国を超えて企業が海外進出をすることは難しいように感じますが、一方でユニクロやダイソー、任天堂など、数多くの日本企業が海外で成功を納めています。
これらの企業が成功している理由は、単に製品の品質が高いからだけでなく、それぞれのブランドが独自の「見せ方」を通じて、消費者との強い繋がりを築いているからです。
このようにブランディングは、企業がグローバル市場での地位を確立し、維持するために不可欠な戦略と言えるでしょう。
そこで今回の記事では、カナダに支社を持つシェイプウィンの視点から、日本から海外進出を行う企業が行うべきブランディング戦略について紹介します。海外むけにどのようなブランディングが有効的なのか、日本と海外の違いを踏まえながら、マーケティング戦略とも組み合わせ解説します。
※本記事では、北米圏(アメリカ、カナダ)に特化して解説します。
海外向けブランディングを始める前に知っておきたいこと
ブランドがどのように認識され、価値を見出されるかは、その後の市場拡大に直接影響を与えます。
そのため、海外進出を検討している企業にとって、戦略的なブランディングは避けて通れない道です。ここでは、海外でのブランド構築における基本的なアプローチと、マーケティングとの関係性についても紹介します。
ブランディングとは
ブランディングは、顧客が自社の商品やサービスに対して持つイメージや感情を形成するための戦略です。
効果的なブランディングは、企業のロゴやスローガンを作るだけではなく、企業が顧客の生活にどのように溶け込むか、また市場内でどのように差別化されるかまで考えます。そしてその際は、明確なブランドメッセージの伝達と一貫性の維持が求められます。
ブランディング | 説明 | 効果 |
価値 | 企業独自の価値や顧客の課題をどう解決するかを伝える | 顧客がそのブランドを選ぶ理由を明確にし、顧客の忠誠心を高める |
アイデンティティ | ブランドを象徴する視覚的要素(ロゴ、色、フォント) | 顧客が一目でブランドを識別でき、ブランドが記憶に残りやすくする |
文化 | ブランドメッセージを文化や価値観に合わせて発信する | ターゲットとなるマーケットや顧客に合わせて適切にアピールし、受容度を高める |
一貫性 | 全て一貫したメッセージを発信する | ブランドの信頼性を強化し、顧客との関係を深める |
差別化 | 競合と区別できる独自性や価値を提供 | マーケットでのポジショニングを確立し、新規顧客の獲得を促進する |
海外進出におけるブランド戦略の現状
特に海外市場をターゲットにしたブランディングにおいては、海外から日本や自社が「どう見られているか」というということを考えることが重要です。
国際市場では、文化的違いや消費者の行動パターンが多岐にわたるため、日本国内向けの戦略をそのまま適用することはできません。海外進出においては、ブランドがどのように受け止められ、どのように価値を認識されるかを意識してブランディング戦略を立てることが重要となります。
このため、各地域の文化を理解し、それに適応したメッセージングを通じてブランドアイデンティティを確立することが不可欠です。海外展開に成功している企業は、グローバルな視点とローカルな洞察を融合させることで、地域ごとの消費者に響くブランド体験を提供しています。
マーケティング4.0の到来
ブランディングとマーケティングには深い関係性があります。
「マーケティング3.0」が主流だった当時、企業は単に商品を売るのではなく、消費者の心理的な満足や社会への貢献を通じて価値を提供することが重要とされました。そのため、マーケティング戦略においても、ブランドは消費者との深い感情的なつながりを築くことで共感を呼び、長期的な忠誠心を育てる重要なものと認識されました。
その後デジタル化が進む現代において、マーケティング4.0として、オンラインとオフラインの境界を越えた顧客体験の提供に焦点を当てています。現代では、ソーシャルメディアや各種デジタルプラットフォームを駆使して、顧客との直接的なエンゲージメントを強化します。
こうしたプラットフォームでは、友人、家族、ファン、フォロワーといった社会的つながり—が消費者の意思決定に大きな影響を及ぼし、ブランドの認知度や信頼性の向上に寄与しています。
海外進出でブランド戦略が必要な理由
海外市場への進出は、企業にとって大きなチャンスですが、同時に多くの課題も伴います。
特にブランド戦略は、海外市場での成功を左右する重要な要素です。異文化の中で自社の価値を適切に伝え、認知度を高めるためには、戦略的かつ慎重なアプローチが求められます。
