企業の成功のカギを握る「広報」と「マーケティング」。しかし、これらの違いを明確に説明できますか?また、どのように連携すれば双方の力を最大限に発揮できるのでしょうか?
本記事では、広報とマーケティングの役割の違いから業務内容、連携方法まで解説。新商品の発表の開催や、イベント企画の運営方法など具体的な事例を通じて、広報とマーケティングがどのように連携を進めていけば良いか、戦略的に連携ポイントを学んでいきましょう。
広報とマーケティングの3つの違い
広報とマーケティングは、企業や組織において情報を発信する重要な機能をになっていますが、その目的や役割に大きな違いがあります。
以下は、よく質問を受ける「営業」との違いも含めたそれぞれの違いを簡単にまとめた表です。
それでは、広報とマーケティングの違いにフォーカスし、詳しく見ていきましょう。
①目的の違い
広報は、企業や組織が社会的に持続可能な良好な関係を築き、企業の公共イメージを構築しながら維持することを目的としています。公衆、メディア、政府、従業員など、幅広いステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、企業イメージを形成・維持します。
一方でマーケティングは、市場ニーズの理解、製品やサービスの市場での位置づけ、そしてそれらを通じた顧客との価値の交換を促進することを目的としています。
マーケティング活動は、ターゲット顧客に製品やサービスの魅力を伝え、購入を促すことに重点を置いていえるでしょう。
②役割・効果の違い
広報は企業や組織の「顔」として公衆との関係を築き、イメージと信頼を管理することが主な役割として挙げられます。その効果は主に、企業や組織のポジティブなイメージの構築や維持、危機管理を通じたリスクの最小化、社会的な認知度の向上など、間接的かつ長期的なものです。
例えば、新製品の発表イベントや企業のCSR活動がニュースで取り上げられることで、企業の存在をより多くの人々に知ってもらう機会を提供します。
一方でマーケティングは、製品やサービスを市場に送り出し、売上を生み出すための戦略を立てることが主な役割です。マーケティングの効果は、製品やサービスの販売促進、市場シェアの拡大、直接的な収益の増加などが挙げられます。
例えば、ターゲット顧客に合わせたメールマーケティングやSNS広告は、直接的な売上へとつながることがあります。
③KPIの違い
広報のKPIは、メディア露出の範囲や頻度、公衆からの認知度、イメージ調査結果、危機対応の効果など、企業イメージに関連する指標が中心です。
一方でマーケティングのKPIは、売上高、利益率、市場シェア、新規顧客獲得数、顧客ロイヤルティや満足度など、具体的なビジネス成果に関連するものが指標とされています。
広報のKPI:
- メディア露出度や報道内容の質
- ブランドイメージの向上度
- イベントへの参加者数や反響
- 社会的影響力の拡大
マーケティングのKPI:
- 売上や利益の増加率
- 製品やサービスの認知度や興味度
- マーケティングキャンペーンの効果測定(CTR、CVRなど)
- 顧客の獲得やリテンション率
ここまでの記事で解説した目的や役割の違いを簡潔にまとめると、広報は企業の「なぜ」という大義名分を、マーケティングは「何を」売るのかを伝える役割を持っています。そのため、KPIにおいても広報は企業のイメージや関係構築にフォーカスし、一方でマーケティングのKPIはビジネス成果や売上に直結する指標が重視されます。
関連記事:
広報PRの『KPI』ってみんなどうしてる?
