デジタル分野の活用は日々拡大しています。特にBtoB向けのビジネスにおいては、購入の意思決定にあたり、必ずと言っていいほどオンライン上での事前調査を行っているのではないでしょうか。
その需要の高まりから、BtoBビジネスにおいてもデジタルマーケティングの重要性は高まっていますが、一方で自社でどのようにデジタルマーケティングを活用すべきか悩んでいる方も少なくありません。
そこで今回の記事では、BtoBビジネスにおけるデジタルマーケティング戦略を強化、構築するための具体的な施策や手法を解説します。
BtoBデジタルマーケティングの基本概念
BtoBデジタルマーケティングとは、企業間取引においてデジタル技術を活用し、効果的に顧客と接点を持ち、ビジネスを成長させるための戦略です。
従来の営業活動やマーケティング手法がデジタル化される中で、BtoB企業もデジタルマーケティングを活用することが求められています。
まずはじめに、BtoBビジネスにおいてデジタルマーケティングが重要な理由を解説していきます。
BtoBにデジタルマーケが重要な理由
BtoBにおいてデジタルマーケティングが欠かせない理由は、大幅な業務効率化に繋がること、そして高い費用対効果を得られる点にあります。
2022年にはデジタルマーケティング市場が2,828億円に達し、2023年にはさらに3,167億5,000万円に成長する(※)と予測されています。この数字からも、多くの企業がデジタル手法を採用し、アナログ手段に代わるマーケティング戦略として活用していることがわかります。
(※)株式会社矢野経済研究所の調査:https://www.yano.co.jp/market_reports/C65105200
BtoCマーケティングとの違い
BtoBとBtoCでは、ターゲット顧客の購買行動やマーケティング手法に大きな違いがあります。
BtoBは、BtoCに比べて大きな取引関係になることが多く、商品の購入決定にあたって複数名関わっていることがほとんどです。
これに対してBtoCは、個人消費者を対象としたマーケティングで、ほとんどの場合一人で意思決定を行うためBtoBに比べて意思決定までの時間が短いのが特徴です。
購入プロセスが異なるということは、マーケティング手法も異なります。BtoBは、複数名が関与していることから、多数が納得する論理的なアプローチが求められますが、BtoCの場合は個人に訴えかけるカスタマイズされたアプローチが重要になります。
Webマーケティング、コンテンツマーケとの違い
BtoB向けのデジタルマーケティングにおいて、Webマーケティングとコンテンツマーケティングはそれぞれ重要な施策で双方の違いを理解することが重要です。どちらもデジタルマーケティングの一部ですが、それぞれの役割や目的が異なります。
Webマーケティングは企業のオンラインプレゼンスを強化し、リードを獲得するための手法です。Webを通じて顧客を集め、販売やブランディングを促進を行います。
一方、コンテンツマーケティングは、価値のあるコンテンツを通じて顧客を引き付け、信頼関係を構築することを目的としています。
このように双方の目的は異なるため、BtoB向けのデジタルマーケティング施策において、顧客のカスタマージャーニーに合わせて適切な施策を使い分けることが重要です。
BtoB企業がデジタルマーケティングを進めるメリット
BtoB企業がデジタルマーケティングを導入することで得られるメリットは数多くあります。
特に、業務効率化や新規顧客開拓、競合との差別化などが挙げられます。次に、BtoB向けのデジタルマーケティングで得られる具体的な利点について詳しく見ていきましょう。
業務効率化
デジタルマーケティングを活用することで、BtoB企業は業務効率を大幅に向上させることができます。
従来のアナログ手法では、直接訪問やテレアポなどで顧客と接触機会を得るのが一般的でした。しかし、これらの手法は時間とコストがかかる上に、リーチできる顧客数にも限界があります。
一方、デジタルマーケティングを活用することで、少ないリソースでより多くの顧客にアプローチできるようになります。
例えば、メールマーケティングを活用して、顧客のステータスに合わせた自動メール配信や、ウェブ広告による顕在層の集客、さらにはBtoB向けのウェビナー後の個別相談会の実施といった手法が挙げられます。
