「PRの重要性はわかっているが、予算は限られているからこの企画は難しい」。
広報担当者なら、そんな言葉を何度も聞いたことがあるはずではないでしょうか?
広報のよくある悩みの一つとして、PR企画書の立案や作成、そして社内での承認獲得が挙げられます。PRの重要性を社内で理解してもらい、納得のいく予算を獲得するには、説得力のある企画書が必要です。
本記事では、具体例を交えつつ、効果的なPR戦略とメディア戦略を徹底解説します。
PR企画書とは?
PR企画書は、広報PRに関するプロジェクトやアイデアを実現するために、ステークホルダーが知っておくべき情報をまとめた文書のことです。
施策の面白さや新規性だけに焦点を当てるのではなく、具体的な課題を解決する能力が重視されます。優れたPR企画書は、何を目的として、どのような戦略を用いて、どういった成果を狙うのかを明確にすることで、実現可能で効果的なPR活動を提案します。
効果を測定しやすい指標も含めると、企画が通りやすくなります。本記事では、企画書の社内での通し方や要素について解説しますが、その次に知っておきたいPR企画書の書き方については、こちらの記事をチェックしてください。
広報企画の立て方・企画書の作り方を1から解説!
【よくある失敗例3選】PR企画書が通らない理由
PR企画書が社内で承認されにくい理由には、いくつかの共通点があります。多くのケースでは、効果的な戦略が十分に伝わっていないか、説得力に欠けていることが挙げられます。
次に、よくある失敗例と、その背景にある理由を解説していきます。
課題が言語化されていない
多くのPR企画書が失敗する理由の一つは、解決すべき課題が明確に言語化されていないことです。
会社は曖昧な「何か」に対して資金を投資できません。投資には正当な理由が必要で、それを示すためには具体的な課題と、その課題にどう対処するのかをしっかり記述する必要があります。
例えば、「ブランド認知度を高める」と言うだけではなく、「20代女性の認知度を3か月以内に20%向上させる」といった具体的な目標を示すことで、企画の説得力が増します。
効果が明確でない
PR施策が成功した場合に得られる具体的な効果が見えにくいと、企画は通りにくくなります。
効果を説明する際は、数値目標や期間など、客観的な指標を提示することが重要です。「売上向上に貢献」といった曖昧な表現ではなく、「PR施策後の問い合わせ数を前年比10%増加」といった具体的な成果を設定しましょう。
また、ターゲットのペインポイントや業界のトレンドを踏まえた具体的な課題を言語化し、それに対して、このPR企画でどのような効果が得られるのかを明記することも重要です。
課題感と期待する効果が意思決定者と一致していない
PR企画書が通らないもう一つの理由は、企画の内容が意思決定者の考えや課題感と合致していないことです。
企画書を作成する際は、関係者や上層部が抱える課題を理解し、その解決策として提案する形にすることが不可欠です。もし認識合わせができていないと、どれほど素晴らしいアイデアでも採用されない可能性があります。
最初に意思決定者の期待や課題感をヒアリングし、企画の方向性をすり合わせることで、通りやすい提案を作成することができます。
PR企画書に必要な要素
PR企画書の作成には、企画の成功に必要な情報を体系的にまとめることが不可欠です。ここでは、効果的なPR企画書を作るための要素を順を追って解説します。
市場分析
PR施策を成功させるためには、ターゲット市場を深く理解することが求められます。
その際、まず初めに市場分析では、3C分析(Customer, Competitor, Company)やSWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)といった基本的なフレームワークを活用します。これにより、ターゲット層のニーズや競合他社の動向、自社の強みや課題を明確にできます。
目的 KGI
PR企画書では、施策の最終的な目的であるKGI(Key Goal Indicator:重要目標指標)を設定しましょう。
例えば、「ブランド認知度を1年で20%向上させる」や「新商品を6か月で1万個販売する」といった具体的なゴールを掲げます。KGIは、全体の戦略がどの方向に向かうべきかを示す指針であり、PR活動の成功を測る基準となります。
数値目標 KPI
KGIと同時に、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定することも重要です。
例えば、「月間ウェブサイト訪問者数を1万件にする」や「プレスリリースのメディア掲載率を10%にする」といった数値目標を設定します。
予算
予算は、企画の実現可能性を判断するための重要な要素です。