ここでは、なぜ海外進出に際してブランド戦略が不可欠なのか、その理由を解説します。
現地での認知度を高める
日本国内である程度知名度を誇るブランドであっても、海外市場ではその知名度はほとんど意味をなしません。これは、文化的背景や市場のニーズが異なるためです。
そのため海外進出を検討している企業は、海外の消費者に合わせた独自のブランディング戦略を策定し直し、ターゲット市場に適切にアプローチすることが不可欠です。
リピート顧客を獲得しやすくなる
効果的なブランディングは単に認知度を高めること以上の効果をもたらします。
ブランドイメージを消費者に浸透させることで、ブランドへのロイヤリティや信頼を構築できます。この深い繋がりが形成されると、リピート顧客を獲得しやすくなり、顧客基盤が安定します。
販売促進コストを小さくできる
継続的にブランドを構築することは、消費者との信頼関係を築き上げる上で非常に重要です。
しっかりとしたブランドイメージが確立されている場合、消費者はブランドに対して安心感を持ち、新しい市場であっても製品やサービスに対する信頼感が増します。
このブランドイメージは、販売促進の効率を大幅に高めることができるため、マーケティングや広告にかかるコストを抑えることに繋がります。ブランドが強いと、新規顧客の獲得だけでなく、リピーターの創出にも効果的で、長期的に見て経済的な利益をもたらします。
海外と日本でサービスの捉え方が違う
国によってサービスの捉え方や価値観は大きく異なるため、価値観の違いを理解しないままマーケティング戦略を展開すると失敗に繋がります。
以下は、海外と日本でサービスがどのように異なって捉えられがちかを示します:
分類 | 西洋 | 日本 |
顧客の期待 | 積極的かつ個人的なカスタマーサービスが好まれる | 控えめで礼儀正しい接客が期待される |
品質と価値観 | 持続可能性やエコフレンドリーな製品が評価される | 高い技術力や精密な工程が評価される |
価格設定 | 地域によって価格感覚が異なり、価格戦略を調整が必要 | 同様に市場ごとの価格戦略が重要 |
プロモーション手法 | 直接的な販売手法が好まれる | 過度なセールスピッチを嫌う |
これらの違いを踏まえ、各国の文化や消費者行動を深く理解した上でブランド戦略を策定することが、グローバル市場で成功する鍵です。
海外から日本はどう見られてる?ブランド認知を促す前に知っておきたいこと
海外市場への進出を成功させるには、まず自社がどのように外国で認識されているかを把握することが重要です。
なぜなら、国内での成功がそのまま海外で通用するわけではないため、異文化や市場環境に適応することが重要だからです。ここから、そのようなブランド戦略を展開する際の必要性について詳しく解説します。
※以下は、株式会社 BIOTOPEの調査結果をもとに作成しています
Japan Brand Image Research
日本のブランディング力:日本の国家ブランド指数は1位
日本は国家ブランド指数で世界1位を誇ります。(※)この評価は、日本の文化、技術、イノベーションが全世界から高く評価されていることを示しています。
日本の製品やサービスに対する信頼性、独自の文化的魅力、そして持続可能な開発へのコミットメントが、ブランド力を支える重要な要素です。これは、国際ビジネスや観光分野で日本が有利に立つ要因となっています。
海外の興味分野が多様化・深化:日本のイメージはより解像度の高く多様に
日本に対する海外からの興味は、伝統的な文化から最先端のテクノロジーまで非常に多様化しています。
特に、アニメ、食文化、技術革新といった分野では特に、日本の独自性と革新性が国際社会に高く評価されており、それぞれの分野での深い理解と関心が見られます。これらの興味の深化は、日本の文化的および経済的な影響力をさらに拡大し、グローバルな交流と協力の新たな機会を生み出しています。
海外からの日本の見られ方:ポジティブ面とネガティブ面
海外から見た日本は多くのポジティブなイメージを持っていますが、一部にはネガティブな側面も存在します。
ポジティブな面としては、技術革新、品質の高さ、文化的豊かさが挙げられます。一方で、働き方の問題やジェンダー不平等、過剰な包装といった社会問題も指摘されています。
これらの認識も、自社のブランディングを行う上で注意すべき項目と言えるでしょう。
海外が感じる日本ブランドの価値4つ:どうやってファンになる?
