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コロナ禍のニューノーマルで広がった<衣・食・住>のサービスとマーケティング視点での考察

今回の年末年始(2020年大晦日から2021年正月)、みなさんはどのようにすごされたでしょうか。

前回(2019年大晦日から2020年正月)の賑わいと寛ぎ気分に浸っていたとき、今回のような“Withコロナ”でよもや年越しを過ごすことになるとは、おそらくだれも想像しえなかったにちがいありません。

今回ほど、年頭における新年の挨拶が相応しくない年はないでしょうし、「新年おめでとうございます」(A Happy New Year!)という言葉を憚られるほどのことを、全世界的に経験したことは、戦争期間などを除けばおそらくないでしょう。

新型コロナウイルスは、昨年10月以降は再び全世界的に猛威をふるいはじめ感染拡大の勢いが止まりません。とくに、英国では12月に変異したコロナウイルスが急速に拡大し、フランスなどのEU諸国では英国からの交通や往来を遮断しています。

国内でも年末から感染拡大が収まらず、連日の感染者数を聞いても驚かないほどの感覚におちいっています。

おそらく、新型コロナウイルスの感染は沈静化と拡大期を交互に繰り返しながら、あと数年はこうした状況が当面は続くことになるでしょう。それは、すべてが不確実で不安定な社会の出現を意味しています。

いまやこの新型ウイルスへの対策こそ、どの国もそれぞれの国情に関わりなく世界の共通した喫緊の課題となっています。

世界的な通信社AFPによれば、1月10日20時時点での新型コロナウイルスの感染者数は全世界で約9,000万人、死者も200万人ちかくに達しています。これが、わずか1年余りのことなのです。

これほど科学技術や医療の発達した21世紀において、今回の事態はまさに人類にとっての大きな試練であり危機と言えます。

新型コロナウイルス感染拡大は、業界や業種を問わずそれまでの私たちの日常生活を一変させてしまいました。今回の事態は、私たちが当初想定していた以上に長引くでしょう。

この長引くだろう“Withコロナ”社会、それが私たちの価値観、心理、行動に大きく影響し、ライフスタイルそのものを変えてしまうにちがいありません。

「ニューノーマル」という言葉は、一般社会にも定着しつつあります。そのとき、言葉だけではなく、私たちの考え方や行動様式そのものがそれに適応せざるをえない時代となります。

「衣」ーーマスク着用の日常化とテレワーク

マスクをつける女性

“Withコロナ”の生活は、まずなによりも“Withマスク”の生活です。私たちがマスクをするのは、春の花粉症と冬のインフルエンザ流行時期がほとんどでした。それが、通年でつねにマスクを着用しなければならない生活となります。

今日、マスクはいたるところの自動販売機で飲料を買えるように、いつでもどこでも手に入ります。家電量販店や書店の店頭など、業種業界を問わずに手軽にマスクを購入できます。

マスクも、素材・柄・色・デザイン・機能などが多様化し、あらゆる業種や企業を問わずにその製造に参入しています。

昨年7月のブログで、“今後マスクは、コーディネイトするファッションアイテム(ブランド)になります。”と私は述べました。

8月には、オンラインによるデザインマスク専門店「masouq マスーク」が早くもオープン、9月にイオングループ系企業のマスク専門店「Mask.com(マスクドットコム)八重洲地下街店」をオープン、11月には子ども服ブランド企業が「ららぽーと海老名」に、12月には渋谷センター街に「MASK CLUB」の1号店がオープンするなど、マスクのファッションブティック化が急速に伸展しています。

上記はおもに女性向けです。これからは、マスクにワンポイント用のプチアクセサリーを付けるのがおしゃれのトレンドとなるかもしれません。とくに、流行に敏感な女子高生などのティーンの間ではそれがトレンドになる可能性があります。

男性では、ビジネススーツと同じような柄(例:ヘリンボーン、グレンチェックなど)の登場だけではなく、スーツやワイシャツとおなじようにマスクもひとり一人の顔に合わせてオーダーメイドするサービスも登場してくるに違いありません。

テレワークがこれからますます増大して日常化すると、それにともなってファッションの変化も起きます。男性は、おそらくスーツを着る機会がかなり減ります。

そうすると、そうしたワークスタイルに相応しい服装が求められます。男性であれば、スーツにネクタイという従来のオフィスでの服装ではなく、さりとて普段の自宅で寛いだカジュアルすぎない最適な装いが求められます。

「食」ーーテイクアウトの増加は、巣ごもり消費の「福音」か

デリバリーフード

新型コロナウイルスは、すべての事業者に壊滅的な影響をもたらしていますが、そうしたなかでもとくに飲食店は、今回のコロナウイルスによるも被害をもっともこうむっている業界のひとつです。

今日では、どこか繁華街にでかけて友人や知人たちと会食して楽しい時間を過ごすことは、新型コロナウイルスの感染するリスクの高い行動になってしまいました。

飲食店の倒産が昨年は過去最多を更新し、いくつかの老舗廃業・閉店のニュースに接した人も多いでしょう。

大手のファミレス外食チェーン店も例外ではありません。こうした状況のなか、大手ファミレスやハンバーガーチェーン店でも「客席のないテイクアウト・デリバリー店舗」を強化しています。

