「観光客を増やしたいけど、どんなPRが効果的かわからない」。そんなお悩みを抱える自治体や観光業者からよく相談をいただきます。
単に動画を作っても拡散されない、SNS投稿が埋もれてしまうなど、観光プロモーションには多くの課題がつきものです。
この記事では、動画制作やSNS活用、ユニークなイベント企画など、観光PRに必要な具体的な手順を紹介!地域の特性を活かしながら、観光客を呼ぶためのPR方法について解説します。
観光PRとは?
観光PRとは、地域や観光地の魅力を広く伝え、観光客を呼び込むためのプロモーション活動です。
自治体プロモーションが移住や定住促進、地域のブランド化を目指す一方で、観光PRは観光客の増加を直接の目的としています。
そのため、観光PRでは「行ってみたい」と思わせることが重要で、マーケティングの視点からターゲットのファネルを理解し、認知から訪問意欲へとつなげるための戦略的な訴求が求められます。
近年では動画活用が主流ですが、ただ動画を作って満足するのではなく、その動画がターゲットの行動を促す内容かを見極め、目的に合った施策を展開することが必要です。
観光PRの具体的な方法
観光PRを成功させるには、多様なプロモーション手法を組み合わせて地域の魅力を効果的に訴求することが求められます。以下では、その代表的な方法を紹介します。
動画作成
動画は、観光地の魅力を視覚的に伝える最も効果的な手法の一つです。
映像ならではの臨場感や美しさは、文章や写真では伝えきれないものを与え、観光客に強い印象を残します。
動画制作では、ただ風景を映すだけでなく、具体的なアクティビティやその土地の特有の文化、現地の人々との触れ合いを描くことで、ターゲットに「自分も行きたい」と思わせることが大切です。
また、短くキャッチーな動画はSNSでの拡散性が高まり、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出も期待できます。動画を制作する際は、ターゲットの興味を引く内容に絞り、目的に合ったメッセージを込めましょう。
SNSの活用
SNSは観光PRにおいて欠かせないツールで、ターゲット層に対する情報発信の場として強力です。
特にインスタグラムやTikTokといったプラットフォームは、視覚的なコンテンツとの相性が良く、魅力的な写真や動画を通じて拡散力を持ちます。観光PRでは、観光地を訪れた旅行者がSNSに投稿した写真や動画、レビューなどのUGC創出を狙うことが重要です。
観光客が撮った写真や動画をシェアしてもらうことで、自然な形でその場所の魅力が伝わり、他の潜在的な観光客の関心を引くことができます。SNSキャンペーンを実施し、ハッシュタグを活用するなどして、ターゲット層とのエンゲージメントを高める戦略を取りましょう。
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イベントやキャンペーンの実施
イベントやキャンペーンは、観光客に直接体験してもらうことで地域の魅力を実感させる有効な手段です。
たとえば、地元の食材を使ったフードフェスや伝統文化を体験できるワークショップなどは、多くの観光客を引くことができます。さらに、現地ならではの特別な体験を提供することで、観光地の認知度を高めるだけでなく、訪問者のリピーター化も狙えます。
これらの施策は、シーズンごとにテーマを変えて実施することで、新しい層へのアプローチも可能になります。イベントはメディアにも取り上げられやすく、地域全体の注目度を上げる効果が期待できます。
メディア露出
観光PRの成功には、テレビや新聞、ウェブメディアなどを活用して広く情報を発信することも重要です。
メディア露出の方法には、プレスリリースの発信やメディア向けのイベントの開催が含まれます。最近では、アニメや漫画などのポップカルチャーを活用したプロモーションも注目を集めています。
特に若年層をターゲットにする場合、アニメとのコラボレーションはインパクトが大きく、観光地への興味を引き出す有効な手法です。地域独自のストーリーや文化をメディアを通じて発信することで、ターゲットに強く訴求することができます。
観光PRの手順5ステップ
観光PRを成功させるためには、綿密な計画を戦略的に行うことが重要です。
次に、観光PRを効果的に進めるための5つのステップを詳しく解説します。
1目的の明確化
観光PRを始める際は、まず何のためにプロモーションを行うのか、その目的を明確にすることが重要です。
観光地への訪問を促す場合、シニア層、ファミリー層、カップル層、学生層、外国人層など、ターゲット層は多岐にわたりますが、一つの施策で全ての層に訴求することは難しいでしょう。そのため、ターゲットを絞り込み、彼らに響くメッセージや表現を工夫する必要があります。
例えば、シニア層には安心感を、カップル層にはロマンチックな体験を提供する内容を考えると効果的です。
2ターゲット選定
目的が定まったら、次に具体的なターゲットを選定します。
ターゲットを明確にすることで、どのメディアを利用すべきか、どのようなコンテンツが最も効果的かを判断しやすくなります。
