現代では単に優れた製品を生み出しても、企業が思う結果につなげることが難しいと言えるでしょう。その理由は情報が常に溢れる現代において、単に商品を売るだけではなく消費者の心に響く戦略的なPRが求められているからです。そのため、PR事業の重要性は日に日に高まっています。
とはいうものの、PRとは何か?PR業界が持つ目的とは何か?PRは広告やマーケティング、宣伝と何が違うのか?と、PR事業に関する様々な疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、PR事業について一から徹底解説。
PR業界の全貌から、メディアリレーションズにおけるプレスリリースの配信などの具体的なPR事業の仕事内容、そしてよりPRの効果を最大化するマーケティングと連携まで、PRが企業の成功に導くための具体的な手順と戦略を紹介していきます。
PR事業とは?PRの基本から解説
PR(パブリックリレーションズ)は、企業や組織が公衆と良好な関係を築き、そのイメージを向上させるための戦略的コミュニケーション活動です。その目的や役割は多岐にわたります。
まず初めに、PR事業の基本について学んでいきましょう。
目的
PR事業の主な目的は、企業や組織のポジティブなイメージを公衆に広めることです。これにより、製品やサービスへの信頼を高め、結果として企業の成長や収益の増加に寄与します。良好なステークホルダーとの関係は、企業の持続可能性と競争力を保つ上で不可欠です。
そしてPRの具体的な活動は、メディアリレーションズ、イベントマネジメント、危機管理、ソーシャルメディア戦略など多岐にわたり、様々なPR手法を駆使してステークホルダーとの関係を構築します。
役割
先ほど説明した目的を達成するために、PR事業は公衆とのコミュニケーションを取ることを役割としています。コミュニケーション活動を通じて、企業のメッセージを正確に伝え、公衆からの理解と支持を得ることを目指しています。
また、企業に危機が発生した際には、迅速に正確な情報提供を行い、企業のイメージを守り信頼回復に努めます。PR事業では、このような危機管理としての役割も担います。
PR事業のステークホルダー
それでは、PR事業ではどのようなステークホルダーを対象としているのでしょうか。その答えは多岐にわたりますが、主にPR事業が対象とするステークホルダーを以下にまとめています。
・メディア: 企業のメッセージを大衆に届ける
・消費者(顧客): 製品やサービスの利用者。企業の成長の鍵を握る
・株主: 企業の投資家。企業の財務健全性や成長に関心を持つ
・従業員: 企業の内部ステークホルダー。企業文化や価値観を体現する
・行政機関: 法律や規制に関する関係者。企業活動の枠組みを提供する
・金融機関: 資金提供者。企業の財務活動に影響を与える
・取引先: 企業のビジネスパートナー。供給チェーンやビジネス展開に関わる
PR事業と広告・広報・マーケティング・プロモーションとの違い
企業のコミュニケーション戦略には、広告、広報、マーケティング、プロモーションといった様々な手法があります。これらは目的や方法が異なり、それぞれの役割を果たしています。一つずつ詳しく見ていきましょう。
広告との違い
広告は料金を支払い、企業が意図したタイミング、掲載方法で情報を発信します。これに対してPR(パブリックリレーションズ)は、メディアが取材をしその掲載内容やタイミングを決定するため、企業が直接掲載についてコントロールすることはできません。
PRは掲載の有無は不確定性ですが、一方で公平性を保つメディアが発信する情報には大きな信頼があり、広告以上の影響力を持つと言えます。
関連:広告と広報PRの違い
マーケティングとの違い
マーケティングは商品やサービスの販売を目的としており、顧客が抱える問題を解決する製品やサービスを提案することに焦点を当てます。一方PRは、企業のイメージやブランド認知を高めることを目的としており、直接的な販売促進よりもステークホルダーとの関係構築に重点を置いています。
プロモーション(宣伝)との違い
プロモーションは、製品やサービスを市場に紹介し、その販売を促進する活動です。明確な販売目標に向けて特定の商品やサービスの販売を促進します。PRはこのような直接的な販売促進とは異なり、企業全体のポジティブなイメージを構築し、長期的なブランド価値を高めることに焦点を当てています。
広報との違い
広報活動は企業や組織の事業や戦略を一般に知らせることに重点を置いています。一方、PRはより広い範囲の目標を持ち、メディア関係、イベントの開催、公衆との直接的な関わりを通じて、企業の全体的なイメージと関係性の構築に努めます。
広報は情報の発信に重点を置くのに対し、PRはその情報がどのように受け取られて共有されていくのかに焦点を当てています。
関連:広報とPRの違いとは?