日本ブランドの国際的な魅力は、四つの主要な価値に分類されます。
これには革新性、信頼性、文化的独自性、持続可能性が含まれ、これらの要素は、海外の消費者やビジネスパートナーが日本のファンになるプロセスを促進します。具体的には、日本の文化や製品に触れることで、徐々にその魅力に引き込まれ、深い関心やロイヤルティを持つようになります。
日本ブランドを拡大する方法
日本のブランドを国際的に拡大するためには、マーケティング戦略の展開、海外市場でのパートナーシップの構築、そしてローカル化戦略を含めた多角的な取り組みが含まれます。
特にデジタルメディアの利用を積極的に行い、グローバルな視聴者に向けて日本の魅力を効果的に伝えることが、ブランド拡大の鍵となります。
海外進出する際のブランディング方法
海外市場への進出を成功させるためには、効果的なブランディング戦略が不可欠です。
文化的な違いを理解し、ターゲット市場に響くブランディングを行うことで、製品やサービスの受け入れが大幅に向上します。
1. ターゲット顧客を決め、調査する
ターゲット市場の理解はブランディング成功の鍵です。
どのような製品が好まれるのか、競合はどのような企業か、人口構造や消費行動を深く理解することが重要です。市場の基本情報を得るためには、インターネットを利用したデスクリサーチが最も手軽で効率的な方法です。初期段階での十分な情報収集が、後に行う戦略立案の方向性を明確にします。
2. 自社の強みを再認識する
自社のブランディングを進める上で、競合との差別化をどのように打ち出すかが重要になります。
自社の製品やサービスが持つ独自の強みを明確にし、それがどのようにターゲット市場のニーズに応えるかを検討します。3C(Company, Competitor, Customer)分析や、PEST(Political, Economic, Social, Technological)分析を用いて、これらの要素を詳細に調査し、戦略を立てましょう。
自社の強みを活かしたブランディングは、消費者の信頼を得て市場での地位を確立するために不可欠です。
3. ブランドアイデンティティを可視化する
ブランドのアイデンティティを明確にし、それを視覚的に表現することで、消費者に対して一貫したメッセージを伝えることができます。
ロゴ、スローガン、使用色、タイポグラフィなどを通じてブランドの個性を表現し、消費者に強い印象を残すことが目標です。これにより、ブランドの認知度が向上し、製品やサービスの特性を効果的に伝えることが可能になります。
4. ブランドアイデンティティを伝えるメディアの選定を行う
最適なメディアを選定し、ブランドアイデンティティを効果的に市場に伝えることが重要です。
デジタルメディア、ソーシャルメディア、伝統的な広告媒体など、ターゲット市場の特性や消費者のメディア利用傾向に基づいて選ぶ必要があります。この段階では、選定したメディアがブランドのアイデンティティを正確に伝えることができるかを考慮し、戦略的な広告キャンペーンを計画します。
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海外向けブランディングが難しい理由
海外市場におけるブランディングは、容易とは言えません。そのため、文化的違いから法規制まで、これらの課題を理解し適切に対応することが重要です。
次に、海外向けのブランディングを行う際に気をつけるべきことを解説します。
ターゲットが日本好きとは限らない
海外においては、日本文化に興味を持つ消費者が一定数存在しますが、全体の中では少数派です。
例えば、アニメ文化に興味があるターゲット層にアニメの関連グッズを売ることとはハードルが低いですが、そもそもアニメ文化だけではなく日本に興味を持っていないターゲットに商品を得ることはハードルが高いと言えます。
このため、例えば自社のサービスがどの層になるのか、まずは市場調査とターゲット選定を慎重に行い、アプローチ方法を戦略立てることが重要です。
見込み顧客を獲得するのが難しい
言語の壁や文化的な違いから、海外市場で見込み顧客を獲得することは容易ではないと言えます。
例えば、日本の広告内容をそのまま直訳すると英語では意味やニュアンスが変わることがあり、文化的な誤解を招く原因となります。効果的な対策としては、現地に詳しい企業やネイティブなどと連携しローカライズされたコンテンツを作成し、現地のSEO対策を強化することなどがあげれらます。
法律の違い
国によって異なる法規制に適応することは、海外進出における大きな障壁です。
特にデータ保護法や広告規制は地域によって大きく異なり、適切な法的アドバイスなしにはリスクを伴います。例として、アメリカでは、広告に関する規制が州によって異なる可能性があり(※)、カリフォルニア州では消費者プライバシー法(CCPA)がデータ保護の規範として設定されています。