観光地への訪問を促す場合、ターゲット層によってアプローチが異なるため、ペルソナを作成して具体的にイメージすることが重要です。
例えば、ファミリー層をターゲットにするなら、親子で楽しめる体験や設備の情報を盛り込み、外国人観光客向けなら、多言語対応や文化体験の魅力を伝えることが求められます。
3施策の企画・選定
ターゲットが決まったら、それに合った施策を企画・選定します。
動画制作、SNSキャンペーン、インフルエンサーを活用したプロモーション、メディアへのプレスリリースなど、観光PRにはさまざまな方法があります。
選定時には、予算や期間、期待される効果などを考慮し、最も効果的な施策を組み合わせることがポイントです。また、同じメッセージでも異なるフォーマットで発信することで、幅広い層にリーチできるよう工夫することが重要です。
4実施
企画が固まったら、次は実行に移します。この段階では、タイムラインの管理と各関係者との連携が重要です。
イベントの場合は当日の運営がスムーズに進むよう準備を整え、動画やSNSキャンペーンではコンテンツが計画通りにリリースされるよう進捗を管理します。
特に、リアルタイムでの反応が期待されるSNS施策では、臨機応変に対応するための準備を怠らないことが大切です。実施中のトラブルを最小限に抑えるため、緊急対応のプランも事前に考えておきましょう。
5測定(KPIの測定)
最後に、実施した施策の効果を測定します。
KPI(重要業績評価指標)を設定し、施策の成功度を定量的に評価することで、次のPR活動に生かすことができます。
たとえば、動画再生回数、SNSでのエンゲージメント率、イベント参加者数などを指標として使い、目的に対してどの程度の成果が得られたかを検証します。
また、定性的なフィードバックも参考にし、改善点を洗い出すことで、次回のプロモーション活動の成功率を高めることが可能になります。施策の振り返りを行い、継続的な改善を心がけましょう。
観光PRで押さえておくべきポイント
観光PRは単なる情報発信ではなく、戦略的な計画が求められます。ここでは、観光PRを効果的に行うために押さえておきたいポイントを解説します。
ターゲットによってアプローチを変える
観光PRの成功には、ターゲットごとに異なるアプローチを取ることが不可欠です。
観光客はシニア層、ファミリー層、カップル層、学生層、外国人観光客など多岐にわたります。それぞれの層に響くメッセージを明確にし、適切なプロモーション手法を用いることで、効果的に関心を引くことができます。
たとえば、シニア層にはゆったりとした旅のプランを、カップル層にはロマンチックな景観を強調するなど、訴求ポイントを明確にすることが大切です。
多言語に対応する(インバウンド客をターゲットにする場合)
インバウンド観光客をターゲットにする場合、情報発信は必ず多言語対応を意識する必要があります。
英語、中国語、韓国語など、多くの観光客に対応できる言語で観光情報を提供することで、訪問者がスムーズに旅を楽しめるようになります。さらに、文化的背景に配慮したコンテンツ作りも重要です。
観光地の案内表示やウェブサイト、SNS投稿なども多言語対応にすることで、地域のホスピタリティを感じてもらい、訪問意欲を高めることができます。
やって終わりにしない、KPIの測定
観光PRは、実施して終わりではありません。効果を最大化するためには、KPIを設定し、その成果を定量的に測定することが重要です。
たとえば、動画再生回数、SNSでのエンゲージメント率、観光地への来訪者数などを指標に設定し、プロモーションの効果を分析します。このデータをもとに、次回の施策をより効果的なものにするための改善を行うことが重要です。
体験価値の設計
現代の観光客は、単に観光スポットを訪問するだけではなく、心に残る特別な体験を求めています。そのため、観光PRでは体験価値の設計が重要です。
地域特有の文化体験や、現地の人々との交流を企画することで、観光地への関心を高めることができます。
たとえば、地元の伝統工芸体験や食文化を体感できるイベントは、観光客にとって忘れられない思い出となり、リピーターの獲得にもつながりやすいため、それらにフォーカスしたPRを行うことも重要です。
地域の魅力を発掘・把握
観光PRを成功させるためには、地域の魅力をしっかりと発掘し把握することが必要です。
観光資源を十分に理解し、それを魅力的に発信することで、観光客の興味を引くことができます。たとえば、隠れた観光スポットや地域ならではの文化を紹介することで、他の観光地との差別化が図れます。
地元の人々と連携し、地域の魅力を再発見することが、観光PRにおける大きな武器となります。
観光プロモーションでよくある失敗例
観光プロモーションは、地域の魅力を伝えるための重要な施策ですが、一方でPR方法を誤り炎上したケースも少なくありません。ここでは、代表的な失敗例をいくつか紹介します。
誤解を招くプロモーション
観光プロモーションにおいて、ターゲット層に対して誤解を招くメッセージは、思わぬ反感を買うことがあります。
