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北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

2019年以降、カナダのトロント市では世界最大のマーケティングとテクノロジーのカンファレンスの一つであるCollisionを毎年6月に開催しており、世界中のテック創業者、起業家、イノベーターなどが集まります。

トロント出身の筆者がCollisionに参加するにあたって、北米でのネットワーキングとコミュニケーションのやり方についてまとめてみました。北米ではTechCrunchが主催するDisruptから音楽祭が大型テックイベントとして進化したSXSW(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト)まで、各種の大きな展示会やカンファレンスが毎年開催されており、ネットワーキングの機会が多くあります。

人脈作りがより形式化されている日本と比べると北米の人脈作りであるネットワーキングは北米圏外の人にとって、未知の世界のように感じられるかもしれません。イギリスやニュージーランドなど他の英語圏の国の同僚でさえ、北米のやり方をやや熱狂的で慌ただしいと感じることさえあります。

この記事では、まず北米でのネットワーキングに苦労する理由をいくつか挙げ、その後、北米でネットワーキングがどのように行われているかを解説します。

関連記事:
【原文】From Collision to SXSW: How to network in North American events
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文化的コミュニケーションの理解

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

北米でのネットワーキングではどのような点について難しさや苦労があるでしょうか? 日本人が北米のビジネスパーソンと効果的なネットワーキングやコラボレーションを行うためには、コミュニケーションの違いを理解することが不可欠です。

日本と北米では文化的なギャップが非常に大きく、そのギャップを埋めるのは難しいものです。そのため、異なる文化的背景を持つ人々とコミュニケーションや、人脈を築く際にはグローバルな視点、考え方を取り入れることが重要です。

文化人類学者のエドワード・ホール(Edward Hall)は、文化的コミュニケーション・スペクトラムを考案し、それを使って各文化のコミュニケーション・スタイルを分類しました。

例えば、日本、中国、韓国など多くの東アジア諸国はハイコンテクスト文化です。これらの文化は、共通認識や文化的背景、知識、カルチャーを前提として会話が進むのも特徴です。

つまり、ハイコンテクスト文化圏では、物事を断言したり直接的に説明したりすることは少なく、凝った表現も用いられず、抽象的な言い方が多用されます。ハイコンテクストでは言葉の意味をはっきりと明示せず、説明なしでも察し合うことを前提としているのが基本です。

このコミュニケーション方法は、同じ文化圏内では効率が良く便利です。しかしハイコンテクストを日常的に使う日本人は、物事をはっきりと言わないことが多いため、グローバルなコミュニケーションの場で正確に伝えられないという苦労をすることがよくあります。

ハイコンテクスト文化のコミュニケーション方法は、すべてが直接述べられ、解釈の余地がほとんどないローコンテクスト文化とは対照的です。特に、ドイツ、オランダ、多くの中央ヨーロッパの国々はローコンテクスト文化の良い例です。

カナダとアメリカもローコンテクスト文化と見なされますが、フォーマルなスピーチやビジネススピーチではいくつかのコンテクストが必要な場合があります。これらの文化的規範を理解することは、北米でのネットワーキングを学ぶ上で不可欠です。

北米でのネットワーキングの方法

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

ここまでで日本と北米間のコミュニケーションスタイルの違いを説明してきました。ネットワーキングイベントをより効果的にするためには、北米の文化的規範を理解することも重要になります。

北米でのネットワーキングの作法を学ぶことは、文化的規範がより定義されている高コンテクスト文化にとってはやや無意味のように見えるかもしれません。以下に、ネットワーキング時に行われる主なポイントについて解説していきます。

握手: 

日本ではお辞儀が一般的ですが、北米ではまず最初に握手をして、信頼と対等性に確立します。

自己紹介とエレベーターピッチ: 

自己紹介時には、自分が誰であるか、どの会社に所属しているか、そしてその会社での役割を簡潔に述べることが期待されます。さらに詳しく尋ねられた場合は、会社での役割や会社の事業内容を簡潔に説明するエレベーターピッチを用意しておくと良いでしょう。

エレベーターピッチとは、30秒ほどのエレベーターに乗ってから降りるまでの短い時間で自分自身や自社のビジネスなどについてプレゼンする手法のことで、アメリカのシリコンバレーが発祥とされます。

人脈作りが得意な人は、自己紹介、エレベーターピッチ、そして予測しやすい一般的な質問の準備をしています。

スモールトーク:

 初対面の人と会う際、直接ビジネスに入る前に少しスモールトーク(雑談や世間話)を交わすのが一般的です。天気、映画、スポーツなどの一般的なスモールトークの話題は、会話を延ばし、ビジネスに入る前に相手との信頼関係を築くのに役立ちます。スモールトークの質問や、一般的な話題に対する回答を練習しておくと良いでしょう。

相づち: 

スモールトークや深い話題について話しているとき、黙っているだけではなく、質問や発言で応答することが必要です。特に日本人は最後まで聞くのがマナーですが、相手の話の途中でもどんどん質問や言葉での相づちをすることで、相手に関心を持っていることを示すことができます。

フォローアップ: 

会話が終わりに近づいたとき、会話相手とフォローアップするためのさまざまな方法を用意しておきましょう。日本文化と同様に、名刺を用意することが重要でです。注意したいのは、名刺交換は最初ではなく最後であることです。昨今では、TwitterやLinkedInなどのSNSでつながるというのも一般的です。準備をしておきましょう。カンファレンスの後、感謝のメールを送ることも重要で、関係を深めるのに役立ちます。

ネットワーキングの準備方法

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

どんなカンファレンスでも、成功し生産的な経験を得るためには事前の計画が不可欠です。事前に準備することで、重要なセッションの特定、ネットワーキングの機会を優先し、達成したい目標を明確にすることができます。