これらのデジタルな手法を組み合わせることで、商談数を効率的に増やすことが可能です。デジタルマーケティングをうまく活用することで、営業チームの負担を軽減しながら、より多くのビジネスチャンスを創出することができます。
ターゲットを絞った新規顧客開拓
BtoB企業にとって新規顧客開拓は非常に重要ですが、その効果を最大化するためには、ターゲットを絞ったアプローチが不可欠です。
デジタルマーケティングでは、データベースなどから顧客の課題や興味を詳細に取得し、それに基づいて個別にカスタマイズした情報を提供することができます。
例えば、特定の顧客に対しては、その企業の業界特有の課題に応じたソリューションを提案するページを表示したり、興味を引くコンテンツを提供することで、より効果的にアプローチできます。
顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供することで、ターゲット層とのエンゲージメントを高め、高い成果を得ることができます。
競合との差別化につながる
デジタル技術を活用して、他社が提供できない独自の価値を顧客に伝えることができるため、ブランドの認知度を高め、競争優位を築くことが可能です。その結果、競合との差別化につながるでしょう。
例えば、顧客のニーズに合わせたコンテンツを提供したり、リードナーチャリングを通じて顧客との関係を深めることで、他社との差別化を図ることができます。これにより、競争の激しい市場においても、確固たる地位を築くことができるのです。
ステップ別!BtoBで顧客を獲得するデジタルマーケティング手法
次に、実際にどのようにデジタルマーケティングを活用するのか、リードジェネレーションからリードナーチャリングまでの具体的な手法とその連携方法について解説します。
①リードジェネレーションの獲得
リードジェネレーション(lead generation)とは、見込み顧客を獲得するための最初のステップです。まずは顧客が興味を持つ、ユーザーが価値を感じるコンテンツを準備し興味を持ってもらいます。
ポイントは、SEO、Web広告、SNS、デジタルPRなどのコンテンツを準備し、それぞれの手法の特徴を押さえて効果的に組み合わせることです。
例えば、SEOでターゲットとなるキーワードを最適化し、Web広告で特定の業界にアプローチすることができます。さらに、SNSでの発信やデジタルPR(プレスリリース)を通じて、より広範な認知を獲得します。
また、IT業界であればTechTarget、製造業であればiprosなど、専門のリードジェネレーションメディアを活用することで、よりターゲットに合ったリードを効率的に集めることが可能です。これらの手法を連携させ、制作したコンテンツを使い回しながら一貫したメッセージを伝えることで、リードを獲得します。
SEOコンテンツ
• ターゲット業界に特化したキーワードリサーチ
• 業界別のSEOブログ記事(例:IT業界の最新トレンド解説)
• ホワイトペーパーやeBookのダウンロードページ
Web広告
• 業界別ターゲティング広告(例:製造業向けのリード獲得広告)
• リターゲティング広告
• 特定の製品やサービスに焦点を当てたランディングページ
SNS
• 業界別のニュースやトレンドを紹介するSNS投稿
• ウェビナーやオンラインイベントのプロモーションビデオ
• 見込み顧客向けのターゲット広告(例:Instagram広告、facebook広告)
PR
• 新製品発表や記者会見等企業のニュースをまとめたプレスリリース
• メディアキットやニュースレターの配信
②リードナーチャリングにつなげる
リードジェネレーションで獲得した見込み顧客は、すぐに購買に結びつくわけではありません。次に、獲得した見込み客を購入につなげるためのリードナーチャリングが必要です。
リードナーチャリング(Lead Nurturing)とは、文字通りリード(lead)を育成(nurturing)するという意味で、見込み顧客との関係を深め、購買意欲を高めるための施策を行います。
フィールドセールスやインサイドセールスでパイプラインが進まない場合は、もう一度ナーチャリングに戻し、顧客の関心を再び引きつけると良いでしょう。
