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【イベントレポート】「読書会のすすめ」ーー第3回東京読書サミットに参加して

4年ぶりのことでした、読書人の集まるイベントに参加したのは。

映画を見に行く、コンサート(ライブ)に出かける、スポーツ観戦や仲間たちとチームでフィールドを駆けめぐる。その他にも友人や知人たちと一緒に楽しむ時間、趣味は数多くあります。

それらに比べて読書というのは、ほとんどの人たちにとって一人静かに本と向き合うことが多いでしょう。私自身、学生時代からほとんど一人で読書に没頭してきましたし、この書評を書くときもひとりで本と向き合います。

先日、「第3回東京読書サミット」が開催され途中からの参加となりましたが、とても楽しく有意義で充実した時をすごすことがでました。

今ブログでは、参加したことで考え気づいたことなど、私自身の体験もふまえてその意義や価値について実感していることを述べ、少しでもみなさんのお役に立つことができれば嬉しく思います。

読書(本)離れと「読書会」人気の3つの理由

読書しているビジネスマン

一般的に、日本人は読書好きといわれてきました。むかしから新聞や雑誌の各メディアの書評欄は人気がありましたし、今日ではそうした各メディアの書評をまとめて紹介しているBook Bangのような便利なウェブサイトもあります。書店では紀伊國屋書店の「書評空間」が代表格ですし、書評専門紙として『週刊読書人』もよく知られています。

ここ数年は、出版不況の要因のひとつとして読書離れが喧伝されている状況ですが、それとは反比例するかのように読書愛好家や本好きが集う様々なイベント(読書会など)が活況を呈しています。

本ブログを読んでいるみなさんのなかにも、すでにそうしたイベントに参加している人もかなりいるでしょうし、すでに読書会を運営している人もいるものと推察します。私の友人や知人たちにも、読書会を主催している人がかなりいます。

ビジネスパーソンが集う読書会のことは知ってはいましたが、参加する機会がありませんでした。今日では、こうして継続的に書評を書いていますが、遅まきながら2014年になって友人からの誘いで読書会に参加したことがきっかけとなりました。

その読書会は私がこれまでに参加した唯一の会で、現在では終了している読書人倶楽部「10 over 9 reading club」です。この読書倶楽部は、『広告批評』の元編集長だった河尻さんが中心となって始めたもので、他の読書会にはないユニークで独特の運営手法で私も毎回参加していました。

これほどまでに読書会が人気な理由は、3つの理由があるだろうと個人的に考えています。

第1に、ソーシャルメディアの日常化です。本格的な書評サイト(HONZなど)、書評ブログ(ALL REVIEWSなど)はもちろんのこと、ソーシャルリーディング(本が好き読書メーターブクログなど)から、おもにビジネス書の要約サイト(bookvinegarなど)にいたるまで、書評についてのコンテンツは実に豊富で多彩です。

さらに、読書好きな人たちが読了後の感想や気づきなどを情報発信し、SNSなどでもそうした著書を気軽に取り上げてシェアしています。フェイスブックで読書会を検索すると、数々の集まりがヒットします。

第2に、テクノロジーがもたらすビジネスや生活環境の激変で、価値観や考え方、ライフスタイルなどが大きく転換したことです。テクノロジーの進展、ビジネスや生活環境の変化が速く新しい情報や知識を求め、それらを理解するために読書をする人が増えているのではないでしょうか。

第3に、上記とも関連することですが、ここ数年はビジネス雑誌などで教養特集が多く散見されます。真に自己を啓発するための読書(それは自己啓発本を読むことではなく)の必要性に迫られている、あるいは自覚させられたということもあるように感じます。

「東京読書サミット」とは

ミーティング

このサミットは、「読書するエンジニアの会」を主宰するベンチャー企業のCEOの白石さんが中心となって2008年に開始されました。その趣旨は、「どうしてもエンジニアリングに偏りがちな、自分たち(開発者)の読書習慣や関心、視野をもっと広げたい」という思いからなのですが、月に一回の開催ペースで継続して100回以上、10年の歴史を誇る読書会です。