カナダでは、より広範な連邦データ保護法(PIPEDA)が適用されます。これらの法律を遵守しないと、企業は重い罰金や訴訟のリスクに直面することがあります。
流通/関税の違い
国際物流における関税の理解は、コスト計算と価格設定に直接影響を及ぼします。
予期せぬ関税負担が製品価格に影響を与え、消費者の購買意欲を減少させることがあります。従って、事前の関税計算とその戦略への組み入れが必要です。
文化ギャップ
異文化間のギャップは、企業がメッセージを届ける際に誤解を生む主な原因です。
文化的な価値観やタブーの誤解はブランドのイメージを大きく損ねることがあります。ターゲット市場の文化を理解し、尊重することで、ブランドの信頼性を構築し、効果的なコミュニケーションが可能となります。
海外ブランディングを成功させるためのコツ
海外市場でのブランディング成功は、戦略的かつ創造的なアプローチが必要です。
具体的には、自社のユニークな価値を効果的に伝えることが含まれ、ターゲット市場に適応した独自の戦略を展開することが求められます。
自社の強みが唯一無二であることをストーリー立てて伝える
ブランディング戦略では、自社の製品やサービスがどのように市場に革新をもたらしているかを明確にすることです。
例えば、日本企業のダイソーが北米市場で成功を収めているのは、低価格ながらも高品質でユニークな日本製品を提供するという明確なブランドイメージによるものと言えます。
海外向けのPRを行う
効果的な海外PRは、ターゲット市場の文化や価値観を尊重しながら、自社のブランドを正しく伝えることが鍵となります。
プレスリリースやメディアアプローチに加えて、地元のイベントやコミュニティへの参加を通じて、ブランドへの信頼と関与を深めることができます。
海外向けSNSマーケティングを行う
海外向けのSNSマーケティングを行うことは国際的な視聴者にリーチするために必須です。
現地の言語と文化を理解した上で、エンゲージメントを生み出すコンテンツを作成することが求められます。各国の人気SNSプラットフォームを活用し、地元のインフルエンサーとの協業を通じてブランドのメッセージを広めることが効果的です。
海外向けのWEBマーケティングを行う
ウェブサイトの制作など、海外向けのWEBマーケティングを行うことは、グローバルな顧客がブランドに接触する主要な窓口の一つです。
SEO対策を施し、多言語に対応することで、様々な国の顧客がアクセスしやすいオンラインプラットフォームを構築することが重要です。また、ターゲット市場のオンライン行動を分析し、適切なデジタル広告戦略を立てることで効率的に顧客を引き寄せることが可能です。
現地に強いPR会社と協力する
現地の市場環境や消費者に精通したPR会社との協力は、一つの有効的な手段です。
もちろん費用はかかりますが、これらの項目を全て対応することは、企業にとっても大きな負担になるでしょう。その点を考慮すると、海外進出に詳しいPR会社は、文化的ニュアンスを把握し、ブランドメッセージが現地の顧客に適切に伝えることができます。
よくある質問
ブランディングで有名な企業は?
ブランディングで世界的に有名な企業には、アップル、コカ・コーラ、グーグル、ナイキなどが挙げられます。
これらの企業は、一貫したブランドイメージと顧客体験を提供し続けることで、強力なブランド認知と顧客ロイヤルティを築いています。
ブランディングを日本語で何といいますか?
ブランディングは日本語で「ブランド戦略」とも表現されます。これは、企業が自身の製品やサービスの独自のイメージや価値を顧客に認識させるための一連の戦略や活動を指します。
ブランディングをしないとどうなる?
企業がブランディングを行わなかった場合、企業は市場での差別化を失い、顧客に対して一貫性や信頼性を示すことが難しくなります。
これにより、競争が激しい市場において顧客の注意を引くことが困難になり、最終的には売上や利益の減少につながる可能性があります。ブランディングは、企業がその価値提案を明確にし、競合他社と区別するための重要な手段です。
まとめ:「見せ方」次第で海外進出の結果は大きく変わる
海外進出に際しては、ただ製品やサービスを提供するだけではなく、どのように自社を見せるかというブランディングが極めて重要です。
しかし、異文化の中で独自のブランド価値を確立し、共感を生み出すことは容易ではありません。
カナダ・バンクーバーに支店を持つシェイプウィンでは、このような課題を解決するために、ネイティブスピーカーと連携しながら、企業の海外進出をPR・SEO・マーケティングをワンストップでサポートしています。
まずは自社が海外向けにどのようなストーリーを発信したいのか、目的から戦略を立てることが重要です。無料相談も行っておりますので、まずは相談からお気軽にお問合せください。