PR企画書には、具体的な予算案を提示し、各施策にかかる費用を詳細に記載し、意思決定者が投資の妥当性を評価しやすい状況を作りましょう。
予算に含まれる要素として、制作費、メディア広告費、人件費などが考えられます。費用対効果を最大化するために、効率的な資金配分を提案することが求められます。
スケジュール
企画書には、施策実施までの具体的なスケジュールを記載し、各工程の期限を明示します。
ガントチャートなどのツールを用いて視覚的に表現することで、進捗管理がしやすくなります。また、タイムリーな施策実行は、プロモーション効果を最大化するために重要です。
広報戦略の設定
広報戦略の設定では、ターゲット層に最も効果的にアプローチする方法を考えます。メディア選定、メッセージの内容、発信タイミングなどを具体的に計画します。
たとえば、特定のターゲットに響くストーリーや、SNSを活用した拡散施策などが含まれます。ターゲットの興味関心に合わせてカスタマイズした広報戦略が、メッセージの影響力を高めます。
運営体制
最後に、運営体制の構築が必要です。PR企画を実行するためには、各担当者の役割分担を明確にし、責任者を設定することが求められます。
例えば、「プレスリリース制作担当」「メディアリレーション担当」といった役割を定義します。また、チーム内の連携を円滑にするためのコミュニケーション手段や報告フローも企画書に含めておくと、実行段階での混乱を防げます。
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PR企画書の作成4ステップ
PR企画書を成功させるためには、計画と戦略がポイントです。
ここから、商品ローンチを行う例とともに、具体的に企画書を作成する際の4つのステップを解説していきます。
ステップ1:企画の目的設定と自社分析
PR企画書を作成する際、まず初めに取り組むべきこととして企画の目的と分析の明確化が挙げられます。
ここでは、先ほどの章で解説した競合分析や市場分析を行い、自社製品が市場でどのように認知されているかを分析します。そして、自分たちがどのように見られたいのか、どのくらい商品を売りたいのか、現状と理想の姿のギャップを明確にします。
売り上げが足りていない、見込み数が足りていない、認知のシェアが足りていない等、現状の課題を明確にしましょう。
<具体例:新しい健康ドリンクのPR企画書作成>
1.企画の目的設定
製品名:〇〇健康ドリンク
目的:ターゲット層に「持続的なエネルギー補給と健康的な栄養摂取」を訴求し、ブランド認知を高めること。
現状の課題:類似商品が多数あり、即効性に偏った訴求が主流となっている。そのため、認知のシェアが足りていない。
2.分析
市場調査:主要な競合商品をリストアップし、特徴を比較する。
ターゲット層の明確化:30〜45歳の働くビジネスパーソン、オフィスワーカーなど。
ポジショニング:他社が打ち出していない「持続的エネルギー」という差別化ポイントを強調。
3.ターゲットニーズ
栄養価の高いものを手軽に摂取したい健康に関する意識が高い人。
忙しい生活の中で簡単に健康維持を図りたいと考える人。
4.競合分析(3C分析やSWOT分析を使用)
競合の特徴:即効性を訴求するエナジードリンクが主流。
自社の強み:自然由来の原材料、持続的エネルギー効果。
ステップ2:PR戦略の具体化とメディアプランの策定
次に、明確な戦略とメディアプランの策定が必要です。
具体的には、まずPR施策の全体像を構築し、その施策をどのように実行するかを詳細に決めていきます。戦略を立てる際には、ターゲットに対する訴求ポイントを明確にし、最も効果的なメディアを選定します。
<具体例:新しい健康ドリンクのPR企画書作成>
1.メッセージの明確化
主なメッセージ:「〇〇健康ドリンクは、自然由来の原材料で長時間エネルギーを維持します。」
サブメッセージ:「健康を意識する現代人にぴったりの新しい選択肢。」
2.メディアプラン
プレスリリース:主要な健康系メディア、ビジネスニュースサイト、食品関連雑誌への配信
SNSキャンペーン:インフルエンサーとのコラボ、Instagramでのユーザー投稿を促進するキャンペーンを展開
イベント企画:サンプリングイベントを実施し、実際に製品を試してもらう機会を提供
ステップ3:プロジェクトの進行計画とスケジュールを作成
PRプロジェクトを成功させるためには、計画をしっかりと地に足をつけて立てることが重要です。次に、プロジェクトのスケジュールを作成します。
企画時点で不確定な要素が多いと、意思決定のハードルが高まります。実施スケジュールを細かく設定し、プロジェクトの各段階で必要なタスクを明確化することで、企画が実現可能なものとして捉えられるでしょう。
<具体例:新しい健康ドリンクのPR企画書作成>
準備期間(1か月)