会の名称から受ける印象ですとIT系エンジニアたちだけが参加しているイメージなのですが、実は多種多様な業種や職種の人たちが参加する読書人の集まりです。また、毎回の読書会テーマの決め方もユニークな独自性を放っています。

私自身、「読書するエンジニアの会」月例会には恥ずかしながら参加したことがなく、このサミットにも初参加でした。

今回で3回目を数える「東京読書サミット」は、この会100回記念「読書好きの祭典」として2016年に初めて開催されました。第2回目は池袋ジュンク堂書店20周年企画とコラボ、3回目の今年はスマートニュース社のイベント会場を借りての開催です。

今回のテーマは「私の大事な一冊」で、トークライブ+参加型ワークショップ+懇親会という形式で、50名ほどの参加者でした。

開始冒頭では、下記の3名のゲストによる読書トークがあり、是非とも拝聴したかったのですが、1時間遅れでの参加となった私はこのハイライトを聞き逃したことが悔やまれます。

1.藤村厚夫さん(スマートニュース株式会社フェロー)

2.紫原明子さん(エッセイスト)

3.篠田真貴子さん(ほぼ日 CFO)

ワークショップでは、この日の参加者自身の「私の大事な一冊」(イチ推しの本)を持ち寄り、5人ごとのチームに分かれ、各テーブルにてビブリオバトルを行いました。そのほか、お薦め本を5冊まで(イチ推し本を含めて計6冊)持参することが推奨されていました。

まず各チーム内でひとり1冊イチ推しの本によるビブリオバトルを行い(予選)、各チーム内投票でチーム代表者を選出します。次に各チーム代表同士によるビブリオバトルを参加者全員に対して行い(本選)、全員の投票で優勝者を選出します。

参加者のなかには読書会はしごしている人、1冊の本との出会いがきっかけとなってサイエンスライターなった人など、本との出会いを楽しんでいる人たちばかりなのが印象的です。

この日がはじめての参加ということもあり、私は下記の本を持参しました。いずれも私自信の思考形成に大きな影響を与えた本ばかりですが、思想や文芸批評関連の著書が多いのは現在の読書生活の原点ともなっているからです。

(イチ推し本)『自立の思想的拠点』(吉本隆明/徳間書店)

1.『孤立無援の思想』(高橋和巳/河出書房新社)

2.『日本を思ふ』(福田恆存/文藝春秋社)

3.『一草一花』(川端康成/毎日新聞社)

4.『ツァラトゥストラ』(ニーチェ:手塚富雄訳/中公文庫)

5.『独自性の発見』(ジャック・トラウト/海と月社)

上記のなかで、ビジネスに関連するのはジャック・トラウト著『独自性の発見』だけです。同書は、私のマーケティング思考を語る上では欠かせない本で、それについては昨年本ブログにも書きました。

ところで、上記で紹介した読書倶楽部「10 over 9 reading club」でも、これと同じように年1回の特別イベントとして「Creative Maisonー表現×技術×教養を暮らしと仕事にー」を開催しました。そのときは、新宿御苑そばの閑静な住宅街にある昭和時代の邸宅(一軒家)を貸し切って行われ、そのときは100名ほどの参加者で賑わいました。

読書会における「5つのメリット」

虫眼鏡で遊ぶ女の子

まだ読書会に参加したことがない人たちは、これからどのような会を選んで参加すべきなのか、悩んだり迷ったりしている人も多いかもしれません。難しいことはありません。検索エンジンやSNSなどで検索して自分が興味のある会に参加する。ただそれだけです。またひとりでは心細いようであれば、読書会に参加している友人と一緒に参加するのがよいでしょう。

さて、ここでは私が感じている読書会「5つのメリット」について以下に述べます。

(1)学びや気づき

課題図書がとくにない読書会では、多様な本が紹介されそこではじめて知る著書や著者もあります。新しい知識だけではなく、古典や読んでおくべき本などについての情報を得ることもでき、本だけではなく人からも学びがあります。ひとは、漫画やアニメからでも学びや気づきを得るものです。

