メディア露出をする手段はプレスリリースだけではありません。メディアが求めるネタや切り口を提案するためにもメディアの記者や編集者と直接コミュニケーションを取ることは重要です。
メディアキャラバンは、メディアとの構築をするメディアリレーションズにおいてとても重要な広報PR手法です。訪問またはオンラインミーティングでメディアからニーズ・インサイトを獲得することで、発信する情報の具体化をすることができます。
メディアキャラバンとは
広報PR担当者がメディアの記者や編集者のところに訪問して、新商品やサービスを各メディアに営業(売り込み)することをメディアキャラバンと言います。アプローチするメディアによっては、営業担当や役員と同行するケースもあります。
もちろん、メディア露出・記事を書いてもらうことは最終的な目的ですが、記事につなげるためのメディアのニーズ調査、特集やコラムなど露出機会のヒアリング、情報交換といった関係構築につながるコミュケーションを取ります。
商品サンプルなどを持っていき、実際に試してもらうことで良さを実感してもらったり、詳細に説明することで、自社の製品サービスを深く理解してもらったりします。メディアキャラバンを実施することでメディア露出の可能性は格段に向上します。
自社の商品やサービスによってやり方や効果は変わってきます。たとえば、化粧品や食品、グッズなど、実際に手に取って確認してもらえるものは情報を伝えやすくメディア露出につながる可能性が高くなります。
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メディアキャラバンにプレゼンは必要ない!?
また、ITや金融などの無形商材の場合は、プレゼン資料やメディアキット(記事URL)などを通して、様々な角度から具体的にイメージをしてもらうことで記事化の可能性を探ります。同業他社よりも深い理解や認知を図るためには、メディアと一対一でコミュニケーションを取るメディアキャラバンは欠かせません。
なお、ラウンドテーブルは、メディア記者や編集者を会議室に招待するのに対して、メディアキャラバンは、訪問することが基本となります。無形商材の場合は、オンラインミーティングでも遜色はありません。売り込みに行くということで張り切ってしゃべりすぎるのではなく、メディアの関心がある点を探りながら、インサイトを取得するようにしましょう。
メディアキャラバンのメリット
自社製品・サービスの理解促進
製品やサービスに対する理解を促進することがメディアキャラバンの目的です。反響待ちのプレスリリースと違い、メディアごとにどの情報を強調するか、重点的に訴求するかを調整しながら対話ができる貴重な機会なので、最大限の成果を得られます。
また、扱っている商品やサービスが専門的な製品サービスの場合は、専門メディアであってもわかりやすいように専門用語や基本的なしくみを説明できるよう準備しておきたいものです。商品やサービスを通じて、自社のことを知ってもらい、ブランディング強化、メディア露出を図っていきましょう。
メディアリレーションズの構築
メディアリレーションズの目的は記者や編集者との関係構築です。すでに関係のあるメディアと定期的に情報交換をすることで、関係を強固にすることができます。また、これまで接点のなかったメディアへのアプローチをすることも大事です。
メディアとの関係構築といっても基本的には人と人の関係構築です。知っている広報から情報が来るのと全く知らない企業から情報が来るのでは記事化の確率や記事に対する思い入れは変わります。まずは、広報担当者の顔と名前を覚えてもらうことを目標にするとよいでしょう。
メディアとの関係構築のポイントは、情報収集です。ミーティングでは、各メディアがどんな情報を欲しているのかをヒアリングすることに重きを置くとよいでしょう。ヒアリングを通してニーズを把握できれば、その場限りではない継続的なリレーションにも繋がります。
社員のモチベーション向上
営業や開発担当者など広報以外のスタッフをメディアキャラバンに同行することもあります。主な目的は広報では答えられない質問や専門的な解説です。
一方で営業や開発担当者にとってもモチベーションアップというメリットがあります。たとえば、消費者や業界の代弁者であるメディアからもらえるフィードバックは今後の施策の参考にもなります。また、それをきっかけにメディア露出が増えれば、広報活動の効果を実感してもらいやすくなります。
