プレゼントパブリシティ(プレパブ)は、無料で商品を提供するだけでメディア掲載される手軽なPR手法と思われがちですが、実際には広報戦略の一環として慎重に設計する必要があります。適切なパブリシティ戦略を立てなければ、ターゲット層に響かず、ブランドの価値を下げてしまうリスクもあるからです。
逆に、プレパブを広報活動の一部として適切なメディア選定を行い、ターゲットに合ったプレゼント企画を設計することで、ブランドの認知度向上につなげることができます。
この記事では、プレパブの基本から、プレゼントを活用した効果的なパブリシティの戦略まで詳しく解説します。
プレパブとは?

プレパブ(プレゼントパブリシティ)は、広告費をかけずにメディアに取り上げてもらうPR手法の一つで、読者プレゼントを通じて商品やブランドの認知を高めるノンペイドパブリシティの一形態です。
雑誌やWebメディア、新聞などの媒体に商品を提供し、そのプレゼント企画として掲載されることで、ターゲット層に自然な形でアプローチできます。
一般的な広告と異なり、メディア側の編集意図と読者の関心に基づいて紹介されるため、信頼性のある情報として受け取られやすいのが特徴です。また、消費者に対して「無料で試せる」というインセンティブを提供することで、興味を持ってもらえることが大きな特徴です。
プレパブの3つのメリット

プレパブには広告費を抑えることができるなど、様々な利点があります。次に、プレパブの主な3つのメリットについて詳しく解説します。
①低コストでメディア掲載ができる
プレパブは、広告費をかけずにメディア掲載の機会を得られるため、コストパフォーマンスに優れています。
通常の広告出稿には数十万~数百万円の費用がかかることがありますが、プレパブでは商品の提供と発送手続きだけで済み、費用負担が大幅に軽減されます。
また、メディア側も読者プレゼントを活用することで、読者の関心を引き、エンゲージメントを高めるため、双方にメリットがあります。特に、PR予算が限られている中小企業や新規ブランドにとっては、低コストで効果的なマーケティング施策として活用できます。
②エンゲージメント向上を狙える
読者がプレゼント応募のプロセスを通じてブランドと接点を持つことで、エンゲージメントが高まります。
特に、SNSやWebメディアと連動したプレゼント企画を行うことで、参加者が自然にシェアしたり、口コミを広げたりする効果も期待できます。
また、応募時にアンケートを実施することで、消費者の嗜好や購買意欲に関する貴重なデータを収集することも可能です。この情報をもとに、よりターゲットに適したマーケティング施策を展開できます。
③メディア露出の増加に繋げられる
プレパブを活用することで、通常では広告枠を購入しなければ掲載できないようなメディアに取り上げられるチャンスが生まれます。
特に、読者層と商品との相性が良いメディアを選定すれば、ターゲット層への認知度を効率的に高めることができます。
さらに、複数のメディアでプレパブを展開することで、ブランドの認知拡大を加速させることが可能です。一度成功すれば、他のメディアからも掲載のオファーが来ることがあり、長期的なPR戦略としても有効です。
このようにプレパブは、広告予算を抑えながら、ターゲット層へのリーチとブランドの信頼性を向上させる効果的なPR手法です。ただし、成功させるためには、適切なメディア選定と計画的な戦略が必要です。次のセクションでは、プレパブに適した商品や導入のポイントについて解説していきます。
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プレパブに向いている商品