タスク:プレスリリースの作成・校正、メディアリストの作成、インフルエンサーとの
契約締結
担当:広報チーム、マーケティング部門
実施期間(2か月)
タスク:プレスリリース配信、SNSキャンペーンの開始、サンプリングイベントの実施
担当:広報チーム、イベント運営チーム
振り返り期間(2週間)
タスク:KPIの測定、反省会の開催、次回施策の計画
ステップ4:予算計画と成果の測定方法を設定する。
最後に、予算計画を行います。これまでのスケジュールや具体的なメディア戦略をもとに、各施策の費用を洗い出し、費用対効果の高い予算設定を行います。
また、ここではKPIを設定し、施策の効果を定量的に測定することで、次回以降の施策に反映できるようにします。
<具体例:新しい健康ドリンクのPR企画書作成>
•総予算:500万円
内容:メディア露出用の広告費200万円、SNSキャンペーン費150万円、イベント運営費100万円、予備費50万円
•KPI設定
・メディア掲載数:30件
・SNSエンゲージメント率:5%
・イベント来場者数:500人
•測定方法
・メディア掲載レポートの作成
・SNS分析ツールを活用してエンゲージメントを測定
・イベント参加者のアンケート集計
社内で通るPR企画書を作るためのヒント
社内で通るPR企画書を作成する際には、単に情報を羅列するだけではなく、読み手の視点やタイミング、分析を活用して説得力のある内容を構築することが大切です。
以下のヒントを参考に、効果的な企画書作成を目指しましょう。
不確定要素の配分を考える
PR施策には、常に一定のリスクと不確実性が伴いますが、これをどのように企画書に盛り込むかが成功の鍵です。
シェイプウィンが多くの企業のPR支援をして感じた中で、特に経営層はリスクを避けたがる傾向があります。しかしリスクだけを避けていては、現状維持にとどまり企業成長は見込めません。
そのため、企画が夢物語に感じられないように、70%を確実性の高い施策、そして30%を挑戦的な要素に配分すると効果的です。このバランスが示せれば、挑戦する価値があると判断してもらいやすくなります。
たとえば、成長市場における新たなターゲット層へのアプローチが効果的な場合、そのチャレンジが事業成長にどう寄与するのか、具体的な数値と共に示しましょう。
誰が読むのか、なぜ今それをやるのかを意識する
PR企画書の内容は、誰に読まれるかを意識した設計が不可欠です。
経営層への提案では、ビジネスインパクトやROI(投資対効果)に重点を置き、リスク管理を明示します。一方で、現場のスタッフに対しては、実現性や実務的なメリットを説得材料とします。
また、「なぜ今実行すべきか」という問いに答えるため、最新の市場トレンド、競合の動向、または消費者行動の変化を基に、今が最適なタイミングであることを証明しましょう。
たとえば、SNSエンゲージメントが急上昇しているトピックを活用する場合、そのデータを盛り込むことが効果的です。
5W1Hを意識してわかりやすく伝える
PR企画書は短時間で意図を伝える必要があるため、構成は「5W1H」(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)を軸に組み立てます。
例えば、「誰が」の部分では具体的なターゲットペルソナを設定し、「どのように」ではメディアプランや施策の進め方を詳述します。この方法により、提案が直感的に理解でき、全体像がクリアになります。
さらに、重要な箇所はビジュアルを活用することで、読み手の理解を深めます。インフォグラフィックや簡潔な表を用いることで、情報を視覚的に整理すると良いでしょう。
3C、SWOT分析を意識する
競争が激しい市場で差別化を図るためには、客観的な分析が不可欠です。
3C分析(顧客、競合、自社)では、ターゲット市場のトレンドや競合の強み・弱みを徹底的にリサーチし、自社のポジショニングを明確にします。
さらにSWOT分析を用いて、自社の強みをどう最大化し、弱みをどう補完するかを示します。具体例として、新商品をローンチする際、競合が未対応のニッチなニーズを攻める施策を打ち出すと、説得力が増します。
これらの分析を具体的な数値や市場データで裏付けることで、提案の信頼性が向上します。
まとめ:市場のニーズを理解し、解決策を提案する
PR企画書を作成する際は、単に目新しいアイデアを出すだけでなく、市場のニーズを理解し、解決策を提案することがポイントです。KPIやKGIの明確な設定、綿密な市場分析、実行可能なメディアプランが求められます。
しかし人手不足などのリソースに悩む中小企業は、そもそもPR活動をどう進めるべきか頭を悩ませることも多いです。
シェイプウィンでは、SNS運用やSEO対策を含め、企業のPR活動を総合的に支援しています。初めてのPR企画や戦略の見直しをお考えの方は、ぜひお問い合わせください。