そのポジティブな雰囲気は社内全体にも伝播していき、営業個々のやる気の増加につながり、さらに先方から「そういえばこの前テレビでおたくの会社のことやっていたのを見たよ」という話になれば、交渉もより円滑に進むはずです。メディアキャラバンを実施することでそういった未来を描けることを社内にも具体的にイメージしてもらいやすくなります。
メディアキャラバンPR戦略のポイント
相手の立場で考える
アポイントを取る際は、対面で会う時間を作ってもらう価値がどこにあるかを丁寧に説明し、会うことを楽しみにしてもらえるように提案をしましょう。
対話の場では、通り一辺倒の営業トークではなく、媒体特性に合わせ説明の仕方を変える工夫も必要です。当然ながら、他社製品との違いは何かと聞かれることも多いため、明確に回答できるように準備しておきましょう。
また、社内のステークホルダーへの配慮も必要です。メディアキャラバンがどういったメリットをもたらし、どういう部分では訴求が弱いのか等をきちんと共有しておき、各部署との連携時に相乗効果を生むための協力を要請しておきましょう。広報担当の巻き込み力の見せ所です。
スケジュールやアポイントは短期集中で
メディアに携わる方々は、独占情報や最新の情報を喜びます。同業他社の情報で聞いた内容を嫌がるため、できる限り短期間でのキャラバン計画を立てましょう。
地方の企業が東京でメディアキャラバンを予定する場合、1泊2日で1日4~5件回る想定で計画することが多いようです。同席する自社の人材の時間も使うため、スケジュール管理やアポイントの時間調整、移動時間など、綿密に計画を立てておく必要があります。
また、よく陥る失敗が持参数の不足です。1日に何件ものメディアを回ることもあるため、想定していたより先方が大人数で対応してくれた際に、資料やサンプルが不足するといったことが起こりがちです。
商品や資料は余裕を持った量を準備しましょう。もし余りそうであれば、飛び込みで寄らせてもらうような気持ちで成果に結びつく行動を地道に行なっていきます。
メディアキャラバンだけではPRは成功しない
メディアリレーションズの目標は、記者や編集者と良好な関係を築くことです。結果として、メディア露出が増えるということを社内の共有認識としておきましょう。
相手も人なので、熱心にコミュニケーションを取ってくる広報とは友好関係を持ちたいと思います。社内外にお
ける「複合認知」を、黒子として実直にこなすことが成功につながることを肝に銘じましょう。こちらが話すばかりではなく、メディアの反応を丁寧にヒアリングし、会ってくれたメディア担当者がどのような情報を求めているのか、今後どのような企画を予定しているか等をできる限り拝聴し次につなげます。
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メディアキャラバンの流れ
①サービスや新商品の広報/PR戦略の企画
プレスリリース、投げ込み、記者発表会、ラウンドテーブル、SNS、展示会参加など複合的に検討する中で、必要に応じてメディアキャラバンの実施を検討。
②アプローチする媒体を選定
雑誌、新聞社、テレビ局、ラジオ局など露出を増やしたい媒体を絞る。
③日程調整
同行する社内のキーパーソンの日程を調整しつつ、メディアのスケジュールもできる限り短日でまとめて一気に回るスケジュールを作成。
④アフターフォロー
今後の関係構築のためにも、往訪したメディアにはしっかりとフォローの連絡をしておき、しつこくならない程度に再度サービスや商品を案内。
メディアキャラバン実施時に、担当記者へ次のラウンドテーブルや懇親会の案内をしてしまい、次のコンタクトを確約してもらうといった併用手法も有効。
ハイブリッド・メディアキャラバンの時代に
コロナ禍でメディアも在宅ワークが増えました。これまでのメディアキャラバンはメディア企業を訪問して対面でのミーティングメインでしたが、オンラインで実施することも増えました。
オンラインの課題は、デモンストレーションや試食といった物理的なプレゼンテーションですが、一方でメディアの特性や記者・編集者の特性に合わせたコミュニケーション手段を選ぶことができます。メディアキャラバンは、確実に関係構築を図り、リアルな反応を獲得できる有力な広報手法の一つです。
まずは社内での理解を得るところから始めていき、自社に合っている取り組み方を分析しましょう。そういった情報共有を行なうだけでも新しいアイデアが生まれる可能性もあります。今の自社にとって攻めの広報が有効な手法だと感じられた場合は、ぜひ取り組んでみてください。