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21世紀的「一身二生」時代のキャリア論—— (後編)仕事後こそ有意義な過ごし方を

前編では、クランボルツ教授の「計画された偶発性理論」というキャリアの考え方をきっかけに、希望する業界や職種に足をかけてとにかくキャリアをスタートすること、人との出会い(縁)を大切にし、さらに主体的に学ぶ姿勢が重要なことなどについてお話しをしました。

この後編では、変容し続ける不確実なこの時代にどのようにするべきかについて、特に20代の未来ある人たちの参考になればと思い、私の経験から学んだキャリア論を具体的に述べます
もっとも、「論」として語れるものが私にあるか否か、はたして疑問なのですが。

これから述べることは、私自身の経験に基づくものですので、これが正しいとかこの通りにすべきだということを伝えたいわけではありません。ただし、皆さまにヒントや参考になれば嬉しく思います。

仕事後こそ有意義な過ごし方を

伸びをするビジネスマン

業務では、知るべきことや覚えなければならない日々です。

仕事が終わったあと、社内の人たちとの飲みニケーションも大切なのですが、退社後の時間をどのような過ごし方をするのか、それこそが将来の仕事でのキャリア形成に大きく影響をします。
それには、「学ぶ」ことが欠かせません。仕事に関係あるか否かにかかわらず、そうした姿勢を持ち続けることが重要です。

例えば、業務に関わる専門知識を身につけるため、あるいはそれ以外のスキル(英会話など)を習得するためにそうした学校や講座を受講するのもよいし、趣味であれば習い事をするということもあります。

PR業務であれば、「PRプランナー資格認定」取得を目標にするあるいはより広い視野で考えれば、マーケティングコミュニケーションに関わる幅広い知識を身につけるのもとても有益です。
また、コミュニケーション領域で考えれば、社会心理学や最近話題の行動経済学などを学んでおくことは必ず仕事でも役立ちます。

また、時間的に余裕がない人は、帰宅後に一定時間を読書で学ぶこと(独学)をまずはおすすめします。読書の時間は、集中力を鍛えるだけではなく、なんといっても思考力や洞察する目を養います。

さて、社外の過ごし方で一番気軽で愉しいのが、社外の人たちとのコミュニケーションを楽しむイベントに参加することです。

これは、ビジネスパーソンが集まる各種の講演会、セミナーやトークイベントで、最近ではMeetupと呼ばれるものです。こうした集まりはむかしからいわゆる勉強会とも呼ばれるもので、基本的には誰でも気軽に参加できますし、とくに勉強というような堅苦しい心構えがいらず、また様々な業種や業界の人たちとネットワークが広がることも人気です。

ちなみに、こうした集まりのためのウェブサイトにMeetup.comがあります。このサイトは、私の友人が尽力して日本語版の開設にこぎ着けました。
いつの時代でも社外の勉強会はありましたが、今日ではSNSなどソーシャルメディアの恩恵で、情報の共有、意見交換などの交流も気軽に、便利にできるようになりました。

そうした集まりをどのように選んで参加すべきか「3つポイント」を、以下にお伝えします。

(ポイント1)集まりを選ぶ「2つの視点」とは

パーティー歓談

今日では、連日連夜、どこかでミートアップが開催されています。そうした集まりは2つの視点で選びましょう

1つは仕事関係の集まりです。
こうした集まりは、おおむね毎回異なるゲストスピーカーがいるか数人の登壇者を招いてのトークプログラムです。
その後、参加者同士による懇親会(交流会)というのが一般的なパターンです。スピーカーからの最新情報や知見を得ることができ、さらには同じ仕事をしている人たちとコミュニケーションをとれることがメリットです。

2つめは趣味や個人的な関心分野の集まりです。
いわゆる同好の士というものです。これは仕事関係よりも多種多様にありますし、なによりも愉しいものです。
こうした集まりは、趣味によっては幅広い年齢層の人たちが参加していますし、普段ではお目にかかることもないような企業や業界の人たちと縁ができるのも、実はこうした集まりです。

そうはいっても、最初はどういう集まりに参加すべきなのか、迷ったり悩んだりする人も多いでしょう。それは、友人や会社の同僚などに誘われてはじめる人がほとんどです。
そうした集まりは、その人にとってどれが最適なのか、それは実際に参加してみないとわからないものです。

とにかく、参加前からあれこれ悩むより行動ありきです。そうした集まりにいくつか参加していると、自ずとその人にとって最適な集まりがなんとなく決まります
これは理屈ではなく、皮膚感覚でわかるのです。主催者、テーマ、運営方法、集まっている人たちなど、その人にとっての判断基準は様々です。

その人がもしなんとなく自分でしっくりとこない、違和感を感じる(便利な日本語)ようであれば、無理して参加を続ける必要はありません。義務感や義理での参加は自分のためとはなりません

さて、ここで注意すべきなのは、懇親会では群れないことです。
パーティーなどでも、日本人はどうしても顔なじみ同士などの仲間内だけでコミュニケーションしてしまいがちです。
それでは、せっかくこうした場に参加しているのにもったいないことです。

(ポイント2)たとえ一人だけでも参加すること

飛び越える人

いくつかの集まりに参加して様々な人たちと縁ができると、そうした縁を得た人たちから別の集まりを教えてもらったり誘いを受けるようになります。
さらに、今日では検索エンジン、ソーシャルメディアがあるので、自分で積極的に見つけ出して参加するということもできます。

誘いをくれた人が当日いきなり参加できなくなったり、自分で探した誰も知り合いがいない集まりに初めて参加するのは不安ですし勇気もいることです。
しかし、誰も知り合いがいなかったとしても思い切って参加することです。実際に参加してみると、一人での参加や初めてという人は意外と多いものです。

初めて会った人たちに話しかけるのが苦手という人もいるでしょうが、人に話しかけるタイミングやきっかけはどこにでもあります。
例えば「初めての参加ですか?」、「今日の話では何が印象的でしたか?」あるいはもっと一般的に「よろしければ、名刺交換をお願いできますか」でもよいでしょう。
名刺交換したあとは、名刺の業務内容や仕事の話しなど会話のネタはいくらでもあるでしょう。

とにかく、社外の集まりにはベンチャー企業と一緒で、トライ&エラーの精神で臨みましょう。こうして自分で積極的に参加しているうちに、その人にとって“軸となるような会”にきっと出会うことができます。

(ポイント3)名刺交換に拘泥しない

名刺交換する人々

セミナーや講演のあと、懇親会になると名刺交換に精を出す人をどこでも見かけます。私はそうしたことは避けるべきだと思っています。

仮に80人ほどの参加者がいたとして、その場で3人としか名刺交換しなかったとしても、じっくりと話しができればそれこそが大切な縁なのです。
数百人規模での集まりに参加することもあるでしょう。この規模の集まりでは、とくに名刺交換する枚数が増えると思います。それでも、名刺の枚数にこだわることなく、同様の姿勢で臨むべきです。

実は、私は社交的だとは自分では思っていません。様々な集まりに参加し、私の場合その時々ですが、こうしたイベントでの名刺交換はたいてい5人ほどで多くても10人ほどです。それでも年間200〜300人ほどの人たちと名刺交換します。
その後、ご縁のある(つながりが継続する)人たちは、そのうちの15〜20人ほどです。つまり、名刺交換した人たちの5%にも満たないのです。
それでも良いと思いますし、それが私のポリシーです。

また、名刺交換するときに気をつけてほしいことがあります。それは長話をしないことです。
以前、懇親会のない集まりがありありました。そうした場合、ゲストスピーカーと名刺交換の時間を用意していることがあり行列ができます。こうした状況で、名刺交換して長々と話しを続けてその人と時間を独占する人がいます。
こういう行為は慎むべきで、ほかに並んでいる人たちにとっても迷惑ですし、ゲストにとっても歓迎されざる人だろうということは覚えていてください。

こうしたゲストと名刺交換する機会があったら、簡単な挨拶だけで済ませて追って礼状、質問などをメールして、むしろコミュニケーションのチャンスを広げることが賢明です。

故スティーブ・ジョブズが、2005年スタンフォード大学卒業式のスピーチで知られている「CONNECTING DOTS」を語りましたが、自分で学び、経験で得たことはいつどこか別の仕事や職種でもきっと活かせるチャンスがありますし、人との縁はどこで繋がるかは本当にわからないものです。

模様

さて、参考までに、私にとっての軸となった集まりはどういう縁やきっかけだったのか話しをして、皆さまの参考としていただければと思います。いま思い返せば、それはまさに「点と点が繋がる」という出来事で、会ったときにはその後の展開はもちろん“計画”していませんでした。

仕事関連ではベンチャー(ICT)系、趣味では読書人の集まりに定期的に参加していますが、それはすべてまったく偶然から縁を得たことがきっかけです。
しかも、いずれもほとんど一人での参加なので、知り合いがいないことは最初から覚悟していました。

ベンチャー系ミートアップの主催者とは、初めて参加したなにかのパーティー(だったと記憶)で飲み物と食べ物を持って座ったテーブルでたまたま同席したことがきっかけです。その人は独立系VCでクローズドなメンバーシップ性を採用していたこともあり、そのネットワークから毎回ほかではなかなか知り合えない人との縁や話しが貴重です。

一方、趣味での読書人の集まりは知人が主催した集まりでゲストスピーカーだったことが縁となりました。その後にその人が主催する読書倶楽部(残念ながら、現在休止中)を立ち上げ、数ある読書会の中では独特の運営方式とゲストが刺激的で毎回楽しみにしていました。
どちらも、縁を得てから、後日にそれら主催者から会へのお誘いをいただきました。そこから、さらに新たな縁を得ることもできたのです。

最後に、米アップル社元デベロッパー・リレーションズの副社長ハイディ・ロイゼン。2014年、その彼女のスタンフォード大学でのスピーチ「米Appleの元副社長が説く、人生とキャリアを充実させる8カ条」をご紹介します。

(1)困難なことをしていないとしたら、あなたは時間を浪費している
(2)あなたの倫理感が人生の明暗を決める
(3)直感は大抵正しい
(4)チーム選びが一番重要
(5)交渉とは、お互いのニーズの最適な交差点を見つけること
(6)人生は、本当に本当にきまぐれ
(7)時間の使い方をよく考える
(8)「20 – 40 – 60ルール」

上記の8カ条のうち、私個人は(1)〜(4)、それになんといっても(6)です。これは、本当に本当に実感します。
上記の8項目についての詳細は、リンク先にてご確認いただければ嬉しく思います。

それでは皆さん、アフターオフィスの充実した時間をお過ごしください!

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梅下 武彦
コミュニケーションアーキテクト(Marketing Special Agent)兼ブロガー。マーケティングコミュニケーション領域のアドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。広告代理店の“傭兵マーケッター”として、さまざまなマーケティングコミュニケーション業務を手がける。21世紀、検索エンジン、電子書籍、3D仮想世界など、ベンチャーやスタートアップのマーケティング責任者を歴任。特に、BtoCビジネスの企画業務全般(事業開発、マーケティング、広告・宣伝、広報、プロモーション等)に携わる。この間、02年ブログ、004年のSNS、05年のWeb2.0、06年の3D仮想空間など、ネットビジネス大きな変化の中で、常にさまざまなベンチャー企業のマーケティングコミュニケーションに携わってきた。