具体的な手法としては、メールマーケティングやウェビナーなどが挙げられます。メールマーケティングでは、パーソナライズされたコンテンツを定期的に送信し、顧客との接点を維持します。また、ウェビナーを開催し、顧客が直面する課題に対する解決策を提供することで、信頼関係を構築します。
メールマーケティング
• パーソナライズされた定期的なメルマガ配信(例:業界トレンドや製品アップデート)
• 顧客行動に基づいた自動化メールシナリオ(例:特定のホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーへのフォローアップ)
• 見込み顧客に向けた限定オファーや特典情報の配信
ウェビナー
• 業界専門家との対談形式のウェビナー(例:最新の技術トレンドやビジネス戦略を解説)
• 過去のウェビナーを再利用したオンデマンドコンテンツ(例:登録後に視聴可能なウェビナー録画)
• ウェビナー終了後の個別相談会の案内やフォローアップメール
コンテンツライブラリの提供
• 過去のホワイトペーパー、ケーススタディ、ウェビナー録画を一元管理するリソースセンター
• 業界別の成功事例集や顧客インタビュー記事のアーカイブ
• 新規コンテンツが追加された際のアラートやメール通知
③営業・セールスパーソンとの連携
最終的に、顧客をインサイドセールスに引き継ぎます。リードジェネレーションの段階で引き継ぐのではなく、しっかりとリードナーチャリングで関係性を構築してから営業部に引き継ぐことが重要です。
仮に引き継ぎを行なってから顧客の反応が悪かったり、営業の効果がいまいちだった場合は、もう一度リードナーチャリングの段階にフレーズを戻し、デジタルマーケティング手法でアプローチする必要があります。顧客のカスタマージャーニーに合わせて、適切な手法を取ることが重要です。
インサイドセールス支援コンテンツ
• ナーチャリングされたリードに対する詳細な製品ガイドや導入事例資料の提供
• インサイドセールスが使用するスクリプトやFAQリスト
• 顧客の興味を引き出すための個別メールテンプレートや提案書サンプル
BtoBデジタルマーケティングでよくある失敗と注意点
BtoBデジタルマーケティングは、多くの企業にとって効果的な手法ですが、適切に運用しなければ、思わぬ失敗を招くこともあります。そのため、施策を開始する前に事前に注意点を押さえ対策をとっておくことが重要です。
次に、BtoBデジタルマーケティングでよくある失敗と注意点について解説します。
KPIを明確にしていない
BtoBデジタルマーケティングにおいて、KPI(重要業績評価指標)を明確に設定していないことは、よくある失敗の一つです。
なんとなくデジタルマーケティングに取り組んでいても、施策の効果を測定することが難しく、改善の方向性も定まりません。デジタルマーケティングの手法は広範囲に渡るため、人件費が嵩んでしまうでしょう。
KPIを設定する際には、以下のような指標を参考にしてみてください。
1.獲得客数の算出
•目標売上 ÷ 客単価 = 獲得客数
例: 目標売上が1,000万円で、客単価が100万円の場合
獲得客数 = 1,000万円 ÷ 100万円 = 10人
2.商談件数の算出
•獲得客数 ÷ 営業獲得率 = 商談件数
例: 獲得客数が10人で、営業獲得率が20%の場合
商談件数 = 10人 ÷ 20% = 50件
3.リード数の算出
•ホットリード ÷ ナーチャリング率 = リード数
例: ホットリードが30件で、ナーチャリング率が10%の場合
リード数 = 30件 ÷ 10% = 300件
4.リードを獲得するためのインプレッション数の算出
•リード ÷ CV率 = インプレッション数
例: リード数が300件で、CV率が5%の場合
インプレッション数 = 300件 ÷ 5% = 6,000
ブランディングとデジタルマーケティングを混合させない
BtoBデジタルマーケティングにおいて、目的をブランディングと混同させてしまうこともよくある失敗の一つです。
デジタルマーケティングの主な目的がリード獲得である場合、その効果測定は明確である必要があります。例えば、顧客獲得を目指してコストをかけたにもかかわらず、結果的にコンバージョンが得られなかった場合、「ブランディングにつながった」と目的をすり替えるのは避けるべきです。