PRの種類
PRは、企業PR、自治体・地方PR、商品PRなど、その種類は広く、各々が特有の目的と役割を担っています。それぞれの違いを明確に理解していきましょう。
企業PR
企業PRは、企業のブランド価値や社会的責任、事業内容などを広く伝える活動です。例えば、企業が行うCSR活動やイノベーションの取り組みなどがこのカテゴリーに含まれます。
企業PRの領域は単なる商品やサービスの宣伝を超えて、社会との関係構築やブランドイメージの向上、企業を取り巻くステークホルダーとの長期的な信頼関係を構築することなどの目的が含まれ、非常に重要な役割を担っています。
自治体・地方PR
自治体や地方のPRは、地域の魅力や特色、地域行事、観光地の情報などを発信することで、訪問者を増やしたり、地方創生に貢献することを目的とします。
特に地域の伝統文化や特産品を前面に出し、その地域独自の価値を伝えることで、外部からの関心や理解を深め、地域経済の活性化を図ります。
商品PR
商品PRは、特定の商品やサービスの特性、利点、使用方法などを伝え、消費者の購買を促す活動です。
新製品の発売、機能改良、特別キャンペーンなどがある場合に積極的に行われます。この種類のPRは、消費者の関心を引きつけ、製品知識を深めることで、購買意欲を刺激することが目的です。
このように、それぞれのPR活動は、その目的に応じて異なるアプローチを取りますが、共通しているのは、情報を発信し対象とするオーディエンスの関心を集めることで、企業メッセージの理解や信頼を得ることを目指している点です。
PR戦略とは?
PR戦略は、企業や組織が自らの商品やサービス、ブランドイメージを社会に広め、肯定的な認知を構築するために重要な活動です。基本的な概要と、PR戦略の主な種類について紹介します。
PR戦略の概要
PR戦略に取り組むは、消費者の間に「気付き」を提供し、消費者が自らの意思で「買う理由」を見つけさせることにあります。単なる宣伝ではなく、戦略的なPR事業を通じて企業や製品の価値を伝え、消費者に「気付き」を与えることで、深いレベルでの関係性を築くことを目指します。
成功しているPR戦略は、消費者が製品やサービスを自発的に選ぶ「流れ」を生み出し、最終的には企業の成長に大きく貢献します。
PR戦略 ①プル型戦略
次に、PR戦略の主な種類について解説します。
一つ目の「プル型戦略」では、消費者の関心を引き付け、製品やサービスに対する需要を自然に引き出すことを目指します。この戦略は、情報提供や教育を通じて消費者の好奇心を刺激し、製品への興味を喚起させます。
プル型戦略は、消費者が自ら情報を求める形式で、主にコンテンツマーケティングやSEO対策、ソーシャルメディア活用などを通じて実現します。この戦略の根拠は、価値あるコンテンツを提供することで、自然とターゲットから関心を引き出し、製品やサービスへの関心を高める点にあります。
PR戦略 ②プッシュ型戦略
一方で二つ目のプッシュ型戦略は、製品やサービスを積極的に市場に出し、販売チャネルを通じて消費者に直接届けるアプローチです。この戦略は、即時の販売促進や市場でのポジショニング強化に効果的です。
具体的には販売促進活動や直接メール、展示会参加などがあります。この戦略の根拠は、直接的なプロモーションを通じて製品やサービスの認知度を高め、消費者の購買意欲を刺激することにあります。結論として、プッシュ型戦略は短期間での売上向上や市場への迅速な浸透を目的としており、新製品のローンチや特定のキャンペーンに特に有効です。
それぞれの戦略は、目的やターゲットに応じて選択され、時には組み合わせて使用されることで、PR活動の効果を最大化します。重要なのは、ターゲットの消費者行動を理解し、それに合わせた適切な戦略を展開することです。
PRの事業内容・具体的な活動例は?
