広報PRという仕事について皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか? テレビの報道番組などで『広報担当者』というテロップと名前が映り、自社の製品やサービスなどを紹介している人を見たことがあると思います。
広報PR担当者というと、会社の顔としてキラキラしているイメージがありますが、実際はその逆で黒子となり会社の情報発信やコミュニケーションを影で支える縁の下の力持ちです。そんな広報PRの具体的な仕事内容やどのようなスキルを磨いていけばよいのかついて解説します。
広報PRと広告の違いを理解することが大事
広報PRとは、企業や組織などが公衆に対し活動内容や商品などの情報発信を行う業務、またはその担当者や部署のことを指します。
取材を受けて記事になるという点では、記事体広告の進め方と似ているため、業務と混同されることがありますが、広告は新聞や雑誌・テレビなどの広告枠を買って、商品や企業の宣伝を行うことであるのに対し、広報とは情報を受発信することで新聞や雑誌などの媒体に記事として取り上げてもらうことが主な仕事です。
従業員や株主、消費者などのステークホルダー(利害関係者)に活動内容などを理解してもらうことで良好な関係性を構築することなども含まれており、「PR(Public Relation)」とも言われています。広報とPRは別物という捉え方もありますが、目標とするゴールに変わりはなく、企業名や事業内容、商品、サービス等をより多くの人々に知ってもらうことにあります。
また、広報の仕事は、自社ブランドの認知度を高めるための社外活動、企業の一体感を高め、社員の働きがい向上や目標達成に繋げる社内活動などが挙げられます。時代の移り変わりに応じた方法を選択し、会社の成長に貢献していきます。
広報PR担当者の役割と目的
広報には、主に以下の4つの役割や目的が求められます。
1.ブランディング(ブランドマネジメント)の促進
ブランディングとは、ターゲットとする相手に自社ブランドに対して良いイメージを持ってもらうことです。自社ブランドの価値を明確化し、差別化させ、付加価値を積み重ねていく施策や活動のことで、広報はそのブランディングの促進を担っています。
ブランディングの促進により、自社ブランドを正しい認知(ターゲットに持ってもらいたいイメージ)で社会に広めることは、自社の存在意義を明確に定め、それを軸に経済活動を行う際にスムーズにする効果を生み出します。
また、企業に対してマイナスのイメージがつかないようにレピュテーションマネジメントを行うのも広報担当者の役割です。
2.コミュニケーションハブとしての役割
広報はコミュニケーション全般を司る仕事でもあります。プレスリリースや自社ブログなどでの一方向の情報発信に依存せず、株主や投資家、取引先、顧客、従業員といった「ステークホルダー」と呼ばれる人たちとの双方向コミュニケーションを図るハブとして、良好な関係を構築する役割も担います。
双方向コミュニケーションで価値ある情報交流を行い、より強固な信頼関係の構築を目指します。
企業理念やビジョン、経営層のメッセージや各部署の仕事内容、社内制度や福利厚生など様々な情報を広報から社員やその家族などへ定期的に共有することで、優秀な人材の獲得や、社員の働きがいにも繋がり、全社に共通意識が芽生え、結束感も強まります。
3.自社と社会の架け橋としての役割
経営陣や現場の社員は自社の業界について熟知していても、業界外に目を向けられる余裕がないこともあります。
広報担当者が日頃からあらゆる角度にアンテナを張り、世間のトレンドに敏感になることで、その情報収集が自社に新しい価値を生み出すことに繋がることもあります。
他部署の人達との交流、あるいは既存の関係性をより良くするため、広報活動として社員が気軽に参加できるイベント情報を共有したり、社内報で社員紹介企画をしたりすることで、社員同士の良好な関係構築を促す機会を作ることができます。
4.メディアリレーションズ構築と認知拡大
メディアリレーションズとは、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、WEBをはじめとしたメディア、そして、記者や編集者とつながり、良好な信頼関係を構築することです。広報PR活動において基本的で重要な役割であり、広報PR活動の成功はメディアリレーションズが左右するといっても過言ではありません。
