレンドを発信するプロジェクトです。2013年からスタートしました。受賞された企業様からはお喜びの声をいただいてます。
神村
ーーどれくらい売れた商品がありましたか?
草柳
美食女子グランプリを受賞され、日本テレビの「スッキリ‼」で放映された商品は、3か月分の在庫が一気に半日で売り切れてしまうぐらいでした。
神村
ーー今回もグランプリ発表会には多くのメディアが出席されていました。Nスタ(TBS)でも受賞商品が報道されていました。来年の美食女子に向けて仕掛けていることはありますか?
草柳
2017年は、「スイーツ」「ドリンク」「ミール」「ママの愛」の4つの部門を設定しました。また、売る側の美食女子という視点で女性バイヤーが審査員に加わります。
神村
ーーテーマと選抜が明確になりましたね。美食女子の信ぴょう性が増したと思います。
草柳
食品は男性のバイヤーが多く、女性バイヤー自体が少なくて大変ですが、それでも20名ぐらいはご協力いただけそうです。
神村
ーーそれは面白いですね。美食女子が2016年よりパワーアップしていてこちらもメディアに対して仕掛けるのが楽しみです。
FOODEXのPRで出展者からも高評価
神村
ーー今回のPRは、出展者にとってプラスになりそうですか?
草柳
会期最終日に出展者にアンケートを回答してもらっています。「会期中にどこそこのメディアが取材してくれた」など書かれているのが今年は目立ちました。
神村
ーーテレビ朝日の「モーニングバード!」の対応をしていたときに出展者の方から、「FOODEXに出展するとテレビがこんなところに取材に来るんだ」と喜ばれました。来場メディアもご来場者も過去最高、テレビも7番組来ていただいて、私たちも結果が残せて良かったと思っています。
草柳
取材には地方紙や地方のテレビも来てくれましたね。
神村
ーーの地方メディアも取材に来てくれました。
来年のFOODEXに向けて「次はこういうPRをやりたい」とか、私たちに期待することはありますか?
草柳
メディアと折衝していただく中で、おつまみというテーマが企画の中で沸いていたと思います。それで今年「OTSUMAMI JAPAN」という企画をして、できれば日本だけではなく海外のおつまみを集めています。
神村
ーー「OTSUMAMI」はTEMPRAなどの日本発信の英語として新たな文化を海外メディアにも売り込んでいきたいですね。日本のものでも海外のおつまみでも、それを海外バイヤーがどう探しているのかについても面白いストーリーになるかと思っています。
来年のFOODEXの出展者にメッセージをお願いします
草柳
美食女子グランプリでは女性バイヤーを審査員に入れることで受賞製品のブランディング効果を、FOODEX全体では、前回の反省点を活かしてPR活動をより戦略的に仕掛けてテレビを始め多くのメディアを誘致することで、よりよい商談に結び付きやすいような活動を進めていますので、出展者の皆様ご協力をお願いいたします。
神村
ーーこの度はインタビューにご協力いただきありがとうございました。
草柳
ありがとうございました。
「FOODEX JAPAN」について
次回で42回目を迎える1976年より開催しているFOODEXは、商談を目的としたアジア最大級の食品・飲料専門展示会です。“食”にかかわる最新情報の提供と、より良いサービスの提供を通じて、食品業界の更なる発展に貢献しています。
編集後記
PRは活動内容の幅が広く、目的が曖昧になることが多々あります。露出記事数や売上アップなど本来のPRの目的からずれたり、PRをした結果をマーケティングやセールスと連携できていなかったりします。FOODEXにおけるPRの目的は「出展者を増やす」ためだったのです。PRだけで増えるのではなく取材が増えることでFOODEXへの期待値が高まります。また、既存出展者の満足度も高まります。PR活動によってFOODEXと出展者が共に成長していくための一役を担えたと思います。PRにできること・できないことを理解することでマーケシングやセールスとの連携など効果的な経営に繋がります。今後のFOODEXの躍進にご期待ください!