皆さんは円卓を意味する『ラウンドテーブル』と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
中華料理屋に置いてある丸いダイニングテーブルや会社の会議室を思い浮かべる方もいると思います。また、コミュニケーション手段として社員同士の協力体制を高めるミーティング手法を思い浮かべる方もいるかもしれません。
昨今、広報PR活動において、少人数の記者や有識者、顧客へ向けた情報コミュニケーション手法として『ラウンドテーブル形式』を利用する動きが広がっています。
メディア露出やメディアリレーションズに関する課題を抱えている広報PR担当の方は、ラウンドテーブルというPR手法を検討してみてください。
- 記者発表会は費用も時間もかかる
- 一方的な発表会に手ごたえが感じられない
- より双方向での有意義な情報交流の場として自社のことを知ってもらう方法を探している
ラウンドテーブルの意味
ラウンドテーブル(roundtable)は、円卓を囲んで立場役職関係なく意見交換を行なうコミュニケーション方法です。英国で生まれた『ブリタニア列王史』のアーサー王に仕えた忠誠心の厚い騎士たちが丸いテーブルに座ることで席順による上下関係を無くしたことに由来します。
(引用:アーサー王伝説『知の再発見』双書)
昨今は、企業内の会議でも利用されるようになってきた手法ですが、メディア露出を検討している企業がメディアの編集者や記者への企業・製品理解を強化するPR手法、メディアリレーションズの一種としても注目され始めました。
従来のラウンドテーブルのメリットである、業務的な会議方式では生まれにくい参加者の一体感や、会の質の向上がメディアやジャーナリストとのコミュニケーションでも得られ、より具体的な広報成果を得られるのです。
テーブルPRが必要な場合とは
ラウンドテーブルの目的は、メディアとの関係づくりです。業界で影響力を持っている特定の記者や有識者に自社のことをより深く知ってもらうことで、今後の特集の相談やメディア露出の機会を得やすいなどの効果があります。特に以下の項目に課題を感じている広報担当者は解決の糸口を見つけられます。
- 発表会や投げ込み、プレスリリースの次のステージに行きたい
- 自社の商品/サービスに親和性が高い記者との親密度を高めたい
- もっと能動的に深い情報を取りに行きたい
- 自社の認知度の高め方を記者や有識者から直接伺いたい
導入する3つのメリット
1.自由な意見がでやすい
ラウンドテーブルでは、言葉の通り、円卓を囲んでメディアと直接対話します。発表会のように一方的な情報発信ではありません。実施する際に円卓を用いるのは、「直角法」と呼ばれ、カウンセリングを生業としている職業では広く採用されていますが、斜め45度に座ることでより圧迫感が薄まり、会話がしやすくなると言われているからです。初対面やまだ打ち解けてない人が相手の場合でも、発言しやすい心理状態をつくることができるのです。
ルールとして、発言が個人の評価やそれ以降の関係性に影響を及ぼさないことを明示することで、通常より気兼ねの無い意見を発言しやすくなります。
2.有識者の考えを間近で聞くことができる
ラウンドテーブルでは会社の経営陣や社長自らが参加したり、同業他社のステークホルダーが参加したりすることもあります。本来であれば利益相反が生まれやすいため発言を委縮してしまうケースもあるでしょう。しかし、前項の通り、ラウンドテーブル形式はどの立場の参加者でも発言しやすい雰囲気を提供するため、率直な意見が議論を活発化させやすいです。社内外の有識者の意見を拝聴することで、互いに新たな視座を得られることが期待できます。意見交換は経営全体における気づきやヒントを得られる可能性の場であるため、自社のキーパーソンの皆さんにも積極的に参加してもらいましょう。
運営する広報担当者からしても、その場で臨場感を味わえることはとても貴重な機会と言えます。業務上の指示の理解度向上だけでなく、広い視点で職務を取り組む助けになります。
3.関係企業や業界他社の実態を身近に感じられるようになる
同じ会社ですら自分の部署以外とは繋がりが少ないものです。他部署の業務内容を詳しく把握できておらず、自分の会社のことなのに相手に説明ができなかった、ということは少なからず経験したことがあるのではないでしょうか。
会社内だけでなく、業界全体の流れを把握することや、業界の課題をテーマにすることで、言語化出来ていなかった実態の整理が進むなど、工夫と意識次第で様々な恩恵が得られます。
他の領域への関心度を上げて、横のつながりを強化したり、他社の仕事の進め方や考え方を知ったりすることは、自社の業務能率の向上や課題の早期解決につながります。
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広報PRのラウンドテーブルの具体事例
1.取引先担当者によるラウンドテーブル
取引先に協力してもらい、より自社サービスを知ってもらう機会を創出します。サービスの理解が深まり、信頼関係構築にも繋がるため、既存顧客への売り上げ向上などの営業支援に直結させたい場合にオススメです。また、取引先同士のパイプ役として、同業や異業の交流会にするなど工夫をしていくと効果は高まります。
2.記者を招待するイベント型ラウンドテーブル
少人数の顧客向けセミナーを開催する際に、懇意にしている記者やこれから仲良くしていきたい記者を招待して、一緒にディスカッションしていただきます。顧客にはより自社を好きになってもらうきっかけになり、記者の皆さんにも自社サービスをより深く認知していただけます。また、リアルな消費者の声を記事にしてもらえるなどのチャンスが広がります。
さらに、記者同士の繋がりを創出することで、業界全体の活性化を促せるため、結果として自社の社会信用力も向上させることができます。
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3.懇親会型ラウンドテーブル
業界関連記事を書いている記者を10名以下など少数に絞って招致し、懇親会形式のプレゼンや情報交換の場を設ける方法です。客観的視点からの意見を拝聴することもできるため、自社の改善ポイントを明確にし、優先順位をつけていきやすくなります。最近は、Youtube、Instagram、Twitterなどで発信し、影響力を持っているインフルエンサーを招待するケースも増えているようです。記事や話題にしてもらいやすい参加者に絞ることで、広報効果の最大化を狙えます。
注意するポイント
メリットを効率よく発揮するためのポイントとして、参加者には以下の基本ルールを順守してもらいましょう。
- 少人数かつ双方向のコミュニケーションを意識する
- 発言を明確に否定しないようにする
- 参加者の区別(地位や知名度など)を排除する
- 課題を限定しすぎない
- スケジュールを明確に決め、タイムキーパーのコントロールに従う
また、基本ルールとあわせて、注意してほしい点としては、「一度で完璧なものは出来上がらない」ということを運営側も参加者も認識することです。
会議が活発になり、反対の意見が出ることは会としてはとても有益ですが、当事者同士には少なからず遺恨が残ってしまい、今後の関係に影響が出る可能性があります。この前提認識を参加者に徹底するのは難しいので、会の実施に先駆けてラウンドテーブルの趣旨を参加者に複数回伝えて理解してもらいましょう。
運営側も、常に実施後の振り返りと改善をしていき、より有益な場になるよう十分に留意していく必要があります。人の心は複雑ですので、著しく対立関係を生んでしまいそうな方の参加は調整するといったルールを決めるのもよいでしょう。
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広報以外でも使えるラウンドテーブル
ラウンドテーブルのミーティングは、社員間のコミュニケーションの質を向上させる有用な手段です。正しく運用すれば、大きな効果を期待できる反面、実際にやってみると、「ただの座談会になってしまった」というような誤った運用をしてしまう企業も多くあります。
しかし、目的を明確にして運用することで、『ラウンドテーブル』は自由な発言が飛び交う活気のある広報ツールとなりえます。
みなさんの会社でも取り入れてみてはいかがでしょうか。