ここまででPR事業の概要や種類など大枠を説明してきましたが、ここからはPR事業では具体的にどのような業務を行なっているのか、詳細を解説していきます。
メディアリレーションズ
メディアリレーションズは、新聞、雑誌、テレビ、オンラインメディアなどの外部メディアとの関係構築を中心とした活動です。この活動の目的は、企業のニュースや情報を適切なタイミングでメディアを通じて広く一般に伝えることにあります。
プレスリリースの発行や記者会見の開催、メディア向けのイベントの企画などが含まれます。これにより、企業のイメージ向上や製品の認知度アップが期待できます。
社内広報
社内広報は、企業内部のコミュニケーションを担う活動で、従業員向けの情報共有や意識統一を目指します。
社内ニュースレター・社内報の発行や、イントラネットの運用、従業員向けイベントの開催などが活動例です。これにより、社内理解を高め、従業員のモチベーション向上や組織の一体感を促進します。
オウンドメディア・ソーシャルメディア(SNS)
オウンドメディアとSNSは、企業が自ら情報発信を行うプラットフォームです。
公式ウェブサイトやブログ、Twitter、Facebook、Instagramなどを通じて、企業の魅力や価値を直接発信します。これらの活動により、ターゲットオーディエンスとの直接的なコミュニケーションが可能になり、ブランドのファンを増やすことができます。
イベントの開催
イベントの開催は、製品発表会、セミナー、ワークショップなど、直接ターゲットと交流する機会を提供します。
これにより、製品やサービスの体験機会を提供するとともに、顧客や関係者との関係強化を図ります。イベントは、参加者に対する直接的な印象付けが可能で、長期的な顧客関係の構築に寄与します。
これらの活動を通じて、PR事業は企業のブランドイメージの形成や維持、市場でのポジショニングの強化を目指します。それぞれの活動は、企業の戦略や目的に応じて選択され、組み合わせることで相乗効果が生まれることが期待されます。
1から解説!実際のPR活動の流れ
この記事を読んでいる方の中には、新しく広報を担当することになった方、PR事業を任されたが何をすれば良いのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
次に、具体的にPR事業を任された際にどのような流れに沿ってPRを推進していけば良いのか、全体の流れを一から解説します。
️ ①市場リサーチ
市場リサーチは、PR戦略の礎です。競合分析、ターゲットオーディエンスの特定、市場のトレンド理解などを通じ、企業のPR活動が効果的に進む土台を築きます。データ駆動型のアプローチを取ることで、より精度の高い戦略を立案することが可能となります。
️ ②目標設定とPR企画
明確な目標設定は、PR活動の方向性を定める上で不可欠です。目標に基づいた戦略的な企画を立案し、ターゲットに響くメッセージやキャンペーンを考え出します。この段階で、目的に沿ったPR企画や、退社との差別化を図るクリエイティブなアイデアを検討することが、企業のブランド価値を高め目標達成につながります。
️ ③実際のPRの準備
次に、実際にPR活動を開始します。具体的には、プレスリリースの配信、ウェブサイトの更新、SNSを活用した情報発信などの準備が重要になります。これまでのリサーチ結果や目標設定、そしてPR企画を踏まえてコンテンツの質と配信のタイミングを考慮することが成功の鍵となります。
️ ④メディアアプローチ
単に情報を発信するだけではなく、その後メディアとの関係構築を築くことはPR活動において中心的な役割を果たします。
プレスリリースやイベント招待を通じて、メディアと良好な関係を築き、企業のストーリーを広く伝えることが重要です。ここでコミュニケーションスキル活かしながら戦略的なアプローチをすることが、メディアからの信頼を得ることに繋がるでしょう。
️ ⑤メディア対応と効果測定
最後に、実際の取材対応やPR活動の効果を測定し次の戦略を練り上げます。
実際の取材対応では、事実をもとに記者から求められている情報を適切に伝えていきましょう。また、一連のPR活動を終えた後には、メディアカバレッジの量や質、ソーシャルメディアでの反応、ウェブサイトのトラフィック増加などを分析し、PR活動のROIを評価し、次のPR活動に繋げていきます。
このPR活動の一連の流れを理解し、各ステップを丁寧に実行することで、PR活動はより効果的になり、企業のブランド価値を高めることができます。
PRを活用するメリット
PR活動には、新規事業やスタートアップ、そして大手企業にとっても多くのメリットがあります。ここでは、PR事業を活用する上で特に注目すべき3つのメリットを紹介します。
新規参入でも認知度を高められる
