広報企画を立てる際に「何から始めたら良いのだろう」と悩む広報担当者は少なくありません。広報とプロモーションの違いや、広報企画の具体的な立て方がわからないという声もよく聞きます。
この記事では、広報企画を成功させるために押さえるべきポイントや、実際の企画書の作成手順について解説します。基本的なステップをしっかり理解してメディア露出を増やし、広報活動を成功させましょう。
広報の企画とは
広報の企画とは、企業や団体が自社のメッセージを効果的に伝えるために立てる計画や戦略を指します。
単なる広告活動とは異なり、広報はメディアや消費者、ステークホルダーとの関係性を構築し、ブランドイメージを高めることが目的です。広報企画がしっかりと立案されることで、企業の認知度や信頼性が向上し、結果としてビジネスの成長につながります。
具体的には、メディア露出を増やす、イベントを企画する、社内外でのコミュニケーションを円滑に進めるなどが広報の企画に含まれます。
広報企画のコツ
広報の仕事において、企画立案は非常に重要な役割を果たします。
しっかりとした企画を立てることができれば、企業のメッセージを効果的に伝えることができ、広報活動全体の質が向上します。広報企画は、会社の目標やビジョンに基づき、メディアやステークホルダーへの影響を意識した戦略的な計画を立てることが求められます。
まずはじめに、広報企画を成功させるためのコツやポイントを詳しく解説していきます。
会社へのメリットを言及する
いくら優れた企画でも、通らない企画はたくさんあります。
あちこちオードリーなどの番組を手がけたTVディレクター佐久間氏の著書「佐久間宣行のずるい仕事術」では、企画は出すものではなく通すものであり、「誰が読むのか、なぜ今それをやるのかを意識する」ことが重要だと述べています。
会社の経費や人件費を使って取り組むのであれば、もちろん会社にとってのメリットがなければいけません。その企画を通じて何が得られるのか、企業にとってのメリットが感じられなければ、採用される可能性は低くなります。
企画の内容を凝ることも大切ですが、企画書は通すものだということを意識しておくことも重要です。
成功と失敗のの定義を明確にしておく
広報施策には必ず目的があり、その目的に基づいた成果が求められます。
その成果を達成できた時点で成功とみなすべきですが、時に「もっとできたのではないか」といった声が上がり、追加の成果を求めることがしばしばあります。これは、目標設定が曖昧なまま進められた場合に陥りやすい状況です。
そのため、広報戦略を始める前に、どの水準で成功と見なすのかを明確にし、必要以上に成果を追求しないことが重要です。
また、目標未達時の対応も計画段階で明確にしておくべきです。いわゆる「損切り」のラインをあらかじめ設定し、これを超えた場合には「失敗」として次の戦略に移行する判断基準を持つことで、リソースを無駄遣いを防ぐことに繋がります。
KPIとKGIを混同しない
広報企画のゴールには、短期的な目標(KPI)と長期的な目標(KGI)の2つがありますが、これらを混同しないことが広報担当者にとって重要な視点です。
短期的なKPIは、目標に向かって進捗を確認するための指標であり、例えばメディア掲載数やSNSフォロワーの増加などが該当します。一方で、長期的なKGIは、最終的に目指すゴールであり、ブランド認知度の向上や市場シェアの拡大など、大きなビジョンを指します。
しかし、短期KPIが達成されたからといって、その段階で長期ゴールが即座に達成されたわけではありません。広報活動は、短期的な成果を積み重ね、長期的なビジョンに近づけていくプロセスです。
短期の目標達成を成功としながらも、全体の戦略と進捗のバランスを見ながら調整し続けることが大切です。このプロセスを適切に管理することで、KPIに振り回されず、広報活動全体を見据えた戦略的な行動が取れるようになります。
ステークホルダーと期待・成果の認識を合わせる
広報企画策の目的や期待される成果を、特に経営層や社外パートナーなどのステークホルダーと認識を合わせておくことも重要です。
広報活動では、メディア露出やSNSのインプレッションといった数値目標が設定されることが多いですが、単に数字が高ければ成功というわけではありません。むしろ成功の尺度は、その施策が当初の目的に対してどれだけ貢献できたかにかかっています。
企画段階から上層部や関係者との認識を事前に揃えておくことで、広報企画の評価基準が明確となり、結果として施策の評価や次のステップがスムーズに進むでしょう。
企画を立てるシチュエーション
広報企画を立てる場面はさまざまですが、シチュエーションに応じて目的や内容が大きく異なります。提案資料の作成からイベントの実行、さらには社内報の作成まで、各シチュエーションに最適な企画を立てることが重要です。
ここでは、代表的な3つのシチュエーションについてご紹介します。
メディア向け提案
メディアに向けて企画を提案する際には、ニュース性や新規性が求められます。
特に調査リリースや導入事例、プレスリリースはメディアが注目する内容を盛り込む必要があります。調査データを基にしたリリースは客観的な情報として信頼性が高く、ニュース性があるため、メディアに取り上げられやすくなります。
企画書にはメディアが興味を持ちやすい切り口や、明確なメリットを示すことが必要です。
社内外向けイベント
広報担当者は、社内外向けのイベントの企画も重要な仕事の一つです。
記者発表会や勉強会、社内総会、サンプリングイベント、さらにはプレスツアーなど、イベントの目的に応じて適切な企画を立てることが求められます。例えば、記者発表会では新製品の発表や新しい取り組みを伝える場として、メディアに強いインパクトを与える必要があります。
一方で、社内総会では従業員に対して経営陣のビジョンを伝えたり、企業の方向性を共有する場となるため、参加者の理解を深める内容が求められます。いずれも、企画段階で関係者との期待値を合わせ、効果的な内容と進行を計画することが重要です。