広告と広報PRの違い
広報担当者とマーケターの違い ①広報の具体的な業務内容
次に、広報とマーケターの違いについて解説していきます。初めに、広報部門の具体的な業務内容やその目的について理解していきましょう。
社外広報
社外広報は企業の顔として外部に向けて情報発信を行います。例えば、新製品の発表や企業の社会貢献活動などの様々な情報を、株主、取引先、消費者、そしてメディアに伝えることが求められます。
具体的な活動としては、プレスリリースの作成やメディアとのコミュニケーション、イベントの企画・運営などが挙げられます。
企業が新商品を発売する際には、ローンチイベントを開催することで消費者に製品の魅力を伝え、ブランドの認知度を高めることができます。
社内方向活動
社内方向活動では、社内コミュニケーションの促進や組織文化の浸透を目的として活動します。社内広報では、経営方針や企業のビジョンなどの情報を社内メンバーに伝えることが重要です。
具体的には、社内イベントの企画・実施や社内報の制作・配信、組織内でのコミュニケーションツールの導入などがあります。例えば、社内イベントを開催することで、従業員同士の交流を促進し、チームワークやモチベーションの向上に貢献できるでしょう。
関連記事:社内広報と社外広報の違いとは? 広報PR初心者の業務解説
掲載リサーチ
掲載リサーチでは、メディアでの企業や製品に関する露出状況を調査・分析します。これにより、企業のPR戦略の効果を評価し、改善点を把握することができます。
具体的には、メディアでの報道内容や企業に関するコメント、SNS上での反応などを分析し、市場の動向を把握します。また、競合他社の広告戦略やメディア露出状況を分析することで、自社の戦略を見直すヒントを得ることができます。
広報に求められるスキル
広報は、企業のブランドイメージを構築し、危機時には迅速かつ適切な対応で企業の評判を守ることが不可欠です。そのため、広報では、企業のメッセージを魅力的に伝える能力と、幅広いコミュニケーションスキルが求められます。詳しく見ていきましょう。
・柔軟性・対応能力:迅速に正しい情報を正しく伝える
メディアの環境や公衆の関心は常に変化しています。そのため広報担当者は、これらの変化に迅速に対応し、戦略を柔軟に調整する能力が求められます。また、危機管理や突発的なイベントに対しても冷静かつ効果的に対応できる適応力が重要です。
・表現・発信力: 情報を魅力的に適切に届けられる能力
広報部は、経営層などへの報告・提案や社内に向けた情報発信、そしてメディアや社会に向けた情報発信など、常に物事を適切に表現し届けることが求められます。プレスリリースの配信などのライティングスキルはもちろんのこと、それを自身の言葉で説明するプレゼンテーション能力も求められます。
・コミュニケーション能力: 社内外と円滑なコミュニケーションを取るスキル
広報が関わるステークホルダーは、メディア、顧客、投資家など多岐にわたりますので、それぞれのステークホルダーに柔軟に対応できるコミュニケーション能力が求められます。
また、広報活動は単独で行われるものではありません。会社全体との連携が不可欠ですので、積極的に情報を共有し、部門間との連携を促進することが求められます。企業の規模によっては、広報部門がなかったり社員から認知されていない場合もあるため、課題を感じている広報担当者も多いのではないでしょうか。
過去にクライアントの広報担当者が取り組んでいたこのような例がありました。
<広報担当者の成功事例>
広報部門がまだうまく社内で認知されておらず、社内からの情報収集もなかなか進んでいない状況だった。しかしそこで、他部署の打ち合わせに積極的に入り接点を持つことで、広報への相談や依頼が増え、広報の存在価値が確率。自ら社内全体の部門と接点を作り「広報部門」への理解を促進したコミュニケーション能力が、結果として社外発信にも繋がった。
このように、自ら積極的にコミュニケーションを図り行動するスキルが広報担当者にも重要だと言えます。
関連記事:PR事業とは?PR業界とPRの仕事内容を徹底解説!
マーケティングの具体的な業務内容:広報担当者とマーケターの違い ②
マーケティングの役割は、市場のニーズを理解し、製品やサービスを顧客に届けることにあります。それでは次に、マーケティングの具体的な業務内容、マーケターに求められるスキルについて学んでいきましょう。
調査・分析
マーケティング活動でまず初めにすべきことは、市場調査と分析です。マーケターは、ターゲット市場の特定、顧客ニーズの把握、競合他社の動向調査などを行い、これらのデータを基に市場の機会を特定します。
この段階では、アンケート調査、フォーカスグループ、ソーシャルメディアやオンラインフォーラムでの意見収集、市場データの収集・分析などが行われます。
この段階での主な目的は、製品やサービスが成功するための市場のギャップを発見し、ターゲット顧客の詳細なプロファイルを作成することが目標です。
コンセプトと戦略の立案
次に、調査・分析に基づき、製品のコンセプトを定義し、市場投入戦略を立案します。このプロセスには、製品の価格設定、販売チャネルの選定、プロモーション戦略の策定が含まれます。
