1980年代から2000年頃までに生まれたミレニアル世代は、IT革命の到来を目の当たりにし、適応してきたデジタルパイオニアの世代です。それに続くZ世代は、1990年代後半から2000年代初頭に生まれ、物心ついた頃には既に世の中がデジタル化していたデジタルネイティブの世代です。
インターネットに馴染みのある若者世代が、今後ますます世の中の主役に躍り出し、長期に渡り消費行動を行っていきます。旧世代とは異なる特徴があるこれらの若者世代を知ることは、この先の世の中を予測しながら深く理解することにもつながります。
これらの若者たちは、SNSも積極的に活用していることがよく知られています。様々なソーシャルメディアが興隆しており、そのプラットフォーム上で影響力のある人物を軸にした新たな宣伝手法「インフルエンサーマーケティング」が生まれました。
米国ワシントンDCのオンライン調査会社『Morning Consult』は、13〜38歳の2,000人を超えるアンケートに基づいてインフルエンサーエンゲージメントの規模と性質を調査した「インフルエンサーレポート」を発行しました。
アメリカの若者は、インフルエンサーをどのプラットフォームでフォローしているのでしょうか。フォローしたい人物像とは。また一体どういった理由でフォローし、インフルエンサーにどれだけ信頼を寄せているのでしょうか。「インフルエンサーレポート」は、これらの質問に答えています。
「インフルエンサーレポート」の大要:
有名人を上回るユーチューバー
Z世代の場合、YouTubeのトップインフルエンサーは芸能人や有名人と同じくらい人気があります。Z世代の男性の間では、ゲームのユーチューバーPewDiePieは、NBAのスター選手レブロン・ジェームズと同じくらい有名で、人気では上回っています。
お気に入りブランドに関する自発的な投稿
ある特定のコミュニティやジャンルで強い影響力を持つインフルエンサー『マイクロインフルエンサー』の潜在的な市場も巨大です。アメリカの若者のあらゆる層がスポンサードされたコンテンツを投稿することにためらいがなく、大多数が自分のお気に入りのブランドについて自発的に投稿する傾向があります。
有力なSNSは?
TikTokは、13〜16歳の間でFacebookよりも人気があります。このビデオアプリはZ世代の上の年齢層にも浸透していますが、InstagramとYouTubeが最も有力なSNS(ソーシャルプラットフォーム)の地位にあります。
若いアメリカ人は、ソーシャルメディアのインフルエンサーに注目しています。ソーシャルメディアは、ますます消費者の意思決定の中心的な要因になってきています。
ミレニアル世代とZ世代がインフルエンサーに求めているものとは?
ミレニアル世代とZ世代はインフルエンサーに何を求めているのでしょうか。
アメリカの若者、ミレニアル世代およびZ世代の10人に7人が、SNS上のインフルエンサーをフォローしていると報告されています。米国の『Morning Consult』社は、13〜38歳の2,000人以上を対象にしたアンケート調査で、回答者のうち最も若い層がより多くのインフルエンサーをフォローしている傾向があることを発見しました。
では、ミレニアル世代およびZ世代は、インフルエンサーをフォローするかを決定する際に、どのようなことを考慮しているのでしょうか。
理由の圧倒的多数(88%)は『本物と思える人』かどうかです。自分と共通の興味を純粋に追求しているインフルエンサーを探しています。フォローするに当たり88%の内58%の人は特にこれを重要視し、30%の人もやや重要であると考えています。
また、85%の人は、回答者が関心のあることについて知識のあるインフルエンサーを選んでおり、その内48%はこれを非常に重要だとしています。
フォローするかどうかを決定する際に、インフルエンサーのライフスタイルは、あまり重要ではありません。インフルエンサーが自分よりも刺激的または興味深いライフスタイルかという点が重要だと答えているのは49%に留まっています。インフルエンサーのライフスタイルが自分のライフスタイルに近いことが重要であると答えているのは48%で半数にも満たないものです。
『演じる』インフルエンサーは嫌われる?
インフルエンサーをフォローする上で、ライフスタイルは決定的な要因ではありませんが、別の調査(消費者がインフルエンサーをフォロー解除する理由)では、インフルエンサー自身またはライフスタイルを著しく偽っていると、フォロワー10人中7人がフォローを止めることが分かっています。
インフルエンサーの知識は、ミレニアル世代およびZ世代がフォローする上で、重要な要因です。インフルエンサーが提供する知識は、影響力が大きく、ミレニアル世代の57%とZ世代の55%は、インフルエンサーが推奨する商品やサービスを購入する可能性を高めるとしています。
それと比較して、フォロワーに刺激を与えるタイプの人物である場合、インフルエンサーが推奨する商品・サービスを購入する可能性が高まるのはミレニアル世代が38%、Z世代は41%です。
インフルエンサーを信頼しているが、友人や家族ほどではない
88%の人が、SNSを通じて購入したいと思う商品を見つけたことがあると答えています。ミレニアル世代およびZ世代の両方にとって、InstagramとYouTubeが最も人気のソーシャルプラットフォームですが、この調査の注目すべき結果の一つは、過去1年間、米国の大人の間で急成長が見られたTikTokを、最も年齢が低い層の回答者(13〜16歳)がFacebookやTwitterと同様に使用している可能性があることです。
ただし現在、アメリカ政府がTikTokの親会社を調査しているため、広告主の間でブランド保護に対する懸念が高まっていることにも注意する必要があります。
これは、SNSのインフルエンサーに対する信頼問題に発展します。 5人に3人の回答者が、SNSのインフルエンサーが、ブランドや商品を宣伝・推奨している内容について、大きな信頼(10%)または一定の信頼(47%)を寄せています。その信頼度は、SNSでのショッピングの頻度が多い人ほど高く、25%がインフルエンサーに大きな信頼を寄せており、56%が一定の信頼を寄せています。
しかし調査では、インフルエンサーのブランドや商品についての推奨は、必ずしも最も信頼する情報源ではないことも分かっています。ブランドや商品に関する推奨について、大多数の人(ミレニアル世代の84%とZ世代の82%)が友人や家族を信頼していると答えている一方で、ミレニアル世代の50%、Z世代の52%がSNSでフォローするインフルエンサーを信頼していると答えています。
調査結果を踏まえて
このミレニアル世代とZ世代のSNSに関するアンケート調査の結果は、アメリカの若者の心を掴むために、インフルエンサーがどれほど有効かを示しています。そして、プロモーションにおいては、映画やドラマの有名人だけではなく、インフルエンサーの起用も考えられるかも知れません。ミレニアル世代とZ世代に向けたプロモーションを検討する上で、このレポートは、非常に有益なものです。消費の数年先を行くアメリカの事情を把握することで、やがてやってくる日本でのインフルエンサーマーケティングにも、大いに参考になるでしょう。
参照:
MarketingCharts
https://www.marketingcharts.com/cross-media-and-traditional/sponsorships-traditional-and-cross-channel-111082