例えば、地域の文化や名所をアピールする目的で作成されたポスターが、「不適切な表現で、女性への偏見を助長する」との意見が寄せられ、SNS上で炎上しました。結果的に批判を受けたポスターは撤回され、観光地としての印象を一時的に損ねました。
こうした失敗は、観光地の信頼を傷つけ、再訪者の獲得が難しくなる恐れがあります。観光プロモーションでは誇張しすぎず、誠実で正確なメッセージを発信し、文化的背景や倫理観に十分配慮することが重要です。
イベントの企画が地域の特性に合っていない
観光プロモーションの一環として行われるイベント企画は、地域の特性に合致していることが重要です。例えば、歴史的な観光地において派手な音楽フェスティバルを開催しても、その場にそぐわず、観光客や地元住民の共感を得られないことがあります。
地域の特性を無視したイベントは、むしろ観光地の価値を下げ、訪問者が離れてしまう結果を招きます。この失敗を防ぐためには、地域の文化や歴史に精通し、地元住民の声を反映させることが重要です。
地元の特性を活かしたイベントを企画することで、観光客の興味を引くだけでなく、地域全体の一体感も高めることができます。
他自治体の成功事例をそのまま真似する
観光PRの施策を考える際、他自治体の成功事例を参考にすることは有効ですが、そのまま真似をしても意味がありません。
競合が多い分野で同じ手法を用いても、そもそも地域によって魅力は異なるので、他の地域の手法を真似しても成功することは難しいでしょう。そのため、自分たちの地域に合った独自のアプローチを模索することが重要です。
他とは異なる観光資源や文化を活かしたオリジナルのPR戦略を考えることで、観光客の心をつかむことができるでしょう。
ストーリー性のないプロモーション
先述したように、観光客は特別な体験を求めています。そのため、観光客が興味を持ち訪れたいと思うには、魅力的なストーリーが必要です。
例えば、地域の文化や伝統、自然の美しさにまつわる物語を交えたプロモーションは、観光地の魅力をより深く理解させ、訪問意欲を高めます。
観光プロモーションでは、訪問者が自らその場所を体験してみたくなるような感情を引き出す工夫が求められます。ストーリー性を持たせることで、観光客にとって特別な体験を提供できるのです。
参考事例
観光PRにおいては、ユニークなアイデアや明確なメッセージが、観光客の心を動かす鍵となります。成功した事例から学ぶことで、地域に合ったプロモーションのヒントを得られるでしょう。
香川県:うどん県ブランディング
香川県は、「うどん県」として大胆な観光PRを展開し、大成功を収めました。香川の全ての魅力をアピールするのではなく、県の名物である「うどん」に焦点を当てたことで、ストーリーに一貫性が生まれ、観光客に強い印象を与えました。
うどん好きの観光客をターゲットにした「うどんスタンプラリー」などの施策も功を奏し、うどんに特別な関心がない人にも、「せっかくなら行ってみよう」と思わせる仕組みづくりを成功しています。
この事例から学べるのは、地域の特産品や文化を軸に据えた明確なコンセプトが、PRの成功に繋がるということです。ストーリーがはっきりしていることで、観光客にとって魅力的なイメージが記憶に残ります。
北海道陸別町:夏と冬のギャップを活かしたPR
陸別町は、日本一寒い町として知られていますが、PR動画では意外にも「夏の魅力」にフォーカスしました。このギャップが視聴者の関心を引き、動画をより印象的なものにしています。
また、続編の「りくべつ 冬」では、夏とは全く異なる静寂で美しい冬景色を紹介し、町の四季折々の魅力を強調しました。陸別町のPRは、同じ場所でも季節によって異なる楽しみ方があることを見事に伝え、多面的な地域の魅力を訴求しています。
この事例からは、視聴者の予想を超える意外性を持たせることで、より強い印象を与えることの重要性が学べます。
大分県別府市:「100万回再生されたら混浴施設を作る」
別府市は、「100万回再生されたら本当に混浴施設を作る」と宣言した動画PRで注目を集めました。
動画では、架空の遊園地と混浴施設が組み合わさった「湯~園地」を紹介し、「こんな施設があったら楽しいだろう」というユーモラスなコンセプトが話題を呼びました。結果、わずか3日で100万再生を達成し、その後のクラウドファンディングでは多くの支援を集め、実際に3日間限定で「湯~園地」をオープンしました。
この事例は、視聴者参加型のPRが持つ強力な効果を示しています。観光客の期待感を高め、地域全体のプロモーションに繋がりました。
まとめ:訪問したいと思わせるためのストーリー設計
観光PRは、ただ観光地の魅力を伝えるだけではなく、訪問したいと思わせるためのストーリー設計が求められます。
しかし、動画やイベント、SNSの使い方次第で、観光客の関心を大きく引きつけることが可能ですが、戦略を練り、効果を測定することが必要です。また、成功事例を参考にすることは重要ですが、地域特性を見失わず独自性を保つことが成功の秘訣です。
これらを戦略的に行うことは容易ではありませんが、シェイプウィンでは、企業や自治体の観光PRをSNSからマーケティング戦略まで一貫してサポートしています。まずは無料相談からお気軽にご相談ください。