デジタル時代の今日において、広報担当者であればSNSに関する知識は必須と言えるでしょう。
SNSは身近なプラットフォームではあるものの、企業アカウントを運用する場合、その観点は全く異なります。ただ企業からの情報を一方的に発信するだけでなく、どのようにその情報が受け手に受け入れられ、企業の目的にどう影響しているのか、SNSの専門的な知識が広報担当者にも必要です。
そこで今回の記事では、広報業務としてどのようにSNSを使いこなすか、賢いSNS広報戦略を解説します。
SNSと広報の関係性とは?初めに理解しておくべき基本
SNSを通じて、企業はソーシャルメディアを活用して、自社のブランドイメージを向上させたり、製品やサービスについて情報を発信しすることができます。それでは、広報とSNSの関係性について詳しく見ていきましょう。
広報とSNSの関係性
広報活動においてSNSは重要な役割を担います。
SNSを利用することで、従来よりも迅速かつ広範な情報配信が可能となり、企業は、直接消費者や関心を持つ可能性のある新たな顧客との対話を行うことができます。また、SNSは情報の拡散速度が非常に速いため、プレスリリースをSNSを通じて発信することで、特定のキャンペーンやイベントについて大規模な注目を集めることが可能です。
これは、企業が新製品のローンチや重要な企業ニュースを効果的に市場に紹介するための手段として最適と言えるでしょう。
SNSの構成要素
SNS広報を成功させるためには、各プラットフォームを理解することが不可欠です。
主要なSNSプラットフォームには、Facebook、Twitter、Instagram、LINE、LinkedInなどがあり、それぞれが異なるユーザーベースとコミュニケーションスタイルを持っています。
例えば、Instagramはビジュアルコンテンツに強く、製品の見た目や使用感を前面に出すマーケティングに適しています。一方でLinkedInは、業界ニュースや企業の専門知識を共有するのに最適なプラットフォームです。
各SNSの特性を理解し、ターゲットとするオーディエンスに合わせたコンテンツを制作することが、効果的なSNS広報の鍵となります。
SNSを使った広報のメリット
広報がSNSを活用することで、広範囲のユーザーにリーチできたり、顧客満足度の向上やブランドロイヤルティの強化を図ることが可能となります。
SNSを活用することで得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。
メディア露出にも繋がる可能性がある
SNSは単なる情報発信ツールにとどまらず、マスメディアの注目を集めるプラットフォームとしても機能します。
一つの投稿がバイラルになることで、テレビや新聞などの従来型メディアに取り上げられる機会が増え、それが更なるメディア露出に繋がります。このようにSNSは、企業が広く認知される機会を創出し、ブランドの視認性を大幅に高める効果が期待できます。
低コストで優秀な人材を確保できる
SNSを活用した採用活動は、採用コストの削減だけでなく、企業文化や職場環境を直接的に伝えることが可能です。
これにより、求職者が企業の魅力をリアルタイムで感じ取れるため、企業と求職者間のミスマッチを減少させ、採用の質を向上させることができます。また、効率的な採用プロセスを通じて、優秀な人材の獲得が期待できます。
ブランディング構築につながる
SNSを利用した広報活動は、比較的低コストで広範囲のターゲットにリーチすることができます。
継続的にコンテンツを配信することで、ブランドの価値を強化し、フォロワーとの関係を築きます。SNS特有の拡散機能を利用することで、少ない費用で大きな広告効果を得ることができます。
消費者と直接コミュニケーションが取れる
SNSは消費者と双方向のコミュニケーションを取ることができるプラットフォームです。
消費者からのフィードバックを直接受け取ることで、製品やサービスの改善につなげることができます。また、これにより消費者との間に信頼関係を築くことができ、長期的な顧客関係の構築に寄与します。
SNSで収集したデータをマーケティングにも活用できる
SNSプラットフォームにはさまざまな効果測定の機能があります。
アクセス数やユーザー層、反応が良かったコンテンツなど、あなたのアカウントをフォローしているユーザーの属性をキャッチアップすることができるので、これらのデータを基に効果的なマーケティング戦略を立てることが可能です。
