消費者の行動が従来と大きく変化している現代において、商品を売る際に重要になっているのは、どのようにPRするか、そしてマーケティングの観点からどのように既存のSNSなどのメディアを使い分けるのかということです。
この記事では、商品PRとは何か、広告や販売促進との違いをはじめに解説し、SNSや動画を活用したプロモーション方法、そして効果を最大化するための具体的な手法を、実際の成功事例を基に解説します。
商品PRとは

商品PRとは、商品やサービスの魅力を消費者やメディアに伝え、信頼を築くためのパブリックリレーションズ(PR)活動を指します。
直接的に商品を売り込むのではなく、消費者とブランドの間に良好な関係を構築し、長期的な価値を生むことを目的としています。現代のPRでは、SNS、動画、イベントなど、複数のチャネルを組み合わせたアプローチが求められています。
目的
商品PRの最大の目的は、メディアや消費者に取り上げられることで商品やサービスの認知度を高め、最終的に販売促進につなげることです。
例えば、新商品の発表に合わせて行うプレスリリースやイベントは、消費者にその価値を伝え、購買意欲を刺激します。また、信頼性のあるメディアに掲載されることで、商品やブランドへの信頼が増し、持続的なビジネス成長に寄与します。
広告と販売促進、PRの違い
PRは、メディアやインフルエンサーを通じて商品やサービスの魅力を自然に伝え、消費者の認知度を高めながら信頼を構築する手法です。マーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)の中で、PRはプロモーションの重要な一部を担い、他の施策と連携することでその効果を最大化します。
さらに、現代の消費者行動は複雑化しており、複数のチャネルを横断して情報を収集します。そのため、消費者の行動パターンに合わせたチャネル選択が成功の鍵となります。商品PRは単なる宣伝を超えた、戦略的なコミュニケーション手段といえるでしょう。
項目 | 広告 | 販売促進 | PR |
目的 | 消費者に特定のメッセージを伝える | 短期的な購買行動を刺激 | 商品やブランドの魅力を自然に伝え、信頼を築く |
主な手法 | テレビCM、SNS広告 | クーポン、セール、プロモーション | メディア掲載、インフルエンサー活用、イベント |
効果の持続性 | 即時的な効果 | 短期的(キャンペーン期間中のみ) | 長期的 (ブランド価値の向上) |
ターゲット層 | 絞り込みが可能 | 広くリーチ可能 | ブランドに 関心を持つ層を対象 |
コスト | 高い | 中~低 | 中(場合によって高コスト) |
信頼性構築 | 限界あり | 限定的 | 信頼性とブランド価値を 高める |
例 | SNS広告、バナー広告 | 限定セール、クーポン配布 | 新商品発表会、 メディアリレーションズ |
商品PRの主な方法
商品PRを効果的に実施するためには、オフラインとオンラインの手法を組み合わせることが重要です。それぞれのチャネルには特有の強みがあり、ターゲットや目的に応じて選択・活用することで、PR効果を最大化できます。
次に、オフラインとオンラインの具体的な方法について解説します。
オフライン

オフラインのPR方法は、消費者やメディアとの直接的な接触を重視し、ブランド体験を提供することに重点を置きます。具体的には以下のような手法が代表的です。
•新商品発表会
新商品発表会は、商品やサービスの魅力を直接伝える場として効果的です。例えば、メディアやインフルエンサーを招待し、実物を体験してもらうことで、より詳細なレビューや記事を得られる可能性が高まります。また、会場の装飾や演出を工夫することで、SNSでの拡散を狙うことも可能です。
•サンプリングイベント
サンプリングイベントでは、消費者に商品を実際に試してもらい、直接的なフィードバックを得ることができます。試供品を通じて商品の価値を体感させることで、購買意欲を高めるだけでなく、口コミを誘発する効果も期待できます。
オンライン

オンラインのPR方法は、幅広い層に情報を届け、SNSやウェブメディアを活用して効率的に拡散することが目的です。以下の手法が主に用いられます。
•プレスリリース
プレスリリースは、メディアに向けて商品情報を公式に発信する手法です。適切な媒体に情報を送ることで、記事掲載やニュースとして取り上げられる可能性を高められます。
•プレゼントパブリシティ
商品を無料で提供し、その感想やレビューを公表してもらう方法です。特にSNSやブログを通じて発信することで、口コミ効果を高め、潜在顧客への訴求力を向上させることが可能です。
•SNS(ソーシャルメディア)
FacebookやInstagram、TikTokなど、各SNSプラットフォームを活用して商品情報を拡散します。短期間で多くの人にリーチできるだけでなく、ターゲティング広告を使うことで、効果的に特定の顧客層に訴求することができます。
•インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーを起用して商品の魅力を発信してもらう手法です。彼らの信頼性や影響力を活用することで、消費者に対して商品の価値を効果的に伝えることが可能です。また、インフルエンサーを通じた発信は、広告色を抑えた自然なPRとして受け取られるため、エンゲージメントを高めることができます。
商品PRの方法の具体例

