fbpx

難しくないBtoB企業の広報PR戦略と成功事例

華やかなイメージのBtoC広報(一般消費者向け商材の広報PR)に比べ、法人相手のビジネスを宣伝していくBtoB広報は、分かりづらく、PRネタやメディア露出が少なく、難しいイメージがあります。なぜ、BtoB企業の広報PRを難しく感じるかというと、プレスリリースやメディア露出、SNSでの情報発信や運用など世の中で多く紹介されている成功事例は大半がBtoCのものであり、BtoB企業に当てはめることが難しいからです。この記事では、BtoB広報とは何か、どのような広報PR戦略を考えればよいのかを成功事例を元に紐解いていきます。

BtoBの広報PR戦略〜目的は認知より信用獲得

握手するビジネスマン

企業の成長過程において、売上が鈍化するタイミングは必ずあります。多くの経営者や営業責任者、マーケターは「企業や製品の認知が足りないので、引き合いが少ない」と考えるでしょう。実際、大手企業とスタートアップや中小中堅企業を比べたら、認知度の高い大手企業の方が断然引き合いは多く、受注単価も高くなるのは当然です。

一方で、広報PR活動をすれば、すぐに企業や自社製品・サービスの認知度が上がり、問い合わせや営業リードが増えるかというと、それは違います。主要なビジネスメディアやテレビに掲載された後の1週間は問い合わせが増えるかもしれませんが、その後はすぐ元に戻ります。BtoB広報を行う目的を設定した上でPR活動を開始しないと「思っていた広報PR成果が出ない」「思っていたよりも時間がかかりコストパフォーマンスが悪い(CPAが高い)」という結論に陥ります。なんとなく広報PR活動を始め、上記の理由で広報活動が先細りする企業を多く見てきました。

営業戦略と広報PR戦略の密接な関係

BtoB企業の広報担当者(特に一人広報さん)から広報戦略をどのように組み立てたらよいかという相談は尽きません。BtoB企業はメディア露出の機会が少ないため、いつの間にか広報PRの目的が、記事が出ることになっていたり、SNS運用においても投稿を継続することが目的になっていたりします。

BtoB広報は営業戦略と密接に関係していると言えます。BtoB企業の営業活動は、リード顧客(見込み客の前段階)を獲得し、商談に引き上げ、商談中の顧客企業における意思決定のフォローアップ、受注後の契約継続や買い替え、アップセルとBtoC商材と比べて営業プロセスが長いのが特徴です。

この営業プロセスにおける各フェーズ毎に課題が必ずあります。

  • 引き合いが少ない
  • 商談に引き上げられない
  • 商談しても他社に決まるまたは受注できない
  • 受注しても他社に乗り換えられる

これらの営業課題に対して、認知度を広報PR活動で向上して営業の引き合いを増やそうというのはだれでも思いつくことです。ただし、認知を増やすにはコミュニケーション接点を増やすことの方が簡単です。雑誌や新聞広告、Googleなどのキーワード広告、展示会への出展、セミナーやリードジェネレーション広告など様々なソリューションがあります。

もちろん、広報PR活動によって認知度を高め、引き合いを上げることは可能ですが、時間がかかるのです。要するにBtoB企業においては広報PR活動に何を期待するのか考えていかないといけません。

営業リード獲得を目標に設定すると失敗する

BtoB企業の広報PR活動の目的を営業リードの創出(引き合いの増加)に設定してしまうと必ず失敗します。プレスリリース作成やSNS投稿など準備や制作、関係者とのやりとりなど時間がかかる割には記事露出などのアウトプットが少ない、結果として見込み客の数が大幅に増えることもないという問題が生じます。前述の通り、営業活動においてはフェーズがたくさんあり、各フェーズ毎の課題を分解して広報PRで解決する方法がないか考える方が現実的です。

例えば、広報PR活動によって商談をスムーズに進めることもできます。業界紙でのメディア露出で製品サービスが紹介され、ビジネスメディアで社長のインタビュー記事を掲載してもらえば、企業や製品サービスの信用力も上がり、商談引き上げ、競争率・受注率の向上、長期継続・契約が可能になるのです。

認知・引き合いから受注・継続までの顧客の動きと営業活動を可視化するカスタマージャーニーマップなどを用いて社内で共有することで、広報PR担当者としてどのように企業成長や営業活動に貢献できるかを決めることをオススメします。営業課題と連携した広報PRの目標やKPI設定であれば、社内での納得感も強いのです。

BtoCの事例ではありますが、PC専門店で有名な『ドスパラ』を運営するサードウェーブでは、販売促進企画でカスタマージャーニーマップを作成したことで、認知から売上(新規&再購入)までのプロセスが明確になり、そこで必要な広報PRや広告の手段を明確にできました。