幅広く世間に情報発信する役割をもっているメディアを通じて、いかに効率よくスピーディに自社のニュースを世間に伝え、認知拡大を図ることができるかも広報担当者の大切な役割です。
情報発信の基本的なツールとして、プレスリリースの作成・配信を行います。プレスリリースとは企業がメディアに向けて発信する新サービス・新商品、事業展開などの自社の取り組みを、いち早く社会に広める公式発表です。
CMなどの広告宣伝とは異なるため、メディアに必ず取り上げられるものではありません。広報担当者はプレスリリースがメディアに掲載されるよう、日頃からメディアリレーションを築き、適時適切な情報提供を行うことが欠かせません。第三者の立場からの情報発信により、各ステークホルダーからの信頼を得やすくなります。
広報PR担当者の主な仕事内容
広報の仕事は大きく『社内広報』と『社外広報』の2つに分類することができます。業務内容やコミュニケーション相手は異なりますが、『コミュニケーションを通じた関係構築』であることに変わりはありません。
社内広報
社内広報は会社で働く全てのメンバーや社員の家族など、内に向けた発信が主となり、インナーコミュニケーションとも呼ばれます。自社のニュースや活動を知らせることで、企業の一体感を高め、社員の働きがい向上や目標達成につなげます。
手段としてはメルマガ配信や社内報などのメディア作成、イントラネットやブログ・社内SNS等を活用します。最近では、社員向けのコンテンツを社外にも発信し、将来の社員やステークホルダーに向けたコミュニケーションをするオープン社内報という手段も流行っています。社内広報の主な業務内容は以下の2つです。
1.自社の経営陣や組織、事業内容、経営状況の把握
まずは自社の経営陣や組織体制、事業内容についての把握は必要不可欠です。また経営に関する情報を発信することも多いため、自社の現状を知る必要があり、社長の目指すものや考え方を理解しておく必要もあります。
広報として自社情報を伝える立場にいる以上、自社の内情に誰よりも詳しく深い理解がなければ、ステークホルダーとの良好な関係構築ができず、スムーズな広報活動も行えません。誰からどのような質問を受けても的確に答えられるだけの知識量・情報量が必要です。
さらに、情報は常にアップデートしていく必要もあります。
2.社内コミュニケーションによる情報収集
情報収集は広報の要です。社内のあらゆる情報を効率よく収集するために、社員の日報やチャットツールを活用する、各部署に信頼できる人脈を作るなど、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。一度このような関係性ができれば自然と情報が集まってくるようになります。
社外広報
社外広報は社外に向けて自社の認知度を高め、自社の商品やサービスを広める役割です。さらに、ステークホルダーから信頼してもらえる企業・製品・サービスとなるよう、継続的なコミュニケーションをします。主に以下の4つの業務内容が挙げられます。
1.報道各社への対応
先述のメディアリレーションズです。プレスリリース配信やSNS投稿による情報発信や企画の持ち込みにより取材依頼が入り対応することもあります。
取材対応は情報鮮度の観点からスピードが何よりも大切。取材対応は丁寧かつ迅速に行うことで、メディアと関係性を構築していくことができます。
2.自社メディアやSNSを活用した情報発信
現代においてインターネットは人々の生活のインフラとなり、企業も自社メディアやSNS(TwitterやInstagram、Facebookなど)を活用した情報発信が求められる時代です。積極的な情報発信を行うことで拡散力をつけていかなければなりません。
SNSは炎上しないように、掲載内容や言葉使い等に注意しながら運用する必要はありますが、ユーザーとのコミュニケーションが取りやすいという利点もあります。すぐに多くのフォロワーを獲得するのは難しいですが、継続的に運用していくことで、ファンを増やして情報を拡散できるようになります。