ここまでどのようなPR方法があるのかを紹介してきましたが、次に実際の成功事例をもとに、どのように商品をPRすれば良いのか、有形商材と無形商材の場合に分けてそれぞれ解説します。
有形商材の成功事例
有形商材の例として、高性能ゲーミングスマートフォンを提供するRedMagicの日本市場でのPR活動をシェイプウィンが支援した例を挙げて、どのようにして効果的なメディア露出やターゲット層への浸透を実現したのかを詳しく解説します。
RedMagicの会社概要
RedMagicは、中国のテクノロジー企業であるZTEのサブブランドです。2012年に設立され、主にスマートフォン、ウェアラブルデバイス、アクセサリーの設計、開発、製造、販売を行っています。nubiaは、主に中国を中心に世界中で製品を販売しており、高性能なゲーミング用スマートフォンを提供しています。
背景と課題
巨大なゲーム市場を有する日本での展開において、主にYoutuberなどのインフルエンサーとのコラボやリモートでのプレスリリース発信でPRを行っていましたが、さらなる販売促進のために、新モデル発売時のメディア掲載の量と質を向上する必要がありました。
PR方法
詳細なプレスリリース作成や事前レビューの依頼、そしてペイドパブリシティの活用という3つのアプローチを組み合わせることで、日本のゲーム市場における認知度と影響力を大幅に向上させました。それぞれの手法がどのように相互に作用し、最終的な成果に繋がったのかを解説します。
- 詳細なプレスリリースの配信
商品性能を明確に伝えるプレスリリースを作成し、競合製品との差別化ポイントを明示。これにより、テック系やゲーム系メディアの注目を集めた - 事前レビュー記事の依頼
製品公開前に、信頼性の高いIT系ジャーナリストやメディア編集部にレビュー記事を依頼。この戦略により、発売直後から製品の魅力を伝える記事が多数公開されるよう戦略立てた - ペイドパブリシティの活用
メディア露出の幅を広げるため、一部の注力メディアにはペイドパブリシティ形式で動画レビューや特集記事を掲載。これにより、読者層や視聴者層への浸透強化を狙った
効果
RedMagicは、プレスリリースやレビュー記事による信頼性の構築に加え、ペイドパブリシティを活用して多面的なメディア露出をしました。その結果、記事掲載数やPV数の向上だけでなく、購買に直結する結果を生み出しました。具体的な数値と成功要因を見ていきましょう。
活動 | KPI | 定量/Quantitive | 定性/Qualitative |
メディア露出 | 100記事 | 162記事 | 新製品リリースではスペックやAmazonへのリンク掲載があり、即座に売上につながった。 |
レビュー記事 | 10記事 | 11記事 | トップティアのメディアでの露出と影響力の高いジャーナリストのレビューにより質と数共に高く、購買へつながった。 |
ペイドパブリシティ | 20,000PV 3記事 | 30K PV+33K play (YouTube)4記事 | ASCII, 4Gamer, ITmobile, GameWatchの4媒体で実施。レビュー記事だけでなく、開発に関わることや動画でのレビューなど多様な露出により広く興味喚起に成功。 |
無形商材B2C:比較検討サイトでの掲載例xメディア露出
次に、無形商材におけるPR活動の具体例として、子ども向けオンライン英会話サービスを提供するNovakid、日本能率協会の事例を紹介します。
競争の激しい市場でどのように認知度を高め、信頼を築いたのか、その戦略を詳しく解説します。
Novakidの成功事例
無形商材のPR活動では、サービスの価値を具体的に伝え、信頼性を築くことがポイントです。Novakidの事例では、インフルエンサーやレビューサイトを効果的に活用することで、日本市場における認知度を大幅に向上させました。
Novakidの企業紹介
Novakidは、シリコンバレー(米国)に設立された子ども向けオンライン英会話スクールです。
世界45か国、約50万人以上の生徒が登録し、アメリカ、イギリス、カナダなど海外在住のネイティブスピーカーをはじめ、2,000人以上の講師が登録。全員がCELTA、TEFL、TESOL、またはTKTなどの英語教授資格を保有しており、教育歴2年以上の子ども向け英語教育のプロフェッショナルのみを採用しています。
背景・課題
通学型グループレッスンの英会話教室が一般的な日本市場において、子ども向けのオンライン英会話というサービスの市場認知が必要でした。また、大手から個人まで数千もの英会話教室が点在するレッドオーシャンの中で競合に打ち勝つポジショニングや、顧客から信用を築く活動も重要でした。
PR方法
シェイプウィンではこれらの背景を踏まえて、以下の戦略を実行することで市場での認知度向上と信頼の構築に成功しました。