また、リアルタイムでのデータ分析を通じて、キャンペーンの効果を即座に測定し、必要に応じて戦略を調整することができます。
<測定できるもの>
自社のユーザー層
コンバージョン率
ターゲットユーザーのデモグラフィック
ソーシャルメディアキャンペーンの影響
ユーザーの行動パターン(アクセスが集中する時間帯や曜日)
ソーシャルメディア広告の効果
コンテンツのシェア率
ソーシャルメディア上での競合他社の活動評価
結果を出すためのSNS運用の4つのコツ
SNSの運用において効果的な結果を出すためには、戦略的なアプローチが不可欠です。以下では、成功へ導くための主要な運用コツを解説します。これらを実践することで、SNSを通じて企業の目標を達成し、持続可能な結果を出すことが可能になります。
①社風・目的に合ったSNSを選択する
各SNSプラットフォームはその特性やユーザー層が異なります。
したがって、自社のブランドイメージやターゲット層に合ったSNSの選択が重要です。例えば、若年層に人気のインスタグラムやTikTokは視覚的コンテンツが強く、B2B向けにはLinkedInが適しています。
適切なプラットフォームを選ぶことで、広報活動の効果を最大限に高めることができます。また、複数のSNSを効果的に組み合わせることで、さまざまな層へのアプローチも可能です。
②SNSの運用方針を決める
SNS戦略を立てる際は、まず自社の現状を正確に分析し、どのような成果を目指すか明確なKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。
目標は「ブランド認知度の向上」、「売上の増加」、「顧客エンゲージメントの強化」など、具体的かつ測定可能なものに設定しましょう。これにより、SNS活動がビジネス目標にどのように貢献しているかを定期的に評価し、必要に応じて戦略を調整できます。
③SNS運用の役割分担・スケジュール立案をする
効果的なSNS運用のためには、チーム内で役割を明確に分担し、定期的なコンテンツのスケジュールを計画することが不可欠です。
SNSの知識を持ったSNS専任担当者を設けることで、一貫性のある声でコミュニケーションを行うことができます。また、予定された投稿と即興の投稿をバランスよく組み合わせることで、ユーザーとの接点を常に新鮮に保つことができます。
④危機管理マニュアルを作成する
オンラインでの危機は突然発生するため、炎上や誤解を引き起こす投稿に対して迅速かつ効果的に対応する準備が必要です。
炎上時の対応プロセスを事前に定めた危機管理マニュアルを作成し、関係者全員が対応手順を理解しておくことで、ブランドへの悪影響を最小限に抑えることができます。これには、具体的な対応フローと連絡体制の確立が含まれます。
SNSプラットフォーム別の特徴と活用方法
先ほど説明したように、SNSはプラットフォーム別に特徴や活用方法が異なります。
そのため、一つ一つのプラットフォームの特徴を理解し、自社にあった運営をxすることが重要です。
Xエックス(旧・Twitter)の特徴
Xエックスは、リアルタイムで情報が流れる即時性の高いプラットフォームです。
タイムラインや強力な検索機能、リツイートによる情報の共有が特徴で、ユーザーは速報性の高いニュースやトレンドに素早くアクセス可能です。特に匿名性が高く、拡散力とリアルタイム性がユーザーにとっての大きな魅力となっています。
■運用のポイント
・話題性のあるツイートを定期的に投稿
・ハッシュタグの効果的な利用
・炎上に注意し、適切なリスク管理
・インタラクティブな要素(アンケート、質問)を取り入れる
・エンゲージメント(リプライ、リツイート)の積極的な促進
YouTubeの特徴
YouTubeは、視覚的にインパクトのある動画を利用することで、効果的な広報活動ができます。
長時間の動画をアップロードできることから、ユーザーは長時間にわたってコンテンツを楽しむことができます。動画は教育コンテンツを始め、長期間閲覧ができるため、アクセスされ続ける情報ストック型の特性を持っています。動画の市場が拡大する中、多くの視聴者にリーチするための重要なチャンネルです。
■運用のポイント
・YouTube広告を取り入れる
・インフルエンサーとコラボする
・自社PRの動画コンテンツを制作する
Instagramの特徴
Instagramはビジュアルコンテンツに特化したSNSで、特に若年層の女性ユーザーが多く利用しています。
魅力的な画像や動画を通じて製品やサービスを紹介する企業にとって、最適なプラットフォームです。強力なビジュアルコンテンツはユーザーの関心を引き、ブランドのイメージを強化します。