牛丼チェーン店の松屋では、すでにセルフサービス方式に、すき家では客席すべてでタブレット端末による注文方式に切り替えています。

こうすることで、人との接触機会の低減、注文受付や配膳の人員の削減ができ店舗運用の効率化もすることができます。

街中の個人経営の飲食店はどうでしょう。どこでも来店者数と売り上げの激減となったことで、これまでなかったランチの提供開始、テイクアウト(持ち帰り)とデリバリー(配達代行)専門サービス利用になんとか活路を見出そうとしています。そうした店は店内飲食が基本で、ランチやテイクアウトもデリバリーもそれまでは行っていない店がほとんどでした。

デリバリーといえば、それまでは自宅の近くにあるそば屋か中華料理店(店屋物)を利用するなどに限られていました。あるいは、デリバリー専門サービス(ピザ、中華、釜飯など)に注文すると決まっていました。ほかには、オフィス向けの仕出し弁当事業者などです。

一方、出前を通常行っていない飲食店と提携し、顧客からの注文から決済・配送などを代行する代行専門デリバリー事業者は、これまでにも「出前館」「ファインダイン」などがよく知られていますが、「ウーバーイーツ」以降、そのほかにも元々テイクアウトアプリだった「メニュー」、新興の「チョンピー」など続々と、スマートフォンアプリを利用した飲食の代行専門ビジネスに参入してきています。

大手チェーン店では、すでに「デニーズ新宿御苑店」「モスバーガー」も新宿に宅配やテイクアウトの専門店をオープンしています。今後は、都心や住宅街では、こうしたテイクアウトやデリバリー専門店舗、郊外やロードサイドではドライブスルー店舗が増えるでしょう。

地元の飲食店で、はじめてテイクアウトを利用したという人も多いでしょう。とくに、ビジネスパーソンは会社近くでランチしてきたので、テレワークの導入ではじめて地元の美味しい飲食店を経験したという人もいます。

そうした店が増えてランチ、テイクアウト、デリバリーなどを自由に利用できるようになったことは、地元に住む人たちにとっては「福音」となるでしょう。それまで食べてみたいと思いながら、利用したことがなかった店の味を手軽に楽しめるようになりました。

逆に飲食店では、テイクアウトやデリバリーでそれまでとは異なる人たちを顧客として獲得するチャンスともなります。

一方これとは対照的なのが、首都圏でオフィスビルが集中し、そこで働くオフィスのビジネスパーソン需要に支えられてきた飲食店でしょう。今後もテレワークなどが継続あるいは定着すれば、昼はランチ需要、夜は会食や飲み会などで賑わっていたお店への来店者数は激減します。なかでも、巨大オフィスビルが林立し、そうしたビルの地下などの飲食店にとっては大打撃です。

これからの飲食ビジネスは、“Withコロナ”社会に対応した客席数やその配置、店内飲食とテイクアウトとデリバリーなどだけではなく、それ以外にも創意工夫して顧客を獲得する方法を考えなければならない。

「住」環境ーー多様な働き方とリモートワーカー社会の到来

リビングでウェブ会議する若い女性

昨年7月のブログ「“Withコロナ”という「ニューノーマル」(新常態)によせて」では、上記のマスクのファッションブランド化と同時に、一向に進展しなかった働き方の多様化についても以下のように指摘しました。

“就業形態も多様化し、例えば在宅勤務、シェアオフィス、コワーキングスペース、サテライトオフィスなど、一定の距離範囲内に住んでいる人たちはそうしたオフィス空間を拠点にするようになります。またそれに対応し、テレワーク就業規則も整えられるでしょう。”

東京都では、すでに「東京テレワーク推進センター」を開設しています。また、今後増えることが予想されるのが、鉄道系企業によるテレワーク専用のオフィスビジネスを強化することも確実です。

電鉄企業にとって、テレワークやリモートワークが浸透して通勤客が減ることで、経営環境に多大な影響があります。

できるだけ駅や駅の付帯施設や設備の利用をうながし、新しい収益源として確保する必要性に迫られているからです。

JR東日本は「駅ナカ」で公衆電話ボックスのようなオフィスサービス「ステーションワーク」、小田急では同沿線の駅ナカ・駅チカにリモートワーク・サービス「ZXY(ジザイ)」を提供、東急不動産は都心・郊外・地方でワークスペースを提供する「クイック」など、これまで毎日通勤電車で通っていた人たちが、コロナ禍で会社に通わなくなり、自宅・自宅近く、出先・移動先、地方での仕事の増加、出張の減少など、ワークスタイルの多様化は好むか否かにかかわらず進展に対応したサービス強化に乗り出してきました。

また、紳士服大手の「青山商事」は、千代田区のオフィス街にある店舗の売り場の半分をシェアオフィス「BeSmart(ビー・スマート)」に改装、飲食店やカラオケボックスなどをワークスペースとして利用できる「サブスぺ」など、次々とテレワークサービスに新規事業として参入してきています。