(2)多様な視点

アマゾンのレビューでも、同じ本を読んでも人によって読み方や受け取り方が違います。その多くは、その人の価値観にもとづいています。ひとりではわからない、あるいは思ってもみなかった視点での読み方をする人との会話は刺激的です。

(3)本との出会い

これは私見なのですが、ある専門分野(マーケティング、経営戦略、テクノロジーなど)にフォーカスするより、できれば様々なジャンルの本が交差する会が理想的です。

専門的だと多様性、意外性が乏しく、思わぬ発見や気づきやひらめきなどが得にくいからです。多種多様な本とのセレンディピティこそ頭脳や感性を刺激し、新たな知的好奇心を刺激し、知識吸収を促し、教養を深めることに役立つと考えているからです。

(4)人との出会い

開放感、自由さ、同じ読書好き、同じ本でも多様な読み方や考え方に触れる機会は貴重な時間で、そうしたことが新たな知見をもたらします。

老若男女、多彩な職種や年齢層の人たちが参加しています。しかも、お互いに読書好きという共通の趣味もあり、話題にはことかきませんし打ち解けて会話が弾みます。

(5)コミュニケーション力の向上

ビブリオバトルの効用は大切です。ビブリオバトルは、本の内容を理解していることが前提です。著者の執筆動機や意図、全体概要または論旨、著書のもっとも述べたいこと(主張や理論など)、読んで考えて気づいたこと、読後の感想や印象など、それらについて数分(5分程度)でしかも言葉と表情や身振りだけで相手に伝えなければなりません。プレゼンや人に伝えるスキルが鍛えられます。

 

さて、イベント終了後、参加者たちが持ち寄ったイチ推し本が並べられ、それらを見て回る楽しさに加え、本をテーマにリニューアルしたスマートニュース社のオフィスを内覧できたことも貴重で充実した時間でした。各会議室には、下記のようなユニークな人名が付けられ、それにもとづいて本棚も構成されています。

・Holiday / ホリデイ

 ・McLuhan / マクルーハン

 ・Hamada / 濱田庄司*

 ・Tange / 丹下健三

 ・Bowie / ボウイ

 ・Le Guin / ル=グウィン

 ・Humboldt / フンボルト*

 ・Tezuka / 手塚治虫 (1928-1989)

 ・Dijkstra / ダイクストラ

 ・Shibusawa / 渋沢栄一

 ・Donald Davidson / デイヴィッドソン

 ・Iwata / 岩田聡

 ・Nightingale / ナイチンゲール

 ・Gygax / ガイギャックス

 ・Daisetsu / 鈴木大拙

 ・Ishii / 石井桃子

 

今回のサミット参加で感じたことは、米リンカーン大統領に倣えば「読書人の、読書人による、読書人のためのサミット」ということです。

みなさんが本ブログを読んでもし関心を持たれたのなら、このうえもなく嬉しいことですし、機会があれば読書会に参加することまたはご自身で運営することを検討してみてはいかがでしょうか。

ひとりで静かな「読書のすすめ」ではなく、さまざまな人たちと楽しむ「読書会のすすめ」を述べる所以なのです。

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梅下 武彦
コミュニケーションアーキテクト(Marketing Special Agent)兼ブロガー。マーケティングコミュニケーション領域のアドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。広告代理店の“傭兵マーケッター”として、さまざまなマーケティングコミュニケーション業務を手がける。21世紀、検索エンジン、電子書籍、3D仮想世界など、ベンチャーやスタートアップのマーケティング責任者を歴任。特に、BtoCビジネスの企画業務全般(事業開発、マーケティング、広告・宣伝、広報、プロモーション等)に携わる。この間、02年ブログ、004年のSNS、05年のWeb2.0、06年の3D仮想空間など、ネットビジネス大きな変化の中で、常にさまざまなベンチャー企業のマーケティングコミュニケーションに携わってきた。