■運用のポイント
・ビジュアルコンテンツの質を高める
・ストーリーズやライブ機能の積極的な活用
・インフルエンサーとのコラボレーション
・ターゲット層に合わせたコンテンツの提供
・ハッシュタグを用いたトレンドへの参加
LINEの特徴
LINEはユーザーと一対一のコミュニケーションが可能なSNSで、友だち登録したユーザーに対して直接情報を発信できます。
国内ではほとんどの人がLINEを使っていると言っても過言ではないほど、多くのユーザーを持っています。LINEでクーポンや最新情報の配信により、顧客のリピート率を向上させることが期待できます。
◾️運用のポイント
・公式アカウントを活用したダイレクトなコミュニケーション
・オリジナルスタンプやクーポンの提供
・ユーザーのプライバシー保護とセキュリティの確保
・定期的なメッセージ配信でリピート率向上
・アンケートやフィードバックの活用
Facebook(Meta)の特徴
Facebookは30代から40代を中心に利用されるSNSで、プライベートとビジネスの双方で広く使われています。
海外での利用率も高く、国際的な広報やインバウンドマーケティングに適しています。
■運用のポイント
・詳細なターゲット設定で広告を最適化
・コンテンツの共有性を意識した投稿
・コミュニティ機能を活用したグループ運営
・イベント告知やキャンペーンの宣伝
・データ分析を通じた投稿戦略の調整
SNSで広報活動をする上での注意点
SNSは影響力が大きく企業に多くのメリットをもたらす一方で、炎上などのリスクもあります。運営を開始する前にこれらの注意点を理解しましょう。
SNS上での炎上リスク
SNS上では迅速かつ広範に情報が拡散されるため、炎上リスクには特に注意が必要です。
誤解を招くような表現や、感情を害する可能性のある内容は事前に排除する必要があります。炎上を防ぐためには、発信前に内容のチェック体制を徹底し、万が一の炎上時には迅速かつ適切に対応する危機管理プランを準備しておくことが重要です。
このプロセスを怠ると、企業の信頼性やブランド価値に深刻なダメージを与える可能性があります。
明確なKPIがないと目的を見失う
SNS広報の効果を測定し、戦略を最適化するためには、明確なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。
KPIを設定することで、どの投稿が良いパフォーマンスを示したかを客観的に評価でき、今後のコンテンツ戦略やキャンペーンの改善点を明確にできます。例えば、エンゲージメント数、リーチ数、コンバージョン率など、目的に応じた指標を設定し、定期的な分析を行うことで、SNS活動の目的を見失わずに済みます。
持続可能な運営体制を整えてから運用をスタートする
SNS広報を長期にわたり効果的に行うためには、持続可能な運営体制の確立が必要です。
これには専任のスタッフを配置し、適切なスケジューリングと資源の配分を行うことが含まれます。また、SNSのトレンドやプラットフォームのアップデートに常に注意を払い、戦略を柔軟に調整できる体制を整えることが求められます。
さらに、内部での教育や研修を定期的に行い、チームのスキルを向上させることも重要です。これにより、SNSを通じて一貫したメッセージを発信し、ブランドイメージを維持することができます。
SNS広報活動の成功事例
次に、SNSを広報活動として活かした成功事例を紹介します。
動画CMの活用:240件以上のメディア露出に成功!
子ども向けオンライン英会話スクール「ノバキット」は、通学型グループレッスンの英会話教室が一般的な日本市場において、子ども向けのオンライン英会話というサービスの市場認知が必要でした。また、大手から個人まで数千もの英会話教室が点在するレッドオーシャンの中で、競合に打ち勝つポジショニングや、顧客から信用を築く活動も重要でした。
そこでシェイプウィンでは、Instagramのアカウント運用やインフルエンサー投稿をマーケティングの視点から連動させ、インスタグラムのフォロワー数を4,700人まで増加。また、TVerにて動画CMを行った結果、240以上のメディア露出に繋がりました。
SNSは単なるプラットフォームではなく、メディアアプローチの観点も持つことで、メディア露出にも繋げることができることがわかる事例です。
3つのプラットフォームを戦略活用:2.9Mのインプレッション・800Kリーチ獲得!