新規参入の企業や製品でも、効果的なPR戦略を用いることで、短期間に市場での認知度を高めることが可能です。メディアに取り上げられることで、広告では得られない信頼性を伴った形で情報が伝えられ、ターゲットオーディエンスに直接リーチすることができます。
コスト削減
広告と比較して、PRは比較的低コストで実施可能です。特にメディアに自社のニュースやストーリーが掲載されれば、その露出に直接費用はかかりません。
プレスリリースの作成やメディアリレーションズ、そして顧客と直接コミュニケーションを取ることができるソーシャルメディアの活用を通じて、コストをかけずに情報を発信することができます。
ファン層の獲得
PRを通じてブランドのストーリーや価値観を共有することで、単なる消費者を超えた「ファン」を獲得することができます。
ファン層はブランドに対する忠誠心が高く、積極的に情報を共有し、長期的なブランドサポートに繋がります。また、ソーシャルメディアを活用することで、ファンと直接コミュニケーションを取り、関係を深めることが可能です。
これらのメリットは、PRが単に情報を発信するだけでなく、ブランドイメージを構築し、市場での立ち位置を確立するための強力なツールであることを示しています。
戦略的なPR活動により、企業は競争の激しい市場での認知度向上を始め、コスト削減、そしてファンベースの構築という3つの大きな利点を得ることができます。
PRを最大化するコツ
PR活動の成果を最大化するためには、いくつかの重要なポイントがあります。特に、ニュース価値の把握、専門的なPR会社の活用、そしてマーケティングとの連携はPR活動の成功に不可欠です。
️ ニュースバリューを意識する
メディアが取り上げやすい内容とは、人々が興味を持ち、価値を感じるものです。自社のニュースリリースが、なぜ今、なぜ注目されるべきかを明確にすることが重要です。
これには、時事性、独自性、影響力など、ニュースバリューを高める要素を意識してストーリーを作り上げる必要があります。
️ 専門的なPR会社に依頼する
PR活動は専門的な知識と経験が必要です。特にメディア関係者とのネットワークや、効果的なプレスリリースの書き方、危機管理の手法など、PR会社ならではのスキルセットを活用することで、PR活動の効率と効果を高めることができます。
また、専門的なアドバイスにより、PR戦略全体を最適化することができます。
️ マーケティングとも連携させる
ティングチームや戦略と連携し、一貫したメッセージを伝えることも重要です。PR活動を通じて獲得した注目や信頼を、最終的な販売促進やブランド認知の向上につなげるためには、マーケティングとの連携が不可欠です。
PRでよくある悩み・課題
最後に、PR事業を推進する上でよくある悩みや課題をまとめました。これらはある意味PR事業を行う上でのデメリットとも言えますが、事前に把握しておくことで対策を練ることができます。
事前にPR事業でよくある悩み、そして課題を把握しPR事業を推進していきましょう。
マンパワーで全ての業務に手が回らない
多くの企業や組織では、限られた人材とリソースで多岐にわたるPR活動を行う必要があります。これは特に新規参入企業や小規模な組織で顕著で、マーケティング、広報、そしてデジタルPRの各方面での業務が必要とされますが、それらを十分にカバーできるだけのマンパワーが不足しがちです。
そのため、PR事業を計画する段階で戦略的に優先順位をつけることや、一部の業務を外部の専門エージェンシーに一部業務を委託することが解決策となります。
PR方法がわからない
PR活動には、メディアリレーション、イベントの企画運営、ソーシャルメディアマネジメントなど、さまざまなアプローチが存在します。それらのPR業務は把握しているものの、これらの方法をどのように組み合わせ、どのように実行すれば効果的なのかを理解するのは容易ではありません。
ロールモデルとする企業をリサーチし効果的なPR事業を行うこと、PRに関するセミナーや勉強会に出席すると良いでしょう。
PRに関する専門知識がない
PR活動は、その成果が直接的な売上げに結びつくわけではなく、ブランドの認知度向上や信頼構築に寄与するため、その効果を測定しにくいことがあります。
また、メディアや公衆との関係構築には専門的な知識やスキルが必要です。このため、PRに関する深い理解と経験を持つ専門家に相談するか、従業員を対象とした研修を実施することで、組織内の専門知識を高めることが推奨されます。
まとめ
PR活動は、企業に大きな影響をもたらす一方、その業務は多岐にわたり様々な悩みや課題が生じることが一般的です。特に、限られたマンパワーの中で全ての業務をこなすことの難しさや、PRに関する専門知識の不足などが挙げられます。
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