- Instagram運用とインフルエンサー投稿
インフルエンサーとの連携を通じて、教育に関心のあるフォロワー層にリーチ。子ども向け英語教育の魅力を分かりやすく伝える投稿を展開 - TVerでの動画CM
民法テレビ局が運営するTVerを活用し、働く親世代に響く動画CMを配信。顧客層の生活スタイルに合わせた媒体選定をした - 競合分析によるポジショニング
徹底的な市場調査を行い、優位性を発揮できるポジションを確立。これにより、競合との差別化を図った
効果
これらの施策を通じて、具体的な活動の結果として、以下のような成果が得られました。
活動 | KPI | 定量/Quantitive | 定性/Qualitative |
年間メディア露出 | 非公開 | 240 | キャンペーンやコンテストなどのメディア露出だけでなく、サービスの秘話や新しい英語学習メソッドに関する記事も掲載。 |
Instagramフォロワー数 | 1,000 | 4700 | 英語や家庭学習、子育てに関するインフルエンサーを多く起用したことで、高いエンゲージメントと波及効果があった。 |
インフルエンサー投稿 | 非公開 | 100 | 多数のマイクロインフルエンサーやアンバサダーと協業することで、比較的エンゲージメントの高い投稿を定期的に実現した。 |
TVer CM | 認知1.5倍CVR1.5倍 | 認知2倍CVR1.8倍 | 働くママ世代の共感を得られるCM動画を複数配信したことで、調査による認知やSNSでのエンゲージメントも向上。 |
日本能率協会
最後に、日本能率協会(JMA)の事例を取り上げ、SEOと展示会を活用したPR戦略について解説します。
日本能率協会の会社概要
日本能率協会(JMA)は、企業の持続的成長を支援する活動を行う公益法人です。主に展示会の企画・運営を通じて、多くの業界プレイヤーに最新の技術や情報を提供しています。日本国内で数多くの展示会を主催しており、業界における新たな機会創出を目指しています。
背景と課題
日本能率協会は、多様な業界向けに展示会を開催していますが、オンラインでの知名度向上に課題を抱えていました。
特に、特定業界のキーワード検索で上位表示されないことが、集客力の低下に繋がっていました。また、B2B顧客への情報提供を効果的に行うため、SEO対策によるオウンドメディアの強化が求められていました。
PR方法
これらの課題に対して、以下の施策を組み合わせ、SEOによるオンライン集客力強化と展示会を通じたオフラインの顧客接点創出を実現しました。
- SEO戦略の強化
展示会関連の主要キーワードをターゲットにしたオウンドメディアの記事を作成し、検索結果での上位表示を目標として設定。各記事には、展示会の特長や来場者のメリット、業界トレンドに関する情報を盛り込み、価値あるコンテンツを提供 - 展示会プロモーションの拡大
展示会開催時には、来場者が持ち帰れるプレスキットや資料を用意し、参加者がその場だけでなく後日でも展示会内容を復習できる環境を整備。また、展示会の様子を撮影した動画を活用し、SNSやオウンドメディアでのプロモーションを強化 - 専門メディアとの連携
業界に特化した専門メディアにプレスリリースを配信。展示会情報がターゲット層に適切に届けられるようにアプローチ
成果と効果
これらの施策を通じて、日本能率協会はオンライン・オフラインの両面で認知度と集客力を向上させました。
活動 | KPI | 定量/Quantitative | 定性/Qualitative |
オウンドメディアSEO | 指名検索20%増加 | 目標達成 | 展示会に関連するキーワードで上位表示を達成し、訪問数が増加。 |
展示会来場者数 | 来場者前年比10%増加 | 15%増加 | プロモーション活動の効果で、来場者数が前年を大きく上回る。 |
プレスリリース配信 | メディア掲載30件 | 45件 | 業界メディアでの掲載が目標を超え、展示会認知が大幅に向上。 |
まとめ:PR活動は複雑化している

ここまでで解説してきた通り、何かの商品をPRしたい時には、広告や販売促進とは異なり、信頼を構築しながら情報を自然に伝えることが特長です。単にメディア上に「露出」を増やすだけではなく、ターゲット層に響くメッセージを適切なチャネルで発信することが重要です。
その一方で、PR活動は複雑化しています。
SNSの進化やオンライン広告の競争激化により、企業は常に新しい手法を取り入れる必要があります。PRだけで全ての問題が解決するわけではなく、SEOや広告運用、SNS分析などの他のマーケティング施策と連携させることが重要になってきているのです。
シェイプウィンでは、PR活動に加えて、SNSやマーケティング全般をサポートし、包括的なソリューションを提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。