関連記事

プレスリリース配信やSNS運用でのコンテンツ発信の違い

オフィスで仕事をする女性

BtoC商材であれば、新商品やサービスのアップデートなどニュース素材が多いのは事実です。BtoB企業の広報であれば、プレスリリースを作成・配信は年に1〜2度の製品アップデート、導入事例、セミナーやイベントの開催程度。SNSの投稿でもプレスリリースと同じ内容に加え、採用情報や社内イベント、社員紹介といったものが中心となるかと思います。要するに”バズる”情報発信ではないのです。

商品ライフサイクルの違いで広報PR戦略も変わる

広報PR戦略はBtoBとBtoCの対個人/対法人の事業形態により変化しますが、同時に商品のライフサイクルでも広報戦略は変わります。BtoB企業の製品サービスは1〜2年以上の長期で利用してもらい、なかなか買い替えないものが多いです。一般消費財のように一過性のブームとなることは希で、じわじわと浸透していきます。

商品ライフサイクルが短いエンターテインメントや家電、食品(定番以外)などについては、市場にどんどん新しいものが投入されるため、一気に拡散し、一気に売る短期決戦が必要です。しかし、BtoBの商材は、意思決定の時間もBtoC商材よりも長いため、顧客の『説得』『納得』『理解』といったプロセスが重要になるのです。

この『説得』『納得』『理解』といったプロセスに広報PR戦略は有効的です。自社で作成した営業資料では、顧客の信用を得ることは難しいですが、専門雑誌に掲載された記事で製品サービス紹介や導入効果、ビジネスメディアで社長インタビューや企業紹介があるだけで、顧客の納得感は桁違いです。意思決定のプロセスにおいても提案書やカタログ、HPの内容だけでなく、インターネットで口コミやメディア記事を検索して検討します。BtoB広報ではメディア露出やSNSの活用で受注率が大きく変わるのです。

プレスリリースやSNS投稿のBtoB広報ネタ

ネタが少ないBtoB企業ではどのような企画や情報を発信していけばいいのでしょうか? プレスリリース作成・配信できるレベルのコンテンツがない、SNS投稿のネタがマンネリ化するという課題をよく聞きます。

シェイプウィンの広報PR支援では、顧客企業やその会社の製品サービスの信用力を上げるためのメディア露出やコンテンツ企画を提案しています。例えば、過去に支援したスマートロックの『Akerun』を展開するフォトシンスでは、資金調達新製品発表などはもちろんのこと、コワーキング施設に関するセキュリティ特集として三井不動産の『WorkStyling』の事例をBusiness Networkに取材をしてもらうことができました。

機密保持の観点から導入事例を社外発表できないBtoB企業も多いと思います。その場合は、自社のビジネス上の強みを発信したり、業界の専門用語を解説する記事を作成するなどの広報PR手法があります。自動運転車両向けAI物体認識ソフトウェアを開発するストラドビジョンでは、知財活用の事例としてASCII.jpで紹介してもらうことができました。他にも大手企業とスタートアップのアライアンスに関する寄稿をTechCrunchで行うこともできました。工夫次第でいくらでも広報ネタを生み出すことは可能です。

関連記事:広報初心者がやりがち?意味のないプレスリリース5選!<例文付き>

中長期スパンでのBtoB広報の成果について

プレゼンをしている女性

前述の通り、短期的に認知を広げたい、メッセージを伝えたい、リードを獲得したいという場合は、広告や販売促進の手法を選んだ方がよいです。しかし、広報PRは、BtoB/BtoC問わず、コンテンツの資産を残していき、コンテンツをマスメディアやソーシャルメディア(口コミ)、GoogleのSEOなどを通じてターゲット顧客に届けることで、ターゲット顧客に情報が浸透し、信用力(ブランド力)を得られるのです。

BtoCの製品サービス広報PRは、販売促進(マーケティング)と一体となって進めていくのに対して、BtoB広報は営業戦略と深く連携をして行くことが大切です。広報PR担当者は、経営層だけでなく、営業、マーケティング、開発、カスタマーサポートなど会社のすべての組織と連携をすることができる特殊なポジションです。広報PR戦略を広報が単独で決めるのではなく、カスタマージャーニーマップを作成し、社内で一丸となった広報戦略を進めることで、成果を表現しづらい広報PR活動においても社内の信用を得られます。結果として広報PR活動はBtoB企業の事業を成長させていく重要なマーケティング活動になるのです。

Picture of 神村 優介
神村 優介
徳山工業高等専門学校卒業。在学中にNHK高専ロボコン出場経験を生かしたロボット教育ビジネス「MAKE21」を始める。2005年にこのビジネスで経済産業省後援のドリームゲートビジネスプランコンテストの中国地区大会で最優秀賞を取得。その後、株式会社セガトイズに入社し、玩具の企画開発マーケティングを担当。お風呂で使える家庭用プラネタリウム「ホームスターアクア」をプロデュースし、年間15万個出荷の大ヒットを記録。独立後、広報PRを中心にマーケティング企画支援を行うシェイプウィン株式会社を24歳で設立。これまでにChatWorkやスマレジ、TEMONAなどスタートアップの広報PRやマーケティングを支援。