日本の消費者に向けてスペイン牛の魅力を発信するワンダフルビーフ2.0とのプロジェクトでは、単に牛肉の宣伝をするだけでなく、ヨーロッパ生産モデルという「宣伝」記事も発信する必要もあり、エンゲージメントの高いオーディエンスを構築するのが難しい状況でした。
そこでシェイプウィンでは、3つのソーシャルメディア(Instagram、Facebook、YouTube)のKPIを設定。アカウントを『ジャパンフレンドリー』にすることに取り組み、Instagramのアカウントで定期的な『フォロワーキャンペーン』を実施しました。また、『仕事や家事で忙しい人のための簡単・時短レシピ』をテーマとする家庭料理の研究家・インフルエンサーとコラボする施策を行いました。
結果として、日本市場にローカライズした投稿により2.9Mのインプレッションという高いエンゲージメントを獲得し、インフルエンサーのフィードと世界観がマッチしていたことにより800Kリーチという高いエンゲージメントを獲得。
複数のプラットフォームを連動させたキャンペーン施策と、ターゲットにカスタマイズしたコンテンツ運営見直しが、大きなエンゲージメントを生み出すことがわかる事例です。
イベントとSNSの連携:イベントのレポートレシピなどがSNSで拡散!
日本市場におけるフランス産のバターやチーズといった乳製品のPRを実施するCNIELは、フランスの乳製品は輸入関税のために高価であるというイメージから、PRに課題を抱えていました。
そこでシェイプウィンでは、フランス産バターを使ったスイーツを八芳園やフランスパティシエとして有名な鎧塚俊彦氏とコラボし、限定メニューを開発しプロモーションを実施。1週間のポップアップストアイベントの開催期間中には、インフルエンサーを対象としたイベントも複数実施しました。
結果として、スイーツやアフターヌーンティーに関するインフルエンサーにレシピや会場でのイベントレポートなどの投稿が行われ、リーチ数だけでなく高いエンゲージメントも獲得することができました。
イベントを開催するのではなく、イベントとの相性を考慮したインフルエンサーの選定や期間限定イベントを行うことにより、イベントの効果を最大化できることがわかる事例です。
(※)lingshotとのコラボ企画
よくある質問
SNS広報の特徴は?
SNS広報の特徴は、リアルタイム性、相互性、視覚的魅力が高い点です。
リアルタイムで情報を共有できるため、瞬時に大量のユーザーとコミュニケーションを取ることが可能です。また、ユーザーからのフィードバックを直接受け取ることができるため、双方向のコミュニケーションが実現し、顧客との関係を深めやすいです。
さらに、動画や画像などの視覚コンテンツを活用することで、訴求力の高いメッセージを伝えることができます。
PRと広報の違いはなんですか?
PR(パブリックリレーションズ)と広報の主な違いは、その目的と手法にあります。
PRは企業や組織が公衆と良好な関係を築き、ポジティブなイメージを維持・向上させるための戦略的コミュニケーション活動を指します。
これに対して広報は、企業や組織の情報を公式に発信する活動を指し、しばしば報道機関や一般公衆に対する情報提供が含まれます。PRは広報活動を含むより広範な概念であり、広報はその一部として位置づけられることが多いです。広報活動は主に情報の発信に注力するのに対し、PRは関係構築とブランドの評判管理に焦点を当てています。
まとめ:無料だからといって、いきなり運用を開始するのはNG
結局のところ、SNS広報はただ情報を発信するだけでなく、ブランドイメージを構築し、顧客との信頼関係を築くための戦略的な手段です。適切な準備と運用により、SNSは企業の広報活動に大きな価値をもたらすことができます。
そのため、会社広報としてSNSを活用することは多くのメリットを提供しますが、一方で運用をスタートする際には慎重な計画と準備が求められます。
SNSは無料で手軽に始められるため、目的や戦略を立案せずにいきなり取り組んでしまった場合、意味のないSNS運営に時間と手間を取られ、結果として無駄な人件費をかけてしまうこともあります。
SNSを通じて何をしたいのか、自社にどのようなメリットをもたらしたいのか、まずは目的の設定とその目的に合ったSNSの活用戦略が必要です。
シェイプウィンでは、SNSの経営戦略・営業戦略と連携した戦略立案、コンテンツ制作や認知を広げるキャンペーンまでSNSのトータルサポートしています。まずは自社にSNS運営が適しているのかどうか、相談からも受け付けていますので、お気軽にお問合せください。