マーケターは、製品が市場に受け入れられ、顧客のニーズを満たし、競合他社と差別化できるような戦略を立案することが求められます。
例えばキャンペーン戦略の立案では、具体的なプロモーション活動、予算配分、タイムラインの設定を考慮しながら、市場調査に基づいて企画することが重要です。
効果測定
戦略の実施後は、その効果を測定し、フィードバックを収集します。マーケターは、販売データ、ウェブサイトのトラフィック、ソーシャルメディアでのエンゲージメントなど、様々な指標を分析します。これにより、戦略のどの部分が成功しているか、または改善が必要かを評価し、その後のマーケティング活動に活かすことができます。
具体的な効果測定には以下の指標が用いられます。
行動指標:
ウェブサイトの訪問者数、ページビュー、クリック数など、顧客の行動に基づく指標
成果指標:
リードの獲得数、コンバージョン率、販売数など、マーケティング活動が直接的に生み出した成果を示す
インパクト指標:
ブランド認知度、顧客満足度、顧客ロイヤルティなど、長期的な影響を測る
マーケターに求められるスキル
これらの業務内容を踏まえて、マーケターとして活動する際には、特に以下のスキルが求められると言えるでしょう。
・データ活用能力: 市場調査や効果測定のデータを分析し、戦略に反映させる力
市場調査や効果測定から得られる膨大なデータを理解し、分析する能力はマーケティングにおいて不可欠です。これにより、戦略的な意思決定を行い、ターゲット市場に対して最適なアプローチを計画できます。
・テクノロジーの活用能力:最新ツールやフォームを駆使するスキル
デジタルマーケティングのツールやプラットフォームは日進月歩で進化しています。最新のテクノロジーを駆使して、効率的かつ効果的なマーケティングキャンペーンを実施するスキルが求められます。
・効果測定: マーケティング活動の成果を正確に測定し、分析する能力
行動指標、成果指標、インパクト指標を理解し、これらのデータを基にマーケティング戦略を最適化する知識が含まれます。
広報とマーケティング部門が連携する3つのメリット
ここまでで広報とマーケティングの違いを見てきましたが、それぞれの専門性を活かしつつ広報とマーケティングが連携することで、企業全体のブランド戦略の強化に繋がります。
それでは具体的なメリットについて確認していきましょう。
①リード顧客を獲得できる
広報とマーケティングが連携することで、更なるリード顧客の獲得が期待できます。
広報がメディアを通じて企業のイメージや製品情報を発信する一方で、マーケティングはその情報を活用してターゲット顧客に直接アプローチします。
この相乗効果により、潜在顧客の関心を引き、製品やサービスに対する理解を深めることができ、競合より一歩先にリード顧客を獲得する可能性が高まります。
②よりターゲットに合った情報発信につながる
現代の情報発信方法は、従来とは大きく異なります。現代の消費者は、購入する前に多くの情報を求め比較検討する傾向にあります。
そこで広報とマーケティングが連携することで、情報発信のタイミングやターゲットを的確に判断し、効果的な情報発信が可能になります。
広報が築いたメディア関係やイベントを通じて得た露出を、マーケティングが具体的な製品情報やプロモーションに結びつけることで、消費者に対して一貫したメッセージを発信し、製品への関心を高めることができると言えるでしょう。
③社内連携が進み、社内にも効果的な情報発信ができる
そして最後に、広報とマーケティングの連携は、社内のコミュニケーションと協力を促進します。
異なる部署が共通の目標に向かって協力することで、社内の情報共有が活性化し、社員一人ひとりが企業のビジョンや製品戦略を深く理解することができます。これにより、社内での統一感のある情報発信が期待できます。
広報とマーケティングは、それぞれ異なる役割を持ちながらも、「情報」を扱う点では大きな共通点を持ち、企業の目標達成に向けて緊密に連携する必要があります。
具体的な連携方法は?広報とマーケティング部門が連携できること3選
それではここで、具体的な業務内容を例に挙げて広報とマーケティング部門が連携できることを3つ紹介します。双方が持つ強み、そして連携方法と効果を順に解説していきます。
例①新商品発売プレスリリース
広報部門はメディア目線やプレスリリースの作成・配信スキルを持っています。一方マーケティング部門は、その商品のターゲット市場や消費者のニーズを深く理解しています。これらの情報を広報戦略に反映させることで、より魅力的でターゲットに刺さるプレスリリースの作成が可能になります。
連携方法:
広報部門は、新商品の特徴や利点を明確に伝えるプレスリリースを作成します。マーケティング部門は、プレスリリースの情報を基に、製品のターゲット市場や消費者のニーズに合わせたマーケティング戦略を立案。また、マーケティング部門はプレスリリースの配信タイミングを、他のプロモーション活動と同期させましょう。双方が情報を共有し、一貫したメッセージを社外に発信することが重要です。
効果:
よりターゲットに合ったプレスリリースの配信は、ステークホルダーの製品の認知度と関心の向上に繋がります。また、マーケティング活動による更なる消費者への購買意欲促進のフォローアップの組み合わせは、結果としてブランディング構築のみならず同時に売上の向上にも直結します。
例②イベント企画
広報部門はイベントの告知やメディア露出などの情報発信分野に長け、イベントを通じて企業のイメージや製品の魅力を広く伝える役割を果たします。一方マーケティング部門は、イベントのコンセプト設計やターゲット顧客へのアプローチ方法に関するスキルを活かします。
連携方法:
広報部門がイベントの公式告知やプレスリリースを通じてメディアとの関係を築きながら、マーケティング部門はイベント内容の企画や参加者へのアプローチ戦略を考案します。イベント開催の告知だけでなく、SNSやメールマーケティングを活用して、イベントに関する情報を積極的に発信し、参加を促進します。
効果:
イベントを通じて、企業は製品やブランドに対する認知度を高めると同時に、顧客との直接的なコミュニケーションを図ることができます。イベント後の顧客のフィードバックを分析し、製品改善や将来のマーケティング戦略に生かすことが可能になり、長期的な顧客関係の構築に寄与します。
例③効果測定
広報活動によるブランド認知度の向上やメディア露出の効果測定、そしてマーケティング部門によるリード獲得数や売上増加など異なる指標での分析は、結果としてその後の連携戦略に大きな影響を与えます。
連携方法:
広報はメディアの露出が、マーケティング活動のリード生成や売上にどのように貢献したかを分析します。マーケティングでは、キャンペーンが企業の公共イメージや認知度にどのような影響を与えたかも評価します。また、そして効果測定の結果を両部門で共有し、それぞれの活動がどのように相補的に機能しているかを理解します。
効果:
異なる分野からの効果測定を通じて、相互作用を理解しより一貫性のあるコミュニケーション戦略を立案や両部門の連携強化に繋がります。これにより、広報とマーケティングの取り組みが互いに補完し合いながら、企業の全体的な目標達成に貢献する道筋が明確になります。
連携するうえで失敗しないための注意点
広報とマーケティングの連携は、企業のブランド価値向上とビジネス成果の最大化に大きく寄与しますが、いくつかの注意点を抑えなければ社内連携でのトラブルも招きかねません。
最後に、広報とマーケティングが連携する上で、失敗しないための重要なポイントを紹介します。
事前共有を徹底する
情報発信のタイミングを逃したり、両部門が連携しているようで異なる方向性に進んでしまっては意味がなくなってしまいます。
キャンペーンやイベント、プレスリリースなど、実施予定の活動について、両部門が予め情報を共有し計画を練ることで、戦略の一貫性を保ちつつ、目標達成に向けて効率的に進めることができます。事前共有を徹底することで、予期せぬ誤解やコミュニケーション不足を防ぎましょう。
お互いの業務内容と目的を理解する
広報とマーケティングの業務内容も一部重複している部分があります。特に規模の小さい会社では明確な棲み分けなどもないでしょう。
そのため、お互いの業務内容と目的、そして違いを理解し、どのように相互補完的であるかを認識することが、連携の効果を最大化する鍵となります。
継続的に両部門の責任者が介入する
企業で新たな取り組みを始める際、社内トラブルはつきものですので、両部門の責任者の積極的な介入とサポートが必要です。
責任者が直接関与することで、業務の押し付け合いやバッティングを防ぎ、部門間のコミュニケーションを円滑にします。また、責任者が連携の重要性を認識し、それを部下に伝えることで、組織全体の連携意識を高めることができます。
また、プロジェクト開始当初は責任者も参加していたが、忙しさからいつの間にか現場担当者のみになり、業務の棲み分けもあやふやになっていく…。という失敗もよくありますので、継続的な介入が重要と言えます。
まとめ
ここまでの記事で解説してきた通り、広報とマーケティングにはそれぞれ異なる目的・業務内容・強みがあり、企業の目標達成において非常に重要な役割を果たします。
広報は企業のイメージ構築とメディアとの関係強化に焦点を当て、マーケティングは顧客のニーズに応える製品開発と販売促進に長けています。
両部門が連携することで、新商品のプレスリリース、イベント企画、効果測定などのさまざまなPR活動が相乗効果を生み出し、リード顧客の獲得やよりターゲットにマッチした効果的な情報発信、そして社内の一体感も高めることが期待できるでしょう。
そしてその成功への鍵は、事前の情報共有、相互理解、両部門間の責任者の積極的な関与。これらの活動を連携させることで、企業は一貫性のあるブランドメッセージを市場に伝え、顧客基盤の拡大と収益の向上を推進していきます。
シェイプウィンでは、これまで200社以上の企業のPRをサポートしてきた経験から、広報とマーケティングを連携した成功事例なども数多く持っていますので、広報・マーケティング何関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にお問合せください。