少し前の話のなりますが、アメリカのテキサス州にあるPRのスタートアップ企業「TrendKite」が、今年の2月に500万ドルの資金調達をしました。この企業は2013年に120万ドル、2014年に320万ドルを調達したシリーズAのスタートアップ企業です。投資の矛先がマーケティング分野へ向けられる中、PR分野への高額投資が行われ、注目されている企業です。PR分野でのスタートアップは珍しく、実際にどのようなサービスなのか実際に確かめたく、コンタクトをとってトライアルしてみました。
PRって結局、マーケティングに貢献したの?
プレスリリースを送った後や取材を受けた後、どのくらい記事化されたか。また、自社に関連する記事はどのくらいの影響力があったのかは、経営者や広報担当者であれば気になるところです。日本企業の多くは、クリッピング会社(※1)を利用して自社に関連するネットニュースの記事やテレビ、新聞、雑誌の記事をクリッピングしています。
※1:クリッピング会社…キーワードや特定のトピックについて記事をクリッピングするサービスを提供する会社
しかし、PRの影響力は明確にすることはPR会社や広報担当者の間で課題とされています。クリッピングした記事を集めても露出記事数や広告価値換算(※2)のカウントができるだけで、実際のマーケティング(売上・コンバージョン)にどれだけ貢献しているのかはわかりません。そこで、目に飛び込んできたTrendKiteの「MEASURE THE IMPACT OF YOUR PUBLIC RELATIONS(和訳:広報PRの影響力を計測する)」というキャッチコピーに惹かれ、実際にこの企業に問い合わせをしていろいろ聞いてみました。(もちろん英語です。)
※2:広告価値換算…露出した記事を広告費に換算して円で表すこと。
PRの影響力を分析できる?
TrendKiteのダッシュボードキャプチャ
TrendKite(トレンドカイト)は、PRによる影響力を分析して、見える化してくれるクラウドサービスです。自社に関するWeb上の記事(ブログなども含む)を瞬時に収集し、時系列で露出数(記事として取り上げられた数)をダッシュボード上でグラフ表示します。また、該当する記事がポジティブな記事なのかネガティブな記事なのかも判別できます。そのほかにも、口コミ数(米国のみ)、広告価値換算(ドル表示)、競合との影響力の比較など様々な機能があります。
たとえば、「ソフトバンク」と会社名を入れるとソフトバンクに関する記事数が時系列でグラフ化されます。また、「Pepper」などのキーワードで絞ることや地域を「日本」に限定して調べることも可能です。
試しに作ってもらったレポートがこちらです。
教育業界1位の「ベネッセ」と3位の「ヒューマンHD」で比較をしてみました。
TrendKiteで作った2015年3月10日より90日前までの分析レポート
http://app.trendkite.com/report?id=3c3eeeb5-9b22-4b56-ba77-a62f7e61bb8b
※URLは将来的に消滅する場合がありますのでご注意ください。
取り上げられた記事数の時系列表示グラフや競合比較、広告価値換算(米ドル)がレポートとしてまとめられます。実際にレポートを作るのにかかった時間は2,3分です。会社名やキーワードを入れて、レポートの出力を実行しただけでこれだけのレポートを作ることができます。
レビューしてみました
実際にコンタクトをとってTrendKiteの営業担当者とSkypeでミーティングをしながら、UI/UXやできること、価格などチェックしました。
検索UI
この画像は実際の検索画面で使用する検索の論理式です。Appleに関する記事を収集するに当たり、technologyまたはiPhone Plus”に関するものでorchardは含まない記事を検索します。論理式を使うことで詳細に検索条件を絞ることができます。しかし、論理式のマニュアルを覚えないと検索できず直感的に調べてみるということが難しい印象でした。
日本語の記事の収集について
ネットニュースの記事ページには、本文以外に関連記事のタイトルや記事ランキング等があります。なかなか本文のみの抽出は難しいためか、本文以外のキーワードを拾って関係のない記事でも露出記事として収集されました。実際に利用したときもソフトバンクの記事に全く関係のないマイクロソフトの記事が入っていました。レポートとして使用する際は一つ一つの記事数を確認する必要がありそうです。
広報戦略に必要な媒体ごとの分析
シェイプウィンでは、各メディアにアプローチする際に各メディアの記事の傾向を分析しています。この分析ができることを期待していたのですが、基本的にはキーワードを含む記事を時系列でピックアップするというのが主な機能だそうで、媒体別の分析はできないそうです。たとえば、ドコモはITmediaでどのくらい、どのように取り上げられているのかという個別メディアの傾向分析はできません。
料金体系
Brands(事業会社)向けとAgency(代理店)向けのプランがあり、私たちは、代理店に該当するので、事業会社向けのプランを知ることはできませんでしたが、代理店向けプランでは、1クライアント当たり3,000ドル/年で最小2クライアント〜の利用ということでした。つまり、クライアントのうち5社の分析をする場合、15,000ドル/年ということになります。日本ではWebクリッピングのサービスが月額1万円からありますので、時系列でまとめられる分高額になっています。また、TrendKiteで分析できるのはオンラインメディアのみですので、テレビや新聞、雑誌は分析することができません。
まとめ
米国で940万ドルの調達をしている注目のPRスタートアップですが、日本の企業で声をかけてきたのはシェイプウィンが初だったそうです。極東からわざわざ声をかけてきた日本人を物珍しそうに対応してくれました。デモアカウントを発行してもらうことができ、細かい機能までチェックすることができました。
広報PRの分野はまだまだ人力で行うところが多く、ネット広告のようなデジタル化、自動化への道のりは長いなと感じております。人力に多くを依存する広報PRでは、情報収集、情報配信、広報活動の明確な評価など多くの課題があることも事実です。その中でTrendKiteのように先陣を切って広報活動の評価ツール、戦略ツールを世に出していることには感銘を受けました。弊社もそのようなベンチャーとして広報業界に革新をもたらしていきたいと思います。