社内報
社内報は、従業員間のコミュニケーションを活性化させ、企業文化の共有やビジョンの浸透を図るための重要な広報ツールです。
社内報の企画には、従業員総会の報告や経営陣のインタビュー、さらには開発秘話など、会社全体の動きを伝える内容が含まれます。特に経営陣インタビューは、経営者の考えやビジョンを従業員に伝える重要な場であり、インタビューの内容を精査して効果的に伝えることが求められます。
開発秘話やプロジェクトの舞台裏を紹介することで、従業員のモチベーション向上にも繋がることにも繋がります。このような視点も含め、企画段階での工夫が重要です。
広報企画の4つのステップ
効果的な広報企画を成功させるためには、戦略的なステップが必要です。
以下の4つのステップを踏むことで、企業のメッセージを的確に伝え、メディアやターゲットに響く広報活動を行うことができます。
1目標設定、ターゲット設定
広報企画の第一歩は、明確な目標とターゲット設定です。
どの層に対してどのような成果を得たいのかを、ターゲットを最初に定めることで、企画全体の方向性が決まります。ターゲットは消費者、メディア、取引先など様々ですが、最も効果的にリーチできる層を絞ることで、メッセージの伝達がより強化されます。
また、目標は具体的かつ測定可能なものにすることで、効果の確認や次のステップへの活用が容易になります。
2メッセージの明確化、ストーリー性
次に、広報の核となるメッセージを明確にすることが重要です。
このメッセージは、ターゲットにとって魅力的であると同時に、ニュースバリューを持つものでなければなりません。ニュースバリューの高いストーリーを構築し、「なぜ今この企業が注目されるべきか」をしっかりと伝えることが、メディアやターゲットに響く企画の鍵となります。
3広報手段の選定
メッセージが決まったら、それをどの手段で発信するかを選定します。
プレスリリース、SNS、イベント、インフルエンサーを使ったプロモーションなど、多岐にわたる広報手段があります。ターゲットに最も適したメディアを選び、効果的にメッセージを届けることが成功への近道です。
例えば、若年層向けの企画であればSNSを中心に、ビジネス層には専門メディアやニュースサイトを活用するなど、柔軟な広報手段の選定が重要です。
4メディアリレーション
最後に、メディアリレーションが企画成功のカギを握ります。
メディアとの信頼関係を築き、継続的にコンタクトを取ることで、企画がニュースとして取り上げられる可能性が高まります。メディアは世間の注目を集めるような話題を求めているため、ステップ2で作成したニュースバリューやストーリーをうまく伝えることがポイントです。
PRの専門家である本田哲也@PRストラテジストさんは、自身のXでメディアについて以下のように述べています。
「メディアが興味あるのは、あなたの会社やプロダクトじゃない。そこから見える「世相」だ。だからとにもかくにも、こういう世の中だから我々の出番なんですという分脈を考えよ。」
https://x.com/hondatetsuya70/status/1843196941905330189
企画時点で立てたニュースバリューやストーリーがあってこそ、メディアの興味を引くことができると言えるでしょう。
広報企画のポイントと注意点
広報企画を成功させるためには、単に企画を立てるだけではなく、細かな運用と継続的な改善が必要です。最後に、効果的に広報を進めるための重要なポイントと注意点について解説します。
スケジュール管理
広報活動では、効果的なタイミングでメッセージを発信することが重要です。そのため、それを逆算して企画段階からスケジュールをしっかりと管理する必要があります。
特にメディア向けの広報では、世間の注目が高まる時期や競合の動きなどを考慮し、適切なタイミングでリリースを行う必要があります。また、スケジュールに遅れが生じた場合の対処法もあらかじめ準備しておくと、混乱を避けられます。
企画を立てたところで、社内で企画が通らなければ次に進むことはできません。それらの細かいスケジュールも前もって準備しておくことが大切です。
リスクマネジメント
広報企画を進める中で、予期せぬ問題やリスクが発生することもあります。そのため、リスクマネジメントは不可欠です。
たとえば、メディアの反応が予想に反してネガティブだった場合や、社内外でのトラブルが発生した際の対応策を事前に計画しておくことで、迅速かつ冷静に対応することが可能になります。
リスクを最小限に抑え、企画を安全に進めるための準備を徹底しましょう。
効果測定と改善
企画が完了した後は、必ず効果測定を行い、次のステップに繋げるための改善策を考えることが重要です。
KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)に基づいて、どの部分が成功し、どの部分に改善の余地があるのかを具体的に分析します。特に、メディア露出やSNSでの反応、消費者の行動などを綿密に測定し、今後の広報活動に反映させることが、長期的な成功をもたらします。
まとめ:広報スキルは幅広く必要
広報活動を成功させるためには、企画の段階から成功基準の明確化、リスク管理、そしてスケジュール管理が不可欠です。また、ステークホルダーとの認識の共有や、メディアリレーションの強化も、長期的な成功において重要な役割を果たします。
これらの広報スキルは一朝一夕で身につくものではなく、さまざまな経験や実践を通じて得られる知見があってこそ、効果的に進められるものです。
シェイプウィンでは、PRだけでなく、SNSやSEO対策など、広報活動全般に関する豊富な知識や経験を活かし、最新の情報を提供するメルマガを発信しています。プロの広報担当者から学びたい方は、ぜひメルマガ登録をして、実務に役立つ知見を取り入れてください。