まず、「このカンファレンスから何を得たいのか?」や「このカンファレンスで何を見たいのか?」といった質問を自分に問いかけてみましょう。事前に計画を立てることで、カンファレンスの経験を最大限に活用できるようになります。

カンファレンスでの主要なスピーカー、パネル、ワークショップ、参加企業など、重要な詳細を調査してください。アジェンダに精通することで、良い質問を考え、ネットワーキングしたい人々との興味深い対話をするのに役立ちます。

さらに、カンファレンスに向けて、道具を準備することも重要です。名刺を用意するだけでなく、自己紹介やエレベーターピッチの練習も行いましょう。また、一般的な質問への迅速な回答を覚えておくことや、メモを取るためのペンとノートを持参することもおすすめです。

ここで、ネットワーキング中によく聞かれる一般的な導入質問の例をいくつか紹介します。

  • What brings you here (to the conference)?  
    このカンファレンスに来た目的は何ですか?
  • What do you think about _____ (topic)?  
    (トピック)についてどう思いますか?
  • Is this your first time here (at the conference)? 
    ここ(カンファレンス)に来るのは初めてですか?
  • Which sessions are you most interested in (attending)?
    どのセッションに最も興味があり
  • How did you get started in your industry? 
    この業界に入ったきっかけは何ですか?

上記で挙げたような準備を行うことで、英語でのネットワーキングでも緊張せずに、より良い人脈作りができるでしょう。

関連記事:欧米人に伝わるスピーチ準備

ネットワーキングで成功するためのヒント

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

ネットワーキングの課題の一つは、味気ないコミュニケーションになってしまうことです。短い表面的な交流が一般的な環境で、深いつながりを築くのは難しいかもしれません。しかし、ネットワーキングはビジネスの人脈作りのためのイベントです。正しいアプローチを取れば、誰もが時間を最大限に活用しようとしている環境でも、意味のある関係を築くことが可能になります。

最初のアドバイスは、あなた自身の価値について自問することです。つまり、他の人々が持っていなく、あなたが持ち込むことのできる面は何かということです。会社の価値ではなくあなたの価値です。自分が得られるものを探すのではなく、相手に価値を提供しようとすることで、ユニークな視点を示しながら存在感を出すことができます。

特定のテーマに関して最も知識がある必要はありません。学ぶためにそこにいることと、同じくらい相手に価値を提供するためということを忘れないでください。重要なのは会話に対して純粋に興味を持ち楽しむことです。

これが次のアドバイスにつながります。相手の話に耳を傾けることです。コミュニケーションはキャッチボールであり、一方的な独白ではありません。

一人の人間が時間をシェアすることなくずっと話していると、聞いている方も疲れてしまいます。さらに、他の人の話を聞くことには他にもメリットがあります。他の人の話を聞くことは、馴染みのないテーマに関する貴重な洞察を得ることができるし、脳が精神的に回復する時間も得ることができます。

前述したように、意味のある返事をすることも人脈作りの貴重な要素であり、その場にいる他の人の話を本当に聞いていることを示します。心から興味を持っていることを示す返答や質問をすることで、その話題に対する理解も、人脈を広げている相手とのつながりも深まります。

相手とのつながりを深める最善の方法のひとつは、オープンになり、本音で接することです。自分の本当の考えや経験を分かち合うことで、信頼が生まれ、相手もそれに応えてくれるようになります。たとえあなた自身が自分の話を面白くないと思ったとしても、それはあなた自身が何千回も聞いた話だからでしょう。だからといって、他の人がそこに価値を見いだせないということにはなりません。正直に自分の話を伝えることで、より深いつながりが形成される土台ができます。

最後に、過剰にフレンドリーにしないことです。相手との信頼関係を築くためにフレンドリーに接することは重要ですが、プロとしての態度を保つことも同様に重要です。たいていの場合、あなたはその人と知り合って日が浅く、しつこくなりすぎている可能性があります。

敬意を払いつつも友好的な態度で会話を終わらせる方法を学ぶのは、それ自体が芸術です。正直であることが常に最善の策です。その代わり、別の議論に移ったり、セッションに参加したりする必要がありますが、後で会話を続けたい旨を伝えましょう。この方法は、あなたが築いた前向きなつながりを維持しながら、時間を効率的に管理することができます。おそらく、相手も時間を有効に使いたいので、簡単に切り上げられることに感謝するでしょう。

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まとめ

北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで

ネットワーキングは世界中で行われているものです。しかし、ネットワーキング、人脈作りの方法は文化によって異なります。北米では、ネットワーキングの文化的規範を理解し、設定した目標を達成するための準備をすることが重要です。

カンファレンスに参加しても十分な価値が得られないかもしれないという不安に駆られてはいけません。このカンファレンスには何千人もの人が参加していることを忘れないでください。少なくとも何人かの人脈は作れるはずです。

だから、名刺を準備し、ピッチの練習をし、ローカルな集まりであれ、Collisionであれ、カンファレンスに参加してよい成果を持ち帰りましょう。

代表の神村が海外で英語のプレゼンをした際に使用したスライドとトランスクリプトをダウンロードできる様にしました。よかったら見てみてください。
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北米のイベントでのネットワーキング方法:CollisionからSXSWまで
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WilsonAaron
北米向け広報PRスペシャリスト。戦略的なPR、業界調査分析、ソーシャル・デジタル・メディア、東亜米関係を得意とする。新たなトレンドを取り入れた革新的なPR戦略を提案。日本の広報担当者が理解をするのが難しい北米市場での成功を支援するための記事を書きます。