3.サイトや求人票等の社外文章の広報チェック
広報PR担当者はブランドイメージを壊さないために、自社のサービスサイトや求人情報など社外に出て行く様々なコンテンツのチェックも行います。
会社の理念等に反していないか、開示してはいけない情報が含まれていないか、法やモラルに触れていないかなどをチェックする必要があります。もちろん各担当者が責任を持って対応すべきことではありますが、最終的な検問としての役割があると考えて業務を行います。
4.株主や投資家と関係を築くIR活動
IR(Investor Relations)とは、企業が株主や投資家に対し、株主総会や決算説明会などの場で財務状況などを開示し、投資の判断に必要な情報を提供していく活動全般を指します。
その際、広報と財務担当者等と連携して情報発信を行うことで、株主や投資家たちに、より自社の将来性を感じてもらえることが期待できます。
広報に求められるスキル
広報の仕事に求められるスキルは、以下の5つです。
1.コミュニケーション能力
対メディアだけでなく、従業員や株主、消費者などの幅広いステークホルダー(利害関係者)と双方向のコミュニケーションを行い良好な関係構築が広報の役割です。
広報は『会社の顔』とも言えるポジションのため、円滑なコミュニケーションによって、相手との関係性をよりよくしていくことが求められます。各ステークホルダーの求めるものを理解し、それぞれに適した手段でアプローチをしていく必要もあります。
また、企業理念やミッションに沿うかどうかを常に照らし合わせ発言するという高い視座での判断を迫られる場面もあります。信念をもって誠意あるコミュニケーションに努めることが大切です。
2.文章力・言語化の力
広報の基本的な役割は『伝える』ことです。企業情報を適切に発表するためのプレスリリースや、代表インタビューの想定問答集やスピーチの原稿を用意するなど、文章力はどのような場面でも重要になります。
発信する情報は自社イメージや評価に直結するため、誤字脱字などの間違いも許されません。
また、商品やサービスの魅力を最大限に引き出すために、それを言葉で表現する言語化の力も求められます。
3.情報収集能力
広報が効果的に情報発信するためには、沢山の情報を集めて意味のある形にまとめなければなりません。収集方法としては社内外の人々を通して得るもの、書籍や雑誌、新聞やマスコミ、ネットから得るものなどがあります。
これらの情報を効率よく収集・理解し、真偽を見極め、情報の整理をしながらアップデートをしていくことが求められます。
4.危機管理・問題対応能力
会社としてリスク管理をしていてもトラブルが起きてしまうこともあります。広報は、いつ訪れるかわからないそうした事態に備え、危機管理体制を整えておく必要があります。
日ごろからニュースをよく読んで、最新の対応事例を学び、成功事例、失敗事例を理解しておくなどの準備する力が求められます。
現代はSNSの普及により情報が瞬時に拡散される時代のため、的確でスピーディーな判断と対応を行えるかが、その後の自社ブランドや価値に大きく影響を及ぼします。
5.計画・企画力
広報PR担当者は計画・企画力も求められます。自社の商品やサービスをより多くの人から興味をもってもらうには、単なる情報配信だけでなく、時代や流行に合わせた企画力が必要になります。
「どのような情報がよいか」「どのような伝え方がベストか」など計画や企画を立てるには先見性を持つ必要があるとも言えます。
広報は企業の顔であり黒子である
広報とは、企業や組織などを各ステークホルダーに対しPR(パブリックリレーションズ)する仕事です。対メディア、対顧客だけでなく、従業員や将来の従業員、投資家など、様々なステークホルダーに対して適切な方法でコミュニケーションをとることで良好な関係を築くことができ、商品購入やブランド力アップなどの成果に結びつけることを目指します。
企業の顔として華やかなイメージがありますが、企業の発展になくてはならない重要な黒子的な役割を担い、責任感とやりがいを感じる仕事です。
何よりもコミュニケーションが好き、情報収集や情報発信が好きであれば、自ずと自社や業界についての理解が深まり、広報としてのスキルは自然と身についていきます。