デジタルマーケティングの効果測定は、インプレッションやクリック数、リード獲得数といった具体的な数値で目に見える形で行う必要があります。
ブランディングは別の施策として位置づけ、デジタルマーケティングの成果は明確に数値化されたKPIに基づいて評価することが重要です。
BtoBデジタルマーケティング成功するポイント
最後に、BtoB向けのデジタルマーケティングで一歩先をいくためのポイントとコツを紹介します。
多くの企業がデジタルマーケティングの施策に取り組む中で、コツを押さえて他者との差別化を図ることが非常に重要です。
自社の強みを整理する
BtoBデジタルマーケティングを成功させるためには、まず自社の強みを明確に整理することが重要です。
自社の製品やサービスが他社と比べてどのように優れているのか、またどの市場で最も競争力があるのかを把握することで、ターゲットに対して的確なメッセージを発信できます。この部分を怠ってしまうと、マーケティングの軸がぶれてしまい、見込み顧客に対して適切な訴求ができなくなる可能性があります。
具体的には、SWOT分析やポジショニング分析などを活用して、自社の立ち位置を客観的に評価します。
•SWOT分析:
まず、自社の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を明確にし、外部環境の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を特定します。これにより、自社がどのような点で競争優位を持ち、どの分野で改善が必要かを整理することができます。
•ポジショニング分析:
市場における自社の位置づけを確認するために、競合他社との比較を行います。例えば、自社がどのような特徴や価値を持つのか、競合他社とどのように差別化されているかを明確にします。
社内の体制作りを事前に行う
デジタルマーケティングは一度きりの施策ではなく、継続して取り組むことが重要です。
そのためには、事前に持続可能な体制を構築することが重要となります。チーム内で役割を明確にし、定期的な分析や改善を行うプロセスを整えることで、マーケティング活動を継続的に最適化できます。
しかし、デジタルマーケティングの手法は多岐に渡りますので、社内で全ての業務を継続して行うハードルが高いことも事実です。そのため、初めからデジタルマーケティンに詳しい会社に業務を依頼をして費用対効果高く施策に取り組むことも一つの手段です。
営業との連携を強化する
BtoBデジタルマーケティング施策を通じて商品を売るためには、マーケティングと営業の連携が欠かせません。
両部門が緊密に協力することで、デジタルマーケティンを通じて獲得したリードを適切な対明技で営業に引き継ぐことができ、成約率を飛躍的に高めることができます。
顧客のカスタマージャーニーに合わせて適切なデジタルマーケティングの手法が行えるよう、マーケティング部門と営業部門の連携を強化しておきましょう。
まとめ:チャネルを理解したマーケティングが鍵
BtoBデジタルマーケティングは、多岐にわたる手法と戦略を駆使する必要がありますが、戦略方法を適切に理解し継続的に取り組むことで、飛躍的な効果を得ることができます。
しかし一方で、各手法の理解が浅かったりうまく連携ができていなかった場合、多岐に渡る施策に時間と費用をかけたにも関わらず、思うような効果を得られない場合があります。
そのような失敗を避けるために、デジタルマーケティングの各チャネルを適切に理解し継続的に施策に取り組むことが重要ですが、実際にコア業務を行いながら自社で全てを対応することもハードルが高いので、マーケティングに詳しいパートナーに依頼することも良い手段です。
一見費用がかかるようにも思えますが、結果として社内でコア業務に時間を割くことができるようになり、費用対効果高く結果を得ることができます。
シェイプウィンでは、国内・海外のスタートアップ、中堅企業や官公庁など多様な企業課題をパブリックリレーションズ戦略をベースに、PR・SNS・SEOの3つのチャネルを融合したデジタルマーケティング戦略を提供しています。無料相談も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。