そのほかにも、コピー機大手フジゼロックスが個室型ワークスペース「Coco Desk」のサービスをはじめていますし、防音型コミュニケーションブース「テレキューブ」のようなベンチャー企業もあります。

今後、オフィス空間として考えられるのはワンルームマンションのオフィス利用、ビジネスホテルのオフィス空間化なども想定されます。

そうしたなかで、私がいまもっとも注目しているのはサテライトオフィスです。とくに通勤エリアの首都圏では今後さらに増加するでしょう。例えば、都心のターミナル駅(東京、新宿、渋谷など)から各県(埼玉、神奈川、千葉など)に向かって電車で30分ほどの駅周辺にいくつかできるでしょう。大企業であれば、セキュリティの問題もあり自前でビル一棟ごとサテライトオフィス化するでしょう。

住環境も大きく変化します。自宅のオフィス化はマンションや戸建ての住空間も、リフォームなども含めてオフィス化需要が高まります。なかでも住宅エリアのマンションでは、1階をオフィス空間化してそこに居住している人たちが利用できるような新しいコワーキングスペースが登場するでしょう。需要の増大が高まるでしょう。自宅で仕事環境を整える、あるいはそうした空間の確保が難しい人たちはかなりいるだろうと思います。

テレワークと一言にいっても、在宅、移動先などでのシェアオフィスやコワーキングスペースの活用、ワーケーションなどさまざまです。それはつまり「いまいる場所がオフィス」となることで、オフィスワーカー(ホワイトカラー)の働き方が激変します。

それに加え、ダブルワーク(複業・副業)当たり前となります。地域コミュニティへの影響、好きな地域で暮らしながら仕事、家族や友人たちとのコミュニケーションなど、さらに大きな変化が私たちを待ち構えています。

21世紀的ライフスタイルのデフォルトーー「ニューノーマル」が「ノーマル」になる

リビングでノートPCを見ながら寛ぐ親子

連日、新型コロナウイルスの報道に接しない日はありません。米国で9.11が起きた後、米国人のライフスタイルに変化が起こったという記事をどこかで読みました。今回の新型コロナ禍では、そうした価値観のシフトが起きています。それは、世界的な機関による調査結果にも表れています。

私たちは、現在の新型コロナウイルス感染に対する人々の不安や漠然とした恐怖感の光景をいたるところで見かけます。

公共交通機関では、駅の職員がエレベーターから改札口周辺にあるコインロッカー、飲料の自動販売機、公衆電話などを消毒している光景を目にします。タクシーも、「感染防止対策車」と書いている車を街中で見かけます。

スーパーやコンビニなどの店の入り口のどこでも手指の消毒液が設置してあり、レジカウンターはビニールカーテンやアクリル板などで隔てられ、レジ係はマスクにフェイスガード、手には手袋までもしています。そのそばでレジカゴを消毒している人もいます。飲食店では、カウンターやテーブルなどを食べ終わる客席やテーブルを消毒しています。

そのほか、入店時にマスク着用や手指の消毒だけではなく、店員が入店時に検温を実施しているところもあります。店舗や場所によっては、マスク未着用の人の入店を断っています。

ワクチン接種が日常的になっても、安心はできません。なぜなら、ワクチンには有効期間があります。インフルエンザのように冬の空気の乾燥した時期に感染するのであれば、ワクチンはその期間だけ効果があればよいのですが、新型コロナウイルスは年間を通じて感染しますし重篤化しやすく致死率も高いのです。

つまり、いつどこでどのように感染するかもわからず、感染すれば隔離生活となり、急変による重篤化や致死率が高い感染症で変異ウイルスによる再感染の可能性も高いのです。誰でもかかりたくはないと判断し、これから新型コロナウイルスと共存しながらの生活を否応なしにしなくてはなりません。

自粛生活がつづくなかで、「コロナ疲れ」あるいは「自粛疲れ」とも言われている昨今です。この新型コロナ感染症の世界的な拡大は、社会ーーそれは企業・組織、教育からコミュニティー、家族そして個人までーー、もっといえば私たち人類全体への大きな試練です。

私たちの「衣・食・住」が「ニューノーマル」に基づく生活が定着したとき、それが「ノーマル」なライフスタイルになります。人は環境に適応し、そして慣れるからです。

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梅下 武彦
コミュニケーションアーキテクト(Marketing Special Agent)兼ブロガー。マーケティングコミュニケーション領域のアドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。広告代理店の“傭兵マーケッター”として、さまざまなマーケティングコミュニケーション業務を手がける。21世紀、検索エンジン、電子書籍、3D仮想世界など、ベンチャーやスタートアップのマーケティング責任者を歴任。特に、BtoCビジネスの企画業務全般(事業開発、マーケティング、広告・宣伝、広報、プロモーション等)に携わる。この間、02年ブログ、004年のSNS、05年のWeb2.0、06年の3D仮想空間など、ネットビジネス大きな変化の中で、常にさまざまなベンチャー企業のマーケティングコミュニケーションに携わってきた。