プレパブでメディアに掲載されたとしても、読者層とマッチしない商品や、応募意欲を喚起しづらい商品では効果が半減します。プレパブを活用する際には、ターゲットに響く商品選びが鍵となります。
次に、プレパブに向いている商品を紹介します。
メディアの読者層が欲しいと思える商品
プレパブでは、読者が「欲しい」と思う商品を提供することが重要です。メディアごとに読者層の属性が異なるため、掲載する媒体のターゲットに合った商品を選定しなければなりません。
例えば、20代女性向けのファッション誌に掲載するなら韓国コスメやトレンドのスキンケア商品が効果的です。一方、ビジネス系メディアなら、ノートPCのアクセサリーやオフィス用品が適しているでしょう。
プレパブに適した商品の例
• 美容・コスメ(スキンケア、メイクアップ)
• 健康食品・サプリメント
• ファッションアイテム(アクセサリー、バッグ、シューズ)
• ガジェット(ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ)
• 生活雑貨(アロマグッズ、キッチン用品)
逆にメディア選定を誤ると、読者の興味を引かず応募数が伸びないため、ターゲット層に合ったメディアを選ぶことがまず第一に大切です。
簡単に説明できる商品
プレパブでは、短いテキストや画像だけで商品の魅力を伝えられることが重要です。読者プレゼントの枠には文字数の制限があるため、複雑な説明が必要な商品は応募数が伸びにくくなります。
例えば、新しいITサービスや高機能家電のように、使用方法や特徴を細かく説明しないと理解されにくい商品は、プレパブには向いていません。一方で、「○○するだけで簡単に美肌へ」や「ワンタッチで操作できる○○」といったシンプルなキャッチコピーで魅力が伝わる商品は、プレパブ向きといえます。
プレパブに適した商品の条件
• ひと目で特徴が伝わる(ビジュアルやキャッチコピーでアピール可能)
• 機能や使い方がシンプル(応募者がすぐに理解できる)
• 口コミやSNSで拡散されやすい(消費者の関心を引きやすい)
プレパブを成功させるには、読者層が欲しいと思う商品であること、そして短い説明でも魅力が伝わることが必須条件です。次のセクションでは、プレパブに向いていない商品の特徴について解説します。
プレパブに向いていない商品

プレパブは適切な商品を選定すれば高い効果を得られますが、すべての商品が適しているわけではありません。
プレゼント企画としてメディアに受け入れられにくい商品や、法律的なリスクがある商品を選ぶと、応募数が伸びず、むしろブランド価値を損なう可能性もあります。次に、プレパブに向いていない商品の特徴を解説します。
景品表示法や薬機法に触れそうな商品
プレパブで提供する商品は、景品表示法や薬機法(医薬品医療機器等法)に関わりそうな商品は避けた方が良いでしょう。理由は、法律に触れていなかったとしても、掲載するメディア側にとってリスクがあるかもしれないと感じられると、掲載するハードルが高くなってしまうためです。
プレパブで注意が必要な例
• 「○○を飲むだけで体重が減る」といった健康食品(過剰な効果を謳うと景品表示法違反)
• 「シミが完全に消える」などの化粧品(医薬品と誤認させる表現は薬機法違反)
• 「○○病が治る」といった医薬品(医師の処方が必要なものは不可)
このような商品をプレパブに利用すると、消費者庁や厚生労働省から指導を受ける可能性があります。そのリスクをメディアも懸念しているので、プレパブには向いていない商品と言えます。
無形商材
プレパブでは、無形商材は応募者の興味を引きにくい傾向があります。
例えば、オンラインスクールの受講権や、ソフトウェアの無料ライセンスなどは形がないため、商品の価値を読者に伝えにくいです。掲載の許可はメディアによって異なりますので、掲載したい場合は、伝え方やサービスのコンテンツ内容をよく検討しましょう。
プレパブに向かない無形商材の例
• オンライン英会話の無料レッスン
• クラウドサービスの3ヶ月無料トライアル
• ビジネスコンサルティングの無料相談
地域限定型の商品
プレパブの読者プレゼント企画では、全国の読者が応募できることが前提となるため、地域限定の商品は向いていません。例えば、特定の店舗のみで利用可能なマッサージ券や、特定の地域でしか販売されていない食品などは、応募者が限られるため応募数が伸びにくくなります。
地域密着型の商品をPRしたい場合は、地元のフリーペーパーや地域密着型のWebメディアに掲載するなど、別のPR戦略を考えるほうが効果的です。
プレパブの導入方法!4つのステップ

プレパブを成功させるためには、単にプレゼントを用意してメディアに掲載を依頼するだけでは、期待する効果は得られません。
適切な企画立案、ターゲットに合ったメディアの選定、効果的な配信、そして効果測定までを一貫して行うことで、ブランドの認知向上や販売促進につなげることができます。
①読者プレゼント企画の立案
プレパブを成功させるためには、読者が「応募したい」と思えるような企画を立案することが重要です。
ただ商品を提供するだけではなく、メディアの読者層に響くストーリーを考え、どのように魅力を伝えるかを検討する必要があります。例えば、新商品の発売に合わせたプレゼント企画や、季節限定の特典付きキャンペーンなど、特別感を演出することで応募者の関心を高めることができます。
また、応募のハードルを適切に設定することも重要です。応募方法が複雑すぎると参加率が低下し、逆に簡単すぎると本来のターゲット層以外の応募者が増える可能性があります。
たとえば、「公式SNSアカウントのフォロー&リツイート」や「アンケート回答」などを条件にすることで、応募者の情報を収集しつつ、ターゲット層へのリーチを強化できます。
②メディア選定
プレパブで最も重要なのが、メディア選定です。
ターゲットに合ったメディアを選ばなければ、せっかくのプレゼント企画も期待した効果を得ることができません。例えば、若い世代で流行っている韓国コスメを、高齢者向けの雑誌に掲載しても、興味を持たれる可能性は低いでしょう。
このように、その商品のペルソナにあった読者層を持つメディアにアプローチしないと、プレパブで掲載されてもその後のPRにはつながりません。その他にも、ペルソナにリーチしやすい媒体は、紙媒体かWeb媒体かなども検討することが重要です。
メディアの選定が適切でなければ、プレパブは単なる「懸賞企画」として消費されてしまい、企業のブランド力向上にはつながりません。ターゲットとメディアの親和性をしっかり見極めた上で、戦略的にアプローチすることが重要です。
③配信
メディア選定が完了したら、次はプレパブの配信プロセスを設計します。
まず、メディア向けにプレスリリースを作成し、掲載依頼を行います。プレスリリースには、商品の魅力や特長、応募のメリットを明確に記載し、メディア側が読者に伝えやすい形に仕上げることが重要です。また、企業の公式SNSアカウントでもプレパブの情報を発信し、キャンペーンの拡散を図ると効果的です。Webメディアとの連携を強化することで、ターゲット層へのリーチがより広がり、応募者数の増加につながります。
また、プレパブの応募受付期間を適切に設定し、効果的なタイミングで情報発信を行うことも成功の鍵となります。特に、年末年始や新生活シーズンなど、消費者の購買意欲が高まる時期に実施することで、キャンペーンの効果を最大限に引き出すことができます。
④効果測定
メディアに掲載後、どのメディアでの掲載が最も反響があったのか、応募者の属性や行動傾向を分析しましょう。
効果測定では、まず応募数をチェックし、ターゲット層とのマッチング度を確認します。また、メディア掲載によるブランド認知度の変化や、SNSでのエンゲージメント数も指標として活用できます。さらに、プレパブ実施後の売上推移を分析し、直接的な購買行動への影響を評価することも重要です。
例えば、特定のメディアでのプレパブが売上向上に寄与した場合、そのメディアとの継続的な連携を強化する戦略が有効になります。一方で、応募数は多かったものの購買につながらなかった場合は、ターゲットとの親和性が低かった可能性があるため、今後のメディア選定やキャンペーン内容の見直しが必要となります。
プレパブの注意点・ポイント

プレパブは効果的なPR手法の一つですが、適切に活用しないと逆効果になりかねません。
戦略なしに実施すると、ブランドの価値を下げたり、期待したマーケティング効果を得られなかったりすることもあります。ここでは、プレパブを導入する際に注意すべきポイントを解説します。
PRの初期からプレパブを行わない
新商品やブランドをPRする際、いきなりプレパブを活用することは避けるべきです。
なぜなら、プレパブばかりに頼ると、消費者に「この商品は無料でもらえるもの」「安く手に入るもの」といった印象を与えてしまい、ブランド価値が下がる可能性があるからです。特に高級感を売りにした商品や、専門性の高いサービスなどは、初めからプレパブを活用すると信頼性を損なうリスクがあります。
プレパブは、既に市場に認知されている商品や、口コミを増やしたいタイミングで活用するのが効果的です。まずはブランドや商品のポジションを確立し、その後の販促施策の一環としてプレパブを活用することで、ブランドイメージを損なわずにPR効果を最大化できます。
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リピートしない商品はプレパブに向かない
プレパブの目的の一つは、新規顧客を獲得し、商品を気に入ってもらうことでリピート購入につなげることです。そのため、一度購入すれば長期間使える商品や、一度体験すれば十分なサービスはプレパブには適しません。
例えば、高価な家電製品や一度限りの体験型サービスは、プレパブで提供してもリピートにはつながりにくいでしょう。
一方、スキンケア用品や食品、サプリメントなどの消耗品は、継続利用を促すことができるため、プレパブに適しています。特に化粧品のサンプル提供は、「試して良かったら購入する」という流れを作りやすいため、プレパブの効果が高いとされています。
商品の保管や発送の手続きが必要な場合がある
プレパブでは、提供する商品の管理や発送作業が発生します。応募者への対応をスムーズに行うためにも、事前に以下のような準備を整えておくことが大切です。
• 商品の保管スペースの確保:大量のプレゼント商品を用意する場合、保管場所が必要になります。特に食品や化粧品など、使用期限のある商品は適切な管理が求められます。
• 発送作業の流れの確立:応募者へ商品を発送する際、梱包や配送手配の手間がかかります。外部の配送代行サービスを利用するのも一つの方法です。
•応募者への対応:当選者への連絡や発送完了の通知など、応募者と円滑なコミュニケーションを取ることが求められます。
個人情報の取り扱いに注意する必要がある
プレパブでは、応募者の個人情報を扱う機会が発生します。メディア側が応募を受け付ける場合と、企業側が直接受け付ける場合の二通りがありますが、いずれの場合も個人情報の適切な管理が求められます。
個人情報はプレゼント応募のために取得したものであり、決して二次利用してはいけません。たとえば、応募者のデータをマーケティング目的で再利用したり、別のキャンペーンに転用したりすることはできません。
例えば、個人情報を適切に扱っている証拠として、応募ハガキをシュレッダーにかけ、適切に処分している様子を、証拠として写真を記録したり、プレゼントの抽選会の様子を記録し、公平性を証明する素材を作ったりすることもあります。
プレパブを活用しすぎない
プレパブは有効なPR施策の一つですが、プレパブばかり行っていると、本来のブランド戦略から外れてしまう可能性があります。
プレパブ施策を過度に行っていると、商品の価値が安価に見えてしまったり、プレゼント目的の読者にし続けても、商品を手に入れたいだけの応募者が増え、実際に購買につながる可能性が低くなります。その結果、プレパブを実施したものの、売上やブランド認知にはほとんど影響がなかったというケースも少なくありません。
企業のPR戦略の一環として、プレパブを適切なタイミングで活用し、他のPR施策、例えばメディアアプローチやインフルエンサーマーケティングなどと組み合わせることで、より効果的なプロモーションが可能になります。
まとめ:プレパブを単体の施策として取り組まない

パブリシティ戦略の一環として、プレパブは効果的な手法の一つですが、あくまでも手段の一つで、メディア掲載を増やすことだけが目的になってしまうと、ターゲット層に適切なアプローチができず、売上やブランド価値の向上にはつながりにくくなります。
そのため、最も重要なのは、プレパブを単体の施策として取り組むのではなく、SNSマーケティングやSEO、PR全般と組み合わせて、統合的なプロモーションを行うことです。プレパブの成功は、適切なメディア選定やターゲット戦略、そして長期的なブランド構築の視点とセットで考えることが欠かせません。
シェイプウィンでは、PR戦略の設計から実行まで、幅広いサポートを提供しています。プレパブだけでなく、ブランド価値を高める総合的なマーケティング戦略をお